NEXT GIGAのポイント

ICT技術の発展・普及に伴い、教育現場でもICT技術の効果的な活用が求められるようになった。そこで文部科学省は2019年12月に、児童・生徒に1人1台のPCの実現を目指す「GIGAスクール構想」を発表し、全国の小中学校のICT環境の整備支援を急ぐこととなった。当初、GIGAスクール構想は2019年度から5年間かけて順次環境を整備する予定だったが、新型コロナウイルス感染の広がりを受け、スケジュールが大幅に前倒しされ、2021年3月末には、ほとんどの小中学校で端末の導入が完了した。GIGAスクール構想では、小中学校に導入する端末として、Windows端末、Chromebook、iPadの3種類が想定されており、それぞれ標準仕様が公開されていた。具体的な仕様は、Windows端末については、OSがWindows 10 Pro相当、CPUが2016年8月以降に製品化されたIntel Celeron同等以上、メモリが4GB以上、ストレージが64GB以上とされており、Chromebookについては、CPUやメモリはWindows端末と同じで、ストレージが32GB以上とされていた。このスペックは当時としても決して高くはなく、特にWindows端末でメモリ4GBというのは、アプリケーションを快適に動かすにはかなり厳しいものであった。CPUについては、「Celeron N4000」や「Cereleron N4020」などが搭載されていたが、どちらも2コアCPUであり、動作周波数はN4000が1.1GHz〜2.6GHz、N4020が1.1GHz〜2.8GHzと、CPU性能も低いものであった。実際にGIGAスクール構想向け端末を導入した学校の現場においても、性能面での不満の声が多かった。こうした低スペックのPCが標準仕様として策定された背景にあるのが、端末整備の補助金が1台4万5000円までとされていたことであろう。

GIGAスクール構想が前倒しで整備されたことで、導入から4年以上経った端末が出てきており、端末更新が必要となってきた。この端末更新計画は通称「NEXT GIGA」と呼ばれており、2024年1月に文部科学省の基本方針が公表された。GIGAスクール構想と異なる主な点は「国の予算で都道府県に基金を造成し、そこから補助金を交付する」「1台あたりの補助金額が1万円アップの5万5000円に」「都道府県単位の共通仕様に基づく共同調達を原則とする」の3点だ。この方針では、2026年度までの2年間で約7割の端末を更新する計画である。これまでは同じ都道府県の小中学校でも学校によって、導入する端末のOSが異なることがあったが、共同調達によってコスト削減を狙うものと思われる。ここで問題となるのが、やはりPCのスペックである。文部科学省は2024年1月に、「学習用コンピュータ最低スペック基準」を公表した。この基準は、GIGAスクール構想における標準仕様書に代わるものとなるが、最低スペック基準ということからも分かるように、「標準」ではなく「最低満たすべき仕様」である。Windows端末では、OSがWindows 11 ProまたはWindows 11 Education相当になり、CPUがIntel Celeron N4500以上、ストレージが64GB以上、メモリが8GB以上(ただし、アプリケーションを追加せずにWebアプリケーションのみを使う場合は4GBでも可)、USB PD対応のUSB Type-Cを備えることというのが、最低スペック基準となっている(Chromebookについては、CPUがIntel Celeron N4500以上、USB PD対応のUSB Type-Cの搭載が変更点であり、ストレージとメモリについてはGIGAスクール構想の標準仕様と同じ)。

Intel N100と8GBのメモリを搭載した「HP Pro x360 Fortis G11 Notebook PC」

NEXT GIGAのスペック基準

やはり大きなポイントとなるのがメモリとストレージであろう。マイクロソフトは、文部科学省の最低スペック基準の発表に先立ち、2023年10月に「GIGA Basicパソコン」と「GIGA Advancedパソコン」という2つのNEXT GIGA向けWindows搭載PCの推奨仕様を公表している。GIGA Basicはメモリ4GB、ストレージ64GBという、NEXT GIGAの最低スペック基準の最小要件を満たすもので、マイクロソフトでは常にインターネットに接続し、「クラウド型」で学習するのに適したパソコン、GIGA Advancedはメモリ8GB、ストレージ64GBまたはメモリ8GB、ストレージ128GB以上であり、アプリケーションをインストールしてどこでも学習できる「オンプレミス利用可能型」パソコンと位置づけている。

日本HPやDynabook、レノボ、マウスコンピューターなど、GIGAスクール構想向け端末で高いシェアを誇るメーカーは、マイクロソフトの推奨仕様や文部科学省が公開した最低スペック基準を満たすNEXT GIGA向けの端末をすでに市場に投入している。例えば、日本HPの「HP Pro x360 Fortis G11 Notebook PC」は、CPUとしてIntel N100、メモリ8GB、ストレージ128GB、USB PD対応のUSB Type-Cを備えた2in1PCであり、GIGA Advancedの仕様を満たしていながら、想定価格5万5000円とNEXT GIGAの補助金で購入できる価格に抑え込んだ製品だ。Intel N100は、2コアのCeleron N4500とは異なり、4コアCPUである。動作周波数も最大3.4GHzに向上しているため、Celeron N4500に比べて、CPU性能は大きく向上している。Intel N100+8GBメモリなら、前世代のCeleron N4000+4GBメモリ搭載機に比べて、Windowsの動作は格段に快適だ。NEXT GIGA向けにWindows端末を導入するのであれば、Intel N100搭載PCを選ぶべきであろう。