
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除され、業務環境がテレワークからオフィスへと回帰する中で、ウイルス対策が注目されている。また、これまでの対策は継承しつつ、紫外線(UV)を活用した新たな商材が登場している。そこで年末商戦に向け、オフィスの抗菌、除菌、滅菌ビジネスについて考えてみたい。
消毒と除菌、減菌、そして殺菌、抗菌の違いは?
新型コロナウイルスとの共存において大きな役割を果たすのがオフィスのウイルス対策だ。経済活動の再開が進む中、オフィスの抗菌化がこれまで以上に重要な課題になる。
現在、市場には多様なウイルス対策製品が登場しているが、一方で効果が不明であったり、健康被害が懸念される製品には注意が必要だ。そこでまずは、オフィスのウイルス対策の基礎知識を簡単に整理しておきたい。
新型コロナウイルス感染は原則として、ウイルスを含む飛沫が口、鼻や目などの粘膜に触れたり、ウイルスがついた手指でそれらの粘膜に触れることで起こる。そのためマスクの着用や、手洗いが感染対策として有効だ。同様に、身の回りのモノを消毒することで、手指に付着するウイルスを減らせることが期待できる。ドアノブなど、多くの人が触れるモノであれば効果は一層大きい。オフィスのウイルス対策において、
消毒・除菌を重点的に行う場所としてまず挙げられるのは、トイレや休憩室、喫煙所、更衣室、エントランス、会議室などの多くの人が利用する共用スペースだ。ドアノブや各種スイッチ、手すり、テーブルなど、人の手が触れる場所を中心に、入念な消毒・除菌が求められる。さらにデスクまわりも重点的に消毒・除菌を行うべき場所だ。なぜならオフィスでは、業務中に相手のデスクに出向くことがよくある。その際にデスクに飛沫が飛ぶと考えられるからだ。もちろん、デスク上のPCやキーボード、マウスもその対象になる。IT機器の消毒・除菌については、下のまとめを参考にしてほしい。

ところで、ここまで「消毒」と「除菌」という二つの言葉を併記してきたが、その違いはご存じだろうか。「消毒」の意味は菌やウイルスを無毒化することだが、医薬品医療機器等法(薬機法)においては、厚生労働大臣が品質・有効性・安全性を確認した医薬品・医薬部外品にのみ用いることが認められる表示になる。ただし、菌・ウイルスの無毒化という観点では、医薬品・医薬部外品以外でも同等の効果が得られる製品も多い。手指など人体に用いる場合は安全性が確認された医薬品・医薬部外品の使用が前提だが、オフィスの消毒・除菌が目的であれば、その表示にとらわれる必要はない。
なお、菌の制御という観点では、「減菌」「殺菌」の違いについても押さえておきたい。菌の制御において最も厳格な対応が「減菌」だ。厚生労働省が定めた医薬品の規格標準書『日本薬局方』では、「微生物の生存する確率が100万分の1以下になること」と定義され、この表示は医療機関で治療器具を衛生的に保つ減菌機などに用いられる。それに対し、「殺菌」の定義は薬機法上かなりゆるやかだ。殺菌の対象や程度は含まれず、1%でも菌を減らすことが認められれば、殺菌効果があることになる。なお、殺菌についても医薬品・医薬部外品のみ表示が認められる。
大塚商会が提供するオフィスサプライのうち、オフィスの除菌対策に関連する注目商品をいくつか紹介したい。まず、定番商品として、ライオンの「キレイキレイ 除菌・ウイルス除去スプレー」は、知名度やその効果に安心感がある。また、1時間ほどでウイルスや菌を低減・抑制する手軽な粘着シートのアキレス「ウイルセーフ」は、提案の価値ある商品だ。そして、意外なところでは、ラベルライターの「テプラ」が、感染症の注意喚起に使われるなど、活用の幅が広がっている。
光をエネルギーとして有機物を分解する光触媒
オフィスのウイルス対策では「抗菌」にも注目したい。「抗菌」は、直接的に菌を無毒化するのではなく、その増殖を抑制したり、菌が生存しにくい環境を生成することを指す。ただし、細胞を持たず、モノの表面で増殖することがないウイルスにこの定義は当てはまらない。そこで抗菌製品技術協議会(SIAA)では、「抗ウイルス」を「特定ウイルスの数を減少させること」と定義し、抗ウイルス加工した製品としていない製品を比較し、24時間後にウイルスの数が100分の1以下になった場合に、抗ウイルス効果があると定義する。すでに抗ウイルス加工されたキーボードカバーも市場に登場し、今後の注目が期待される。
また抗ウイルスという観点では、
エアロゾル対策として注目される空間除菌
新型コロナウイルスの空気感染については、現在、空気中を漂う飛沫核(エアロゾル)によっても感染するという認識が一般化しつつある。ウイルスはエアロゾル状態で、最長3時間空気中を浮遊するため、空間の消毒・除菌も大きな課題となる。
空間の消毒・除菌は、現在、アルコールなどの消毒液の噴霧が主要な方法と考えられているが、WHOは健康上の観点から室内空間における消毒剤の噴霧は推奨せず、米国疾病予防管理センター(CDC)は「噴霧は空気や環境表面の除染方法として不十分」という見解を表明している。厚生労働省の見解も同様で、現時点で、薬機法に基づいて品質・有効性・安全性が確認され、「空間噴霧用の消毒剤」として承認された医薬品・医薬部外品は存在しない。
こうした中、より安全な

太陽光には、目に見える可視光線と、目に見えない紫外線と赤外線が含まれている。太陽光による日光消毒など、除菌効果が古くから知られてきた紫外線は、波長の長いUV-A(315nm~400nm)、波長の短いUV-B(280nm~315nm)、さらに波長の短いUV-C(100nm~280nm)の3つの波長域に分類できる。このうち、除菌に大きな効果があるのはUV-Cで、最も殺菌力が強い波長260nmの場合、その殺菌効果は波長350nmの1600倍にも及ぶ。ただし、290nmより短い波長の紫外線は大気圏を包むオゾン層に吸収されるため、地上にUV-Cが届くことはない。このUV-Cの波長域の紫外線を利用し、細菌やウイルスのDNA/RNA構造を破壊し、増殖機能を無効化することが紫外線除菌の基本的な考え方になる。
そのメリットは、除菌のメカニズム上、ほぼ全ての細菌・ウイルスに効果が期待できる点だ。また耐性菌を作らない点もメリットの一つ。長期間使用した薬剤への抵抗性を持つ耐性菌の存在は、殺菌・除菌の課題だが、DNA/RNA構造を破壊するためその心配はない。

紫外線除菌には、大きく二通りの方法がある。一つは紫外線を空間やモノに直接照射する方法。紫外線ランプはすでに食品工場の除菌などに導入が進んでいるが、この場合、健康上の観点から作業者が在室中は紫外線照射は行えない。
もう一つが、内部に紫外線ランプを備えた除菌装置を利用する方法である。吸気口から室内の空気を取り込み、紫外線ランプで除菌した空気を吹き出す仕組みは空気清浄機に例えるとイメージしやすいが、この方法であれば健康への悪影響もなく、オフィスでも安心して使用できる。
紫外線ランプを利用した空気循環式の除菌装置は複数メーカーが発売している。大塚商会BP事業部が取り扱う「くりんクリン」(DNライティング)もその一つ。同製品は、強力な殺菌作用のある波長254nmの紫外線ランプを採用。製品内に浮遊菌を吸い込み、除菌後のクリーンな空気を排出する。
縦置き型、設置工事不要で運用が開始できる「くりんクリンStand」の設置目安は約18畳(75㎥、天井高2.5mを想定)で、同社の試験データによると、75㎥の浮遊ウイルスを3時間で約90%、6時間で約99%除去する能力を備える。

「感染リスクが高まる『5つの場面』」(内閣官房)によると、新型コロナウイルスは、
コロナ禍に伴い、リモート関連を除くと、企業のIT投資は様子見となる状況が続いている。また対面営業の制約が、積極的な営業提案の障害になるケースも目立つ。それだけにITにとらわれず、エンドユーザー様がいま求めている商材を積極的に開拓することは大きな意味を持つ。オフィスの除菌が年末商戦の重要なキーワードになることは間違いない。