Windows 11の発表、Windows 365のリリース、そして、Openライセンスプログラムの販売終了といったマイクロソフト製品を取り扱うビジネスが目まぐるしく変化している。これらのキーワードにより、エンドユーザー様にどのような影響があるのか、そしてパートナー様の営業活動はどうすれば良いのかを考えてみたい。
Windows 11リリース前でも必要であればPCを買い替えるべき
2021年6月、マイクロソフトは次期OS、Windows 11を発表した。2021年10月5日より提供開始となる。今から6年前、Windows 10はナンバリングされた最後のOSとアナウンスされてリリースされた。イノベーション企業が前言を翻すことはさほど珍しいことではない。マーケットの受け止め方はさまざまであるが、Windows 11がもたらすであろうITビジネスへの影響から考えてみたい。
Windows 10より以前、マイクロソフトはほぼ3年に1度のサイクルで新OSをリリースしてきた。それに伴い法人市場では、OSアップグレードのタイミングでのPCのリプレースが常態化していた。このビジネスモデルを過去のものにしたのが、オンラインにより常に最新の機能を提供するWindows 10のWindows as a Service(WaaS)という概念だった。
ではWindows
11の登場により、OSアップグレードとハードリプレースをセットにした販売戦略は復活するのだろうか。
一部には、ナンバリングOSの復活は、PC販促に影響があるとの見方もある。マイクロソフトがSurfaceを販売するハードメーカーでもあることを考えると、あながち的外れな見方ではないようにも思えるが、そう受け止めるとWindows
11の位置付けを見誤ることになる。なぜならWindows 11へのアップグレードは、
むしろ影響として考えられるのは、エンドユーザー様の受け止め方だ。Windows
11リリースを見越したPC買い控えの動きが表れ始めていることを考えると、その影響は思ったよりも大きい。
実はWindows 10のサポートは、バージョンごとに随時終了している。そして、すべてのWindows
10の延長サポートは、2025年10月14日に終了するとリリースされている。LTSCを除く端末は、
その際に注目したいのが、Windows
11のシステム要件の意外な高さだ。1GHz以上の2コアCPUや4GB以上のメモリー、64GB以上のストレージという要件は、今日的な観点では決して厳しいものではない。だが細部を見ていくと、そのハードルは高い。
着目したいのが、対応プロセッサだ。9月時点の公式発表では、Windows
11がサポートするのは、
その背景には、生体認証システムWindows Helloなどセキュリティ機能の強化があると見られている。バージョン2.0のTPM(Trusted
Platform Module)という要件もその一環と考えられる。
TPMのバージョンには大きく1.0と2.0があり、機能が大幅に強化された後者は仕様も大きく異なる。Windows
10の場合、TPMはBitLockerによるストレージ暗号化にも活用され、2016年7月28日出荷分以降のWindows 10 PCにはTPM
2.0の実装が義務化されているが、オフィスには今もTPM2.0未搭載のPCは少なくないと見られる。
Windows
11は、世界的なコロナ禍で常態化しているテレワークを含む業務のセキュリティアップのため、システム要件を引き上げたのだと考えられる。
ハードの性能に引きずられ、業務のパフォーマンスが低下することほど無駄なことはない。「社内に老朽化、陳腐化したPCがあるが、Windows
11搭載PCの発売まで待ちたい」と考えるエンドユーザー様に対しては、パートナー様の積極的な啓発が求められる。
Windows 365は今後も続くPC不足の解決策にもなる
次に注目したいのが、2021年8月2日に提供が開始されたWindows 365だ。
コロナ禍に伴うテレワークの普及もあり、VDIへの関心は高まっている。だが特に中小企業の場合、オンプレミスにせよ、クラウドを利用するにせよ、その導入にはある一定の知識と理解が必要だ。Windows 365は、
例えば、マイクロソフトがクラウドVDIプラットフォームとして提供するAzure Virtual Desktop(AVD)の場合、構成・管理の自由度の高さがある一方で、その利用には一定の専門知識が必要になる。またインフラ構築を自由に行うことは、ストレージ保管料や転送量に応じた利用料の変動にもつながる。それに対し、パッケージ化されたデスクトップ環境をセットアップや管理の煩わしさなしに、
Windows 365には中小規模企業向けBusinessと、大企業向けEnterpriseの2エディションがある。しかしながらEnterpriseという観点で考えると、社内にIT人材・IT部門を擁する大企業の場合、より柔軟な運用が可能なAVDの方に優位性があると考えられる。
Windows 365提案としてまず注目したいのが、PC不足への対応という観点だ。テレワークの普及や自動車や家電製品の半導体需要増を受け、昨年来、PCの価格上昇、納期遅れが続いている。特に大きな問題になっているのは、自動車メーカーとの取り合いが続く周辺チップの供給不足だ。車載用半導体チップはこれまで、減価償却を終えた旧世代の製造ラインで生産されてきた関係上、新たに製造ラインを立ち上げても価格面で太刀打ちできないという構造的な課題を抱えている。需要に応じた設備投資の困難さもあり、半導体チップ不足は今後しばらくの間続くと見込まれている。
特に私物PCによるテレワークのWindows 365移行はセキュリティ対策という観点でも大きな意味がある。またWindows 11に移行できない端末の当座の代替としてもWindows 365は有効である。
低価格プランであるWindows 365 Business(Basic)のハイブリッド特典ありの場合、2vCPU、4GBRAM、128GBストレージで料金は4,210円(ユーザー/月)。業務システムへの入力などの事務作業には使えそうなスペックとはいえ、実際の使用には想定外のことも起こり得る。またPCが必要になるときは、決まって急ぎとなることが多い。緊急時に慌てないためにも事前に検証しておくことが必要だと言える。
今最も求められるのはOpenライセンス終了への対応
Windows 11やWindows 365の登場以上に、パートナー様のビジネスに大きな影響を及ぼすのが、2021年末のOpenライセンスプログラムの販売終了であることは間違いない。
Openライセンスプログラムとは、デスクトップ製品やサーバー製品など、マイクロソフトの永続ライセンスプログラムの総称である。永続ライセンスの場合、2022年1月以降、
OpenライセンスプログラムとSoftware in CSPの大きな違いは、3ライセンス以上(Openライセンスプログラム)の最低発注本数の制約がなく、1ライセンスから販売が可能になる点である。またOpenライセンスプログラムは、ボリュームライセンスサービスセンター(VLSC)で管理されるのに対し、Software in CSPは、CSPプログラム同様にMicrosoft 365管理センターで管理され、CSP Indirectの商流で再販される点にも注目が必要だ。
既にCSPプログラムを利用して、マイクロソフトのサブスクリプション製品を販売している場合、そのまま同じテナントでユーザー企業のライセンスを一括して管理できるようになる。
Openライセンスプログラム終了は、サブスクリプションへの収束に向けた施策と見ることもできる。現行の永続ライセンス製品であるOffice 2019の延長サポート期限が2025年10月14日に設定されていることを考えると、エンドユーザー様にとっても永続ライセンスの使用期限が見えてくるはずだ。
パートナー様のビジネスの観点では、Openライセンスプログラム終了前の駆け込み需要に対して、販売機会の喪失を防ぐことを最優先に考えたい。その一方でストックビジネスへのいち早い取り組みは、より多くの利益を手に入れることにつながる。
サブスクリプションへの移行に不安のあるエンドユーザー様には、
今年末のOpenライセンスプログラム終了には、エンドユーザー様にどのような影響があるのかを理解しながらストックビジネスへとスムーズに移行することがパートナー様に求められている。