移動のサービス化、クラウド化

最近、「MaaS」(マース)という言葉を目にすることが増えてきた。インターネットサービスの分類では、「SaaS」(Software as a Service)や「PaaS」(Platform as a Serivce)といった言葉が使われているが、「MaaS」は、Mobility as a Serviceの略であり、IT技術を活用して自家用車以外の交通手段をシームレスに繋ぎ、一つの移動(モビリティ)サービスとして提供するものだ。移動のサービス化、クラウド化といってもよい。

基本的なイメージとしては、スマートフォンのアプリを使って、さまざまな交通手段を利用して目的地に到達するまでの行程を検索し、必要に応じてその交通手段の手配を行うことで、自家用車を使わずに目的地までのDoor To Doorを実現するものである。MaaSが普及することで、自家用車の利用が減り、都市部での渋滞が緩和し、二酸化炭素の排出量が減ることが期待される。また、都市部以外においては、自動運転車を使用することで、タクシーなどが少ない地域での利便性が高まる。さらに、バスや電車など既存の公共交通手段が有効に活用され、外出機会が増えることによって地域活性化にも繋がる。MaaSと観光や医療、不動産など異業種を結びつけることで、地域におけるさまざまなサービスとの相乗効果が生まれることも期待できる。

WILLERが提供しているAIオンデマンド交通サービス「mobi」アプリ。
限定的なMaaSといえる

MaaSの課題と可能性

しかし、MaaSの実現には、運営主体が異なる交通事業者の間で、シームレスに連携を行う必要があり、一朝一夕の実現は難しい。MaaSも、自動運転と同様にその交通サービスの水準によってレベル0〜4の5段階に分類される。レベル0は、全く統合されていない状態である。レベル1は「情報の統合」で、各交通サービスの運行時刻やルート、料金などが同一プラットフォーム上で統合されている状態である。いわゆる「乗換案内」などの経路情報サービスがレベル1に相当する。レベル2は「予約、決済の統合」で、同一プラットフォームから各交通サービスの予約や決済を一括して行える段階だ。レベル3は「サービス提供の統合」で、それぞれの交通サービス自体が同一プラットフォームで統合されるイメージで、月定額で一定エリア内の交通サービスが乗り放題になるサブスクリプションの提供もこの段階から可能だ。最後のレベル4は「政策の統合」で、国や地方自治体が都市計画や交通政策と結びつける形でMaaSを構築するレベルであり、MaaSの理想的な姿でもある。