インテル® Core™ Ultraプロセッサーの進化点

2023年12月15日、インテルは開発コードネーム「Meteor Lake」と呼ばれていたモバイルPC向け新プロセッサー「インテル® Core™ Ultraプロセッサー」を発表した。従来のインテルのプロセッサーは、Coreプロセッサーという名前で、Core i9/i7/i5/i3という製品ラインナップがリリースされていたが、インテル® Core™ Ultraプロセッサー(以下Core™ Ultra) は、「i」が付かないCore Ultra 9/7/5/という製品ラインナップとなる。インテルが新しいブランドのプロセッサーを発表するのは実に15年振りだが、新ブランドを付けるにふさわしい大きな進化を遂げた製品でもある。

Core™Ultraの主な進化点として、「Intel 4」「3Dパフォーマンスハイブリッドアーキテクチャ」「Intel Arc GPU」「NPU」の4つが挙げられる。順に説明していこう。まず、Intel 4というのは製造プロセスのことで、従来のIntel 7に比べ2倍のエリアスケーリングを実現(つまり同じ面積に2倍のトランジスタを実装可能)し、電力効率も20%以上向上している。

またCore™ Ultraは、インテルのプロセッサーで初めて、機能別のタイルを組み合わせるタイルアーキテクチャを採用した製品であり、コンピュートタイル、グラフィックスタイル、SoCタイル、I/Oタイルという4つのタイルから構成されている。コンピュートタイルは、いわゆるCPUコアとなる部分であり、このタイルのみIntel 4で製造される。2021年10月に発表された第12世代Coreプロセッサーで、インテルは初めて性能重視のPコアと効率重視のEコアという2種類のコアから構成されるハイブリッドアーキテクチャを採用したのだが、Core™ Ultraでは、それをさらに進化させた3Dパフォーマンスハイブリッドアーキテクチャを採用している。3Dパフォーマンスハイブリッドアーキテクチャは、コンピュートタイル内のPコアとEコアに加えて、新たにSoCタイル内にも2基の低消費電力版Eコア「LPEコア」を搭載し、全部で3種類のコアから構成されている。これにより、CPU負荷が小さく、LPEコアのみで処理が可能な場合は、コンピュートタイルの動作を停止でき、さらなる省電力動作を実現できる。また、PコアやEコアも改良されており、クロックあたりの性能が向上している。内蔵GPUも、単体GPUとして販売されているIntel Arcベースになり、従来のIris XeGraphicsに比べてシェーダの数が33%増加。実際のゲームでは、第13世代Coreに比べて9%~100%フレームレートが向上したという。

インテル®Core™Ultraプロセッサー。4つのタイルから構成されていることが分かる

「AI PC」が2024年のPC市場の目玉

最後のNPUだが、これが一番大きな変革でもある。NPUとは、NeuralProcessing Unitの略で、ディープラーニング(深層学習)で必要なニューラルネットワークの演算を高速に行う専用プロセッサである。AI専用アクセラレーターといってもよい。AIの急速な進化、普及に伴い、クラウドでAI処理を行うのではなく、クライアントPCでもAI処理、特に推論を行わせたいというニーズが増えてきた。そこで、AI処理性能を高めるためにNPUを搭載することが最近のトレンドとなっている。すでにQualcommのスマートフォン向けSoCやアップルのiPhoneに搭載されているSoCをはじめ、インテルのライバルであるAMDのモバイル向けCPU「Ryzen 7040シリーズ」にもNPUが搭載されている。もちろん、NPUだけでなくCPUやGPUでもAI処理は可能だ。Core™ Ultraでは3つのAIエンジンを搭載していると謳っており、NPU/CPU/GPUの合計処理性能は34TOPSに達する。Core™Ultraは、インテル初のNPU搭載であり、インテルが推進している「AI PC」(AI処理性能の高いPC)のキーとなる製品でもある。

Core™ Ultraは、ベースTDPが28Wの「H」シリーズとベースTDPが15Wの「U」シリーズに大別され、それぞれ4モデルが用意されている。現時点で最上位となる「Core™ Ultra 7 165H」は、6つのPコアと8つのEコア、2つのLPEコアを搭載した16コアCPUで、最大22スレッドの同時実行が可能だ。2024年第1四半期には、ベースTDPが45Wの「Core™ Ultra9 185H」とベースTDPが9Wの「Core™Ultra 7 164U」「Core™ Ultra 5 134U」が追加される予定だ。これらを含む11モデルはすべてEコアは8つ、LPEコアは2つに統一されており、Pコアの数や動作周波数によって差別化を実現している。

Core™ Ultraは、大きなジャンプアップを果たした製品であり、PCメーカー各社が搭載製品の発売をアナウンスしている。Core™ Ultraを搭載した「AI PC」は、2024年のPC市場の目玉となるだろう。