個人情報保護の観点から、複数のWebサイトを横断してユーザーの行動を追うサードパーティクッキーの運用は今後大幅に制約されていく見通しだ。クッキーが抱える課題とその廃止がデジタルマーケティングに及ぼす影響、そして今後の展開を見ていく。
クッキーの種類と仕組み
クッキー(Cookie)を一口に言うなら、Webサイトの閲覧履歴を管理する仕組みだ。具体的には、Webサイトへのアクセスの都度ブラウザに送られるデータを指し、Webサイト側はそのデータを管理することで、アクセス回数やログイン情報などを把握することが可能になる。会員登録が行えるWebサイトは一度登録すれば次回以降のアクセスではID・パスワード入力が不要になることが一般的だが、その仕組みもクッキーによって成り立っている。
クッキーは大きく二つに分けられる。一つはアクセスしたWebサイトが発行する「ファーストパーティクッキー」。もう一つは広告配信事業者が発行する「サードパーティクッキー」である。後者の特長は、自社のWebサイトに事業者が発行したタグを設置することで、

デジタルマーケティングではこれまで、サードパーティクッキーを利用し、自社サイトへの来訪者にピンポイントで広告を打つリターゲティング広告が重用されてきた。一方で、個人情報保護の観点では、Webサイトへのアクセス履歴を横断的に追尾(トラッキング)することを可能にするサードパーティクッキーへの懸念は決して小さくない。
「EU一般データ保護規則(GDPR)」(2018年施行)や「カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)」(2020年施行)において、クッキー運用が厳格化された背後にはこのような懸念がある。GDPRはクッキーを個人情報として定義すると共に、利用に当たってはユーザーから明示的な合意を得ることが盛り込まれたが、その対象は域内で活動する全ての企業に及ぶ。近年、企業サイトにおいてクッキー利用同意を求めるポップアップが目立つのもこうした理由があってのことだ。
日本でも
ファーストパーティクッキーの活用
こうした状況を受け、ブラウザ側のサードパーティクッキー規制も進んでいる。例えばSafariは2017年からITP(Intelligent Tracking Prevention)という仕組みを導入し、サードパーティクッキーを利用した行動データ収集に強い規制を行っている。その結果、サードパーティクッキー事業者はITPの抜け穴を探し、Safariはアップデートで対抗するという消耗戦が続いている。
一方で、誰でも無料で利用できる今日のインターネットが広告ビジネスによって支えられてきたことも事実である。そのためクッキーレスに向けた議論では今後、どのようにインターネットのエコシステムを維持するかという点も重要な意味を持つ。その観点で注目したいのが、デスクトップ、タブレット、モバイルを合わせトップシェアのブラウザであるChromeを提供するグーグルの取り組みだ。
グーグルは2020年、2年以内にChromeによるサードパーティクッキーのサポート終了を明言し、それに代わるものとして提唱するのがPrivacy Sandboxという新概念である。個人情報保護を前提に、広告に支えられたインターネット世界の維持を目指すPrivacy Sandboxが提供するテクノロジーは多岐に及ぶ。例えばFLoC(Federated Learning of Cohorts)は
クッキーレスへの流れの中、再注目されているのが
近年、マーケティング活動において顧客データベース、マーケティングオートメーション、キャンペーン管理などの機能を備える顧客データプラットフォーム(CDP)活用が注目される理由もそこにある。今後、自社が発行するファーストパーティクッキーの意義はより大きくなると見られている。