V2Hの概要

電気自動車(EV)やハイブリッド車、燃料電池車など、環境に優しい自動車の普及が進んでいる。台数が多いのはハイブリッド車だが、ガソリンを全く消費しないという意味では、EVや燃料電池車のほうが評価が高い。EVは、バッテリーが高価なため、車両価格が高くなることが欠点だが、バッテリーのコストダウンも進み、買いやすい価格の車両も登場してきた。

最近話題のV2Hは、Vehicle to Homeの略で、EVのバッテリーに蓄えられている電力を家庭でも利用しようという新しい考え方である。単に自宅や駐車場などの充電スタンドからEVのバッテリーに充電した電力を家庭で利用するだけでなく、例えば、太陽光発電や燃料電池などで発電した余剰電力をEVのバッテリーに蓄え、必要な時に利用できるという仕組みである。EVのバッテリーを家庭用蓄電池としても活用するわけで、高価なバッテリーを賢く使う方法といえる。

V2Hシステムは、各社から発売されているが、その仕組みによって大きく「非系統連携」と「系統連携」に分けられる。非系統連携は、太陽光発電システムを設置してないか、あるいは設置していても、発電した電力を自宅で利用せず、売電にのみ使っている場合に向いたシステムで、EVからの給電中に電力会社からの電気を利用することはできないという制限がある。電気使用量がEVからの給電量を上回るとEVからの給電が停止し、電力会社からの電力供給に切り替わるが、その際瞬断(瞬間的な停電)が生じる。瞬断の影響をほとんど受けない家電もあるが、PCなどは瞬断が生じるとリセットされてしまうので、注意する必要がある。系統連携は、太陽光発電システムを設置済みで、発電した電力を自宅で使っている家庭向けのシステムで、太陽光発電からの電力、EVからの電力、電力会社からの電力を同時に利用できるため、瞬断などは生じない。

V2Hのメリット・デメリット

V2H導入の主なメリットとしては、「EVの充電時間が短縮できる」「停電時にバックアップ電源として利用できる」「電気料金の節約に繋がる」「停電時のバックアップ時間が通常の家庭用蓄電池よりも長い」ことが挙げられる。V2H機器の多くは倍速充電に対応しており、家庭用の200VコンセントからEVを充電する場合に比べて半分の時間で充電が可能になる。また、電力会社からの電力供給が途絶えた場合でも、EVのバッテリーに蓄えられている電力を家庭で利用できることは大きなメリットだ。日中にEVに乗る場合、電気料金が安くなる深夜料金で充電でき、日中外出しない場合は、夜間に蓄えた電力を家庭で使えるので、ピークシフトにも貢献し、電気代の節約が期待できる。さらに、一般的な家庭用蓄電池の容量は4〜12kWh程度なのに対し、EVに搭載されているバッテリーの容量は10〜60kWhと大容量であり、より長い時間バックアップ電源として利用できる。

V2H導入のデメリットとしては、「EVのバッテリーの劣化が早まる」「V2H対応のEVが必要」、「導入コストがかかる」ことが挙げられる。EVのバッテリーも、ノートPCやスマートフォンのバッテリーと同じように、充放電を繰り返すことで徐々に劣化し、容量が減ってくる。EVを走行のみで使う場合と比べると、家庭での利用でも充放電を行うことになるので、その分充放電回数が増え、早く劣化が進む。また、V2Hを利用するには当然EVが必要になるが、すべてのEVがV2Hに対応しているわけではない。V2Hを導入するなら、EV購入時にV2H対応車種を選ぶ必要がある。また、導入コストは、V2Hの本体費用と工事費が必要になる。国や地方自治体がV2H導入補助金を交付する制度があるため、補助金をうまく活用することで実質的な負担は半分程度に抑えられる。

現在太陽光発電システムを利用していて、ガソリン車からEVへの買い換えを考えている方は、V2H導入も視野に入れてみてはいかがだろうか。「ガソリン車+家庭用蓄電池」という組合せで家庭の電源をバックアップするよりも、「EV+V2H」で家庭の電源をバックアップした方が、基本的にコストパフォーマンスが高くなる。家庭用蓄電池がかなり高価なため、中古のV2H対応EVを購入して、家庭用蓄電池代わりに使うという手もある。

家庭だけでなく、事業所などでもV2Hの導入は有効がある。V2Hは、環境負荷を下げ、EVのバッテリーという大事なリソースを有効活用するソリューションとして今後広がっていくだろう。