eSIM対応端末のイメージ画像

次世代SIMとして数年前に発表された「eSIM」だが、ようやく国内でもeSIM対応端末やeSIM対応キャリアが増えてきており、これから普及が進むことが期待される。ここではeSIMの特徴や利点、現状について解説する。

抜き差し不要な次世代SIM、「eSIM」とは

eSIMという言葉を目にすることが増えてきた。eSIMとは、Embedded Subscriber Identitiy Moduleの略で、日本語にすると「組み込み用SIM」となる。SIMとは、スマートフォンや携帯電話、無線WAN対応PCなどで 使われている加入者を特定するためのID番号や携帯電話事業者との契約情報(プロファイル)などが記録されたICカード であり、miniSIM、microSIM、nanoSIMの3種類のサイズがある。

eSIMの機能も基本的にはSIMと同じだが、 契約情報をユーザー自身の手によって書き換えられる仕組みになっている ことが特徴だ。この仕組みのことを、リモートSIMプロビジョニングと呼んでいる。従来のSIMカードでは、回線契約時に販売店である携帯電話事業者が専用の機器を用いて、SIMカードに必要な情報を書き込み、そのSIMカードをスマートフォンなどの端末に挿入することで、回線が開通するという仕組みになっていた。

SIMカードの種類の図

従来のSIMでは、一度SIMカードに書き込まれた契約情報をユーザー側で書き換えることはできないが、eSIMなら、ユーザーが自分で携帯電話事業者との契約を書き換えることができるほか、複数の契約情報を書き込めるため、 複数の回線契約(電話番号)を使い分けることも可能だ。

日本における「eSIM」対応状況

eSIMにはさまざまなメリットがあるため、普及が期待されているが、eSIMを利用するには、端末側の対応だけでなく、携帯電話事業者側での対応も必要となる。日本で正式販売されているeSIM対応端末としては、2018年秋以降にAppleから発売されたiPhoneの各モデル(下記の表を参照)などが挙げられる。

また、無線WAN対応のノートPCやタブレットでも、「iPad」をはじめとする下記表のデバイスなどが、eSIMに対応している。

「eSIM」対応状況の表

総務省は、携帯電話事業者に電波を割り当てる際、アクション・プランに沿った取り組みを行っているか審査するとともに、各社の競争が公正かどうかを毎年検証するとしており、2021年夏以降は、大手携帯電話事業者もeSIM対応プランを提供してくることになりそうだ。

「eSIM」の普及が進むと何が便利になるのか

eSIMの最大の利点は、 物理的にSIMカードを抜き差しすることなく、複数の契約情報を切り替えられる ことだ。その利点を最大限に享受できるのが、頻繁に海外出張に出かけるビジネスパーソンであろう。海外でもSIMカードを差し替えることなく、端末の操作だけで契約情報を切り替えられるので、利便性が大きく向上する。端末によっては、操作も不要で自動的にその国で使えるようにネットワーク情報を切り替える機能を備えているものもある。

海外にはあまり行かないという人でも、eSIMのメリットは大きい。携帯電話事業者の乗り換えが携帯電話ショップなどに行かずに簡単にできるようになるほか、一つの契約情報を複数のeSIMで共有することも可能になるので、気分やTPOに応じて好みの端末を使い分けることや、逆に一つの端末で複数の回線を使いわけることもできる。例えば、 同じ一台の端末でプライベートと仕事で回線を分けて料金を別々に精算することもできる のだ。

また、eSIMが普及すれば、携帯電話事業者間の乗り換えがより気軽にできるようになるため、事業者の囲い込みの力が弱まり、利用料金値下げにつながることが期待できる。