サーバー移行先はクラウドが伸長。IT導入補助金は下限を引き下げ
今年のITビジネスのイベントとしてまず挙げられるのが、10月に控えるWindows Server 2012/2012 R2のサポート終了だ。今年新たに導入されるインボイス制度や、電子取引の電子データ保存義務化の猶予期間終了への対応も注目したい。さらに昨年12月に発表されたIT導入補助金の変更点にも注目したい。
オンプレミス仮想化の本命は管理工数削減を実現するHCI
今年度のイベントでまず注目したいのが、2023年10月のWindows Server 2012/2012 R2(以下、2012/R2)サポート終了である。専門機関の調査では2021年末時点で稼働中のWindows Server 2012/R2は約40万台だが、過去の例と比べて移行ペースは遅く、半導体ネックによる物理サーバー不足や円安の影響もあり、EOS時点で移行が完了するのは6割程度にとどまると見られている。
ワークロード別ではファイルサーバーが22%、データベースが20%、アプリケーションサーバーが18%で、移行の見通しが立っていないのは、特に移行リスクが大きいアプリケーションサーバーが多いようだ。
移行先として最も多いのはオンプレミス仮想化環境で、移行予定のほぼ6割を占めることになるとみられている。次に多いのがクラウドで約3割、物理環境は1割にとどまる見通しだ。インフラのクラウド移行が進む理由の一つに、オンプレミスの管理工数の問題がある。近年、特に大企業では、DX推進の観点からも社内エンジニアリソースがインフラのお守りに費やされる状況を嫌う傾向が強まっている。現時点では、全面的なクラウド移行は考えにくいものの、今後、中堅・中小も含め、オンプレミス・クラウドのハイブリッド化が一層進むとみて間違いないだろう。
移行先の主流であるオンプレミス仮想化では、導入・管理に要する工数を大幅に削減できるHCIが本命になるだろう。仮想環境によるプライベートクラウド的な運用が一般化するはずだ。また、ハイブリッドクラウド環境の構築を前提にするなら、Azure Stack HCIも選択肢に入る。
2023年10月にはインボイス制度が施行される。二重徴収を防ぐ観点から、消費税は取引段階ごとに仕入時の納税額が控除される。2019年10月からの軽減税率8%と標準税率10%の複数税率化に対応するには、適用税率に応じた控除が必要になる。インボイス制度の施行はそれに伴うもので、取引の都度、適用税率・税額を明記した請求書(インボイス)を発行し、税務会計を行うのがその基本的な考え方である。
インボイス発行には「適格請求書発行事業者」としての登録が必要だが、多くの場合、既存会計システムのバージョンアップで対応が可能だ。注目したいのが、これまで免税事業者とされてきた年間課税売上高1000万円以下の事業者の対応である。今後はこうした零細企業もインボイス発行が求められることになるが、ベンダーによるサポート対象の会計システムを導入していない個人商店は今も少なくない。インボイス制度への対応では、こうした個人商店へのサポートも大きな課題になるだろう。
また2023年12月には、ペーパーレス化の促進を主要な目的として昨年1月に施行された電子帳簿保存法の「電子取引における電子データ保存義務化」の2年間の猶予期間が終了する。これについても運用中の会計システムのバージョンアップで対応が可能だが、サポート対象外のユーザーへの対応がこちらも大きな課題になる。
下限額の引き下げでインボイス対応にも対応
今年度のイベントでまず注目したいのが、2023年10月のWindows Server 2012/2012 R2(以下、2012/R2)サポート終了である。専門機関の調査では2021年末時点で稼働中のWindows Server 2012/R2は約40万台だが、過去の例と比べて移行ペースは遅く、半導体ネックによる物理サーバー不足や円安の影響もあり、EOS時点で移行が完了するのは6割程度にとどまると見られている。
ワークロード別ではファイルサーバーが22%、データベースが20%、アプリケーションサーバーが18%で、移行の見通しが立っていないのは、特に移行リスクが大きいアプリケーションサーバーが多いようだ。
移行先として最も多いのはオンプレミス仮想化環境で、移行予定のほぼ6割を占めることになるとみられている。次に多いのがクラウドで約3割、物理環境は1割にとどまる見通しだ。インフラのクラウド移行が進む理由の一つに、オンプレミスの管理工数の問題がある。近年、特に大企業では、DX推進の観点からも社内エンジニアリソースがインフラのお守りに費やされる状況を嫌う傾向が強まっている。現時点では、全面的なクラウド移行は考えにくいものの、今後、中堅・中小も含め、オンプレミス・クラウドのハイブリッド化が一層進むとみて間違いないだろう。
移行先の主流であるオンプレミス仮想化では、導入・管理に要する工数を大幅に削減できるHCIが本命になるだろう。仮想環境によるプライベートクラウド的な運用が一般化するはずだ。また、ハイブリッドクラウド環境の構築を前提にするなら、Azure
Stack
HCIも選択肢に入る。
2023年10月にはインボイス制度が施行される。二重徴収を防ぐ観点から、消費税は取引段階ごとに仕入時の納税額が控除される。2019年10月からの軽減税率8%と標準税率10%の複数税率化に対応するには、適用税率に応じた控除が必要になる。インボイス制度の施行はそれに伴うもので、取引の都度、適用税率・税額を明記した請求書(インボイス)を発行し、税務会計を行うのがその基本的な考え方である。
インボイス発行には「適格請求書発行事業者」としての登録が必要だが、多くの場合、既存会計システムのバージョンアップで対応が可能だ。注目したいのが、これまで免税事業者とされてきた年間課税売上高1000万円以下の事業者の対応である。今後はこうした零細企業もインボイス発行が求められることになるが、ベンダーによるサポート対象の会計システムを導入していない個人商店は今も少なくない。インボイス制度への対応では、こうした個人商店へのサポートも大きな課題になるだろう。
また2023年12月には、ペーパーレス化の促進を主要な目的として昨年1月に施行された電子帳簿保存法の「電子取引における電子データ保存義務化」の2年間の猶予期間が終了する。これについても運用中の会計システムのバージョンアップで対応が可能だが、サポート対象外のユーザーへの対応がこちらも大きな課題になる。
中小企業のIT導入では今年も「IT導入補助金」が大きな役割を果たすことになる。今年の補助額は最大450万円、補助率は1/2~3/4で、前年同様、生産性向上に資するITツール導入を広く支援する「通常枠」、インボイス制度への対応も見据えて会計・受発注・決済・EC等のソフトフェアやPC・タブレット・レジ・券売機等のハードウェア導入費用を支援する「デジタル化基盤導入枠」、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されるセキュリティサービスの利用料を支援する「セキュリティ対策推進枠」に分けて行われる。
2022年度第二次補正予算を受けた今年の変更点で注目したいのは、通常枠の5万円をはじめとする導入下限の引き下げである。それにより、インボイス対応やクラウド利用料、安価なツール購入も補助の対象になった。
補助対象の製品・サービスがあらかじめ設定されたIT導入補助金に対し、より自由度が高いシステム導入を実現するのが、補助金額最大1,000万円、補助率2/3(小規模)の手厚いサポートが得られる「ものづくり補助金」だ。ただし、その採択は狭き門であるのが実情である。こうした中、注目されるのが、経済産業省の「事業継続力強化計画認定制度」である。認定を受けた中小企業は、税制措置や金融支援のほか、ものづくり補助金を含めた補助金の加点などの支援策が得られることがその理由である。申請に必要な書類はA4用紙4枚程度と、中小企業でも取り組みやすく、補助金制度を活用した大掛かりなシステム更新を検討するエンドユーザー様にとっては、その第一歩として注目したい制度といえそうだ。