コロナ禍への対応とDXの対応がポイント2022年、パートナー様が提案すべきIT投資

新たな年度を迎えるにあたり、パートナー様が知っておくべき重要なキーワードがある。それが「改正電子帳簿保存法」「改正個人情報保護法」「高校GIGA」だ。法改正はもちろん、国の施策として推進される「GIGAスクール構想」は、パートナー様のビジネスに大きなチャンスをもたらす重要なキーワード。何がどう変わったかを理解することで、次年度以降を見据えた提案戦略を構築したい。

電子帳簿保存法の改正

2022年1月に施行された電子帳簿保存法の改正ポイントは大きく2つ。一つは移行促進を目指した要件の大幅緩和。そしてもう一つが、電子取引に関する書類やデータの電子保存義務化である。電子取引にはビジネスで一般化している電子メールに添付されたPDF形式の請求書や領収書も含まれるため、これまで「電帳法は無関係」と考えてきた企業もその対応が迫られることになる。

3つの保存方法で理解する電子帳簿保存の考え方

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿や決算関係書類、契約書・請求書などの取引関係書類について、一定の要件さえ満たせば電子化して保存することを認める法律である。

1998年の施行以来、同法は段階的に要件の緩和が図られてきたが、今回の改正ではさらに一歩進んで、電子取引に限定されるものの電子保存の義務化という新方針が打ち出された。その対応については2023年12月末までの猶予期間が急きょ設けられたが、2023年10月にはインボイス制度がスタートすることもあり、できるだけ早く対応を済ませておく必要がある。

改正の具体的なポイントや対応策を見ていく前に、その全体像を把握しておきたい。まず押さえておきたいのは、帳簿や資料の種類に応じて、電子化に3つのやり方がある点だ。

一つは、 会計ソフトや表計算ソフトにより作成された仕訳帳、総勘定元帳などの国税関係書類に対応する「電子データ保存」である。会計ソフトなどで作成したデータについて、真実性や見読性が確保される方法で電子保存することがその基本的な考え方。これまでは「訂正削除履歴の確保」や「電子化帳簿と関連する他の帳簿の記載事項の連携」など、保存要件が詳細に定められていたが、改正によりその要件は大幅に緩和されることになった。また、貸借対照表をはじめとする決算関係書類、契約書などの取引関係書類などの自社で作成する書類やその写しの電子化でも同様のルールが適用される。

次が取引先から受領した請求書や領収書などの国税関係書類に対応する、「スキャナ保存」である。紙で受領した書類の電子保存は、スキャナやスマートフォンカメラによる電子化が必要になるが、今回の改正によりタイムスタンプをはじめとする真正性担保の要件が大幅に緩和された。
なお「電子データ保存」、「スキャナ保存」については、紙保存か電子保存のどちらかを任意で選ぶことができる。

そして最後が、電子取引に対応する「電子取引データ保存」だ。注目したいのは、改正により、電子取引については電子データ保存が義務化された点だ。EDIデータだけでなく、メール添付のPDFファイルやWebサイトからダウンロードした請求書・領収書もその対象になるため、その影響が及ぶ範囲は広く、多くの企業が対応を求められることになる。

電子帳簿の3つの保存方法とその対応
電子帳簿の3つの保存方法とその対応
※電子保存の義務化については、2023年12月31日まで2年間の猶予期間が設けられている

電子データ保存の改正ポイント

●事前承認制度の廃止

電子保存は、これまで原則3カ月前までに税務署長などへ申請し、承認を受ける必要があった。この手続きが不要になり、いつでも好きなタイミングで国税関連帳簿・書類の電子保存が開始できるようになった(スキャナ保存も同様)。

●保存要件の大幅緩和

真実性と見読性の確保のため、詳細に定められていた保存要件を全面的に見直し、簿記の正規原則(一般的には複式簿記)に従って記録され、「関係書類等の備え付け」と「見読可能性」の2つを満たす必要があり、税務署員によるデータダウンロードの求めに応じられるようにすることで電子保存が認められるようになった。

●不正抑止措置の整備

従来の要件を満たしている電子帳簿は「優良な電子帳簿」に認定され、過少申告加算税が5%免税されるインセンティブが整備された。一方、不正行為の抑止措置として、データ改ざんによる不正が認められた場合、追徴税額の重加算税(35%)にさらに10%が加算されることになった。

[対応策]既存会計ソフトのバージョンアップで対応できる。

最小限の保存要件は3つ
電子帳簿の3つの保存方法とその対応

スキャナ保存の改正ポイント

●適正事務処理要件の廃止

「相互けん制」「定期的な検査」などに関する社内規定を策定し、内部統制を行う適正事務処理要件が廃止された。これにより、定期検査に必要だった原本(紙書類)の保管が不要になり、スキャン後すぐに廃棄できるようになった。また、2名以上の対処が求められた事務処理についても1名で行えるようになった。

●タイムスタンプ要件の緩和

従来の受領者が自著した上で「3営業日以内にタイムスタンプ付与」という要件が大幅に緩和され、自著は不要になり、「最長約2カ月とおおむね7営業日以内にタイムスタンプ付与」に変更された。さらに、「データの修正や削除の履歴が残る、または修正や削除ができない」「入力期限内にデータを保存したことが確認できる」といった機能を持つクラウドサービスなどを使用する場合、タイムスタンプも不要になる。

[対応策]JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)が認証する、訂正・削除履歴が残るクラウドシステムやタイムスタンプ付与可能なデータ管理システムの新規導入提案のチャンス。

改正のポイント
改正のポイント

電子取引データ保存の改正ポイント

●電子保存の義務化

これまでデータで授受した国税関係書類について、これまで認められてきた紙出力による保存が禁止され、電子データによる保存が義務化された。なお、その施行には2023年12月末まで2年間の猶予が設けられた。電子取引は、データで国税関係書類を授受する全ての方法が該当し、EDI取引データのほか、電子メールによる請求書・領収書データ(PDFファイル)、Webサイトからダウンロードした領収書・請求書などが含まれる。これまで「電帳法は無関係」と考えていた企業であっても、電子取引に該当する取引を行っている場合、義務化の対象になる。なお、「検索要件」、「タイムスタンプ付与期間」については、電子データ保存・スキャナ保存と同様に緩和される。

[対応策]電子保存義務化への対応には大きく3つの方法がある。一つは取引先にタイムスタンプ付与などの協力を求めるやり方。次が受領した電子取引データへのタイムスタンプ付与や訂正・削除記録が残るシステムの導入。最後が事務処理規定の備え付けによる方法になる。

電子データ保存の具体的なイメージ
電子データ保存の具体的なイメージ

電子帳簿保存法の改正にまつわるビジネス提案

電子帳簿保存法の関連ビジネスであれば、タイムスタンプ商材が提案しやすい。具体的な提案商材を、いくつか紹介したい。

例えば、富士フイルムビジネスイノベーションの「DocuWorks」は、文書の受け渡しから作成、プレゼンテーション、保存まで、ドキュメントを扱う一連の業務をスムーズにサポートするソフトウェア。「PDFタイムスタンプ for DocuWorks定額パッケージ」により、タイムスタンプ押し放題のソリューションとして提案できる。

NASのような形状のアイ・オー・データ機器の「タイムスタンプ専用NAS (APX-TSFI/5P)」は、セイコーソリューションズが提供するタイムスタンプソリューション「eviDaemon」を組み込んだ特定用途向けの端末だ。5年間のライセンス込みで押し放題という点が提案しやすい。

そして、アドビシステムズの「Adobe Sign」のタイムスタンプは、電子署名を行う際に同時に実行される。アドビの電子サインサービス「Adobe Sign」は幅広い法的要件に準拠し、コンプライアンスを担保する世界で最も信頼されている電子サインソリューションと言える。

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