昨年は、コロナ禍に明けて暮れた1年だった。誰もがここまでコロナ禍が長引くとは思わなかったと2021年を振り返る。緊急事態宣言発出が長引き、IT投資は滞り、営業活動はリモートに移行したとはいえ、満足な結果を残せなかったことは事実であろう。コロナの第6波への対応が必要な中で、新しい年がスタートした。2年間のコロナ禍で学んだ経験を生かし、2022年、パートナー様が提案すべきIT投資を探る。
過半数がWindows 11非対応?見えにくい移行シナリオ
2021年は、コロナ禍に明けて暮れた1年だった。特に1月8日の1都3県への緊急事態宣言発出から9月30日までの全面解除に至る9カ月間は、飲食業、宿泊業は言うに及ばず、経済活動全般の停滞につながった。中堅中小のIT投資抑制をはじめとしたITビジネスへの影響は決して小さくなかった一方で、ビジネスの下支えに大きな役割を果たしたのが、リモートワークやオンラインセミナーに代表されるリモート関連需要だった。また昨年は、一昨年から続くGIGAスクール需要による校内ネットワークや自治体サーバーを中核とするネットワーク構築も大きな役割を果たした。
ここで2021年のITビジネスのトピックについて振り返っておきたい。まず注目したいのが、昨年6月に突如発表されたWindows 11である。最後のナンバリングOSともいわれ、2015年の公開以来、年2回のメジャーアップデートを繰り返してきたWindows 10の後継OS登場に驚かされた方は多いはずだ。その背景にあったとみられるのが、リモート業務時に重要となる
具体的な対応としては、Windows 10の暗号化機能BitLockerでも利用されるTPM2.0への対応である。近年のエンドポイントのセキュリティ対策は、OSやアプリケーションに加え、ファームウェアの脅威への対策が不可欠になりつつある。だがハードウェアを制御するファームウェアはOSが起動する前に動作するため、ファームウェアのウイルス感染や改ざんにOS上で動くセキュリティツールで対応するのは難しい。
その対策として注目されるのが
現実にTPM2.0などWindows 11インストール要件を満たさない端末は予想以上に多いようだ。あるIT資産管理ソフトベンダーによる調査では、
マイクロソフトはWindows 10最新版である21H2を昨年11月にリリースする際に、少なくとももう一つのHome/Proのバージョンを2025年10月までサポートすることを表明している。そのため企業のWindows 11移行シナリオに関しても不透明な部分が今なお多い。現行のWindows 10バージョンのサポート終了時期がエンドユーザー様の判断材料になると考えられるが、2023年10月のWindows Server 2012/R2サポート終了のタイミングも重要な商機になる。
リモートワークに関連して普及が進む新商材にも注目
2021年は、「リモート」がITビジネスにおける最重要キーワードだった。リモート商談やリモートワークに求められる最小限の環境整備に追われた一昨年と比較すると、その一歩先のニーズが目立ち始めたことが記憶に新しい。
マイクロソフトの場合、クラウドベースVDIは例えばMicrosoft Azureを利用することで構築できたが、その際には、Azure ADとActive Directoryの連携をはじめとする設定作業が必要だった。それに対し、DaaSであるWindows 365の最大の特長が導入の容易さになる。本誌でも紹介した通り、基本的にはニーズに応じてプランを選択し、管理画面上でユーザーを割り振るだけで即座に運用が開始できる。
そのメリットは従来のVDI同様、端末を問わず、セキュアなデータ運用が可能になる点だ。さらに中小企業のVDI利用ハードルを一気に引き下げたWindows 365の場合、
リモートの観点では、電子契約ソリューションの普及にも注目したい。コロナ禍を受けたテレワーク移行で多くの企業が直面した課題として注目されたのは契約書への押印だった。総務部門が管理する社判を押印するためだけに出社するという状況の解決策となったのが、クラウドで真正性のある契約が可能になる電子契約だった。
これまで電子契約は、保険契約や不動産賃貸の更新手続きなど、BtoCビジネスにおける契約手続きの効率化に大きな成果を挙げてきたが、2021年1月施行の法改正を受けた自治体の電子契約導入もあり、BtoBビジネスでもその普及が確実に進みつつある。
その他にもリモートワークとは意味合いが異なるが、2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法にも注目したい。国税関連書類を電子データで保存することを認めた電子帳簿保存法は、1998年の成立以来、これまで少しずつ導入ハードルが下げられてきた。別表にまとめた通り、そのハードルを一気に下げる今回の改正を受け、電子保存に移行する企業も多くなるとみられている。
特に注目したいのが、これまで3営業日以内だった請求書や領収書へのタイムスタンプ付与期間が発行から約2カ月に延長された点である。またスマートフォンのカメラで撮影した画像も電子データとして認められるようになった点にも注目したい。
また電子データ取引(EDI)において、
今年が勝負の年になるWindows Server 2012 EOS
リモート関連の需要に伴い、DX(デジタルトランスフォーメーション)の影が薄くなったきらいはあるが、具体的な事例も登場しはじめたこともあり、重要度は日増しに高まっている。だが、掛け声としてのDXならばともかく、エンドユーザー様がそれぞれの業務の課題に直面する中で求められるDXのあり方は千差万別だ。一筋縄ではいかないDXの商機を考える前に、まずは2022年のITビジネスのキーワードを整理しておきたい。
まず挙げられるのが、2023年10月のWindows Server 2012/R2サポート終了(EOS)である。調査機関によると、Windows Server 2012/R2が稼働する物理サーバーは国内に約45万台。そのうち30万台前後が新OSに移行するとみられ、サーバー移行スケジュールから逆算するとまさに今年が勝負の年になる。
クラウド移行がより現実味を持つ選択肢になったことが今回のサーバー移行の大きな特徴だが、全体としてみるとクラウド移行は少数派で、主流はやはりオンプレミスからオンプレミスへの移行になるとみられている。リモートワークとの親和性もあり、サーバーのクラウド移行は近年のトレンドになっているが、オンプレミスと比較して割高になることが少なくないことに加え、ダウンロード料金が高く設定されていたり、独自のサービス仕様などによりアップロードデータの移行が困難になるクラウドロックインに対する企業の懸念がその背景にある。
パートナー様のWindows Server 2012/R2移行提案は、仮想化によるサーバー統合など、エンドユーザー様の個別の課題に対応していくことが大切になる。その中でぜひ注目したいのが、管理業務の省力化という観点だ。仮想化に伴い、管理業務が煩雑化したという声を聞くことは多い。SANやNASなどの外部ストレージを使用するのではなく、
HCIのメリットとしてまず挙げられるのが、これまで物理サーバー、SAN、NASそれぞれで行う必要があった管理が一元化できる点だ。さらにトラブル発生時の障害切り分けという、管理者にとって頭が痛いプロセスが不要になる点もぜひ注目したいポイントだ。
一方、オンプレミスを基盤にしながら、増減するデータ量への対応や新規事業のデータ基盤にクラウドを積極活用したいというニーズも少なくない。この場合もやはり管理の煩雑化が大きな課題になる。こうした課題に対しては、サーバー製品ベンダーが「aaS(as a Service)」として提供するオンプレミスとクラウドのハイブリッド環境も選択肢になる。
また、サーバー移行はWindows 11端末へのクライアント移行の商機としても大きな意味を持つ。特にサーバー、クライアントの双方を同一部署が担当することが一般的である中堅・中小企業の場合、サーバー、クライアントを合わせた提案は、期待できる案件となるはずだ。
なおWindows Server 2012/R2は最大3年間の「拡張セキュリティ更新プログラム(Extended Security Updates、ESU)」の提供が既に発表されている。