Windows 10のサポートが2025年10月14日に終了する。セキュリティを担保するためのリプレースはもちろんだが、注目したいのが、OPEN AIのGPTをベースに開発され、Windows 11に実装されたMicrosoft Copilotの存在だ。多くの企業がAIのビジネス活用を重要課題として掲げる中、Windows 11とMicrosoft Copilotの組み合わせがリーズナブルな解になることは間違いない。
Windows 11へのマイグレーションは生産性向上にも効果大
Windows 10のサポートが2025年10月14日に終了する。マイクロソフト製品はこれまで、最低5年間のメインストリームサポートと最低5年間の延長サポートが提供されてきたが、Windows 10のファーストバージョンの提供が開始されたのは2015年7月29日。Windows 10は登場以来、半年~1年のサイクルでバージョンアップを繰り返してきたが、これまで同様、提供開始から10年を目安にサポートが終了することになる。
Windows 10の最終バージョンは2022年10月18日に提供開始されたVersion 22H2で、現時点での移行先は、2024年10月1日提供開始のWindows 11 Version 24H2が唯一の選択肢になる。
これまでWindows OSサポート終了に伴うOSマイグレーションは、セキュリティの観点からのみ語られることが一般的だった。もちろん、セキュリティリスクへの対応がWindows 11移行において重要な意味を持つことは間違いないが、それと共に注目したいのが生産性向上という観点である。まず注目したいのが、OPEN AIのGPTをベースに開発され、Windows 11に実装されたMicrosoft Copilotの存在だ。中でもWord、Excel、PowerPoint、Outlook、TeamsなどのOfficeアプリと連携して動作するMicrosoft 365 Copilotによる強力な生成AI機能は、資料の作成や会議の要約、ビジネスメール作成など、負荷が高いワークロードを最大42%省力化すると、マイクロソフトは説明する。多くの企業がAIのビジネス活用を重要課題として掲げる中、Windows 11とMicrosoft Copilotの組み合わせがリーズナブルな解になることは間違いない。
Windows 11のCopilot in Windowsが提供する対話形式のトラブルシューティング機能による、社内ヘルプデスクへの負担軽減も注目したいポイントの一つで、ヘルプデスク問い合わせ件数の80%削減という事例もすでに登場している。
またセキュリティの領域でもWindows 11は大きな一歩を踏み出している。まず注目したいのは、TPM 2.0によるストレージ保護機能の強化である。TPM(Trusted Platform Module)とは、マザーボードに実装される、パスワードや暗号化キー、セキュリティ証明書を発行・管理するセキュリティモジュール。Windows OSにおけるその利用例としてまず挙げられるのが、デバイスのストレージを暗号化することでデータを保護するBitLocker機能である。
ストレージ暗号化では、復号鍵を同じストレージ領域に保存する限り、ストレージへのアクセスを許した時点で暗号化は無効になってしまう。それに対して、物理的に独立した領域であるTPMで復号鍵を管理することで、USBドライブなど非正規の方法でPCを起動してストレージに不正アクセスする手口からデータを守ることが可能になる。TPMは以下の役割を担う。
・暗号化メールの送受信
・個人認証データ(Windowsへのログイン情報)の保護
・不正アクセスによるOS、アプリケーションの改ざんの検知
TPMには1.2と2.0の二種類があり、TPM 1.2 はデータ保護が主な機能だったのに対し、TPM 2.0 では不正アクセス阻止などの機能強化が図られている。マイクロソフトによると、あるWindows 11導入事例では、セキュリティインシデントの58%減少が確認できたという。
これまでは社内で使用するデバイスについては、従来型のネットワークセキュリティ対策(境界型防御)で対応できていた。ところがコロナ禍をきっかけにリモートワークが普及する中、セキュリティ対策が大きな課題となっている。業務デバイスの盗難や紛失を起点とした情報漏えい、内部システム進入リスクが起こりうるからだ。これがあらゆるトラフック、アクセスをリスクあるものと見なすゼロトラストセキュリティの考え方が広がる背景といえる。TPM 2.0に基づくデバイス保護は、今後のセキュリティ対策の前提の一つになるはずだ。
移行時の選択肢は三つ。ニーズに応じて使い分けたい
ある調査によると、2024年9月時点の日本国内におけるWindows OSシェアは、Windows 11が44%強に対し、Windows 10は54%弱に及ぶ。法人ユーザーに限定すると、Windows 11の比率はこれよりも多少高い数字になるとみられるが、中堅・中小企業の場合、移行が遅れるユーザーも多いとみられる。サポート終了直前の移行は、品薄で希望機種の調達が難しくなると予想され、移行に向けた事前検証の時間が確保できなくなるなどの問題が生じることもある。移行が遅れるエンドユーザー様には、今後、より積極的な提案を図っていく必要がある。
Windows 10サポート終了への対応には、いくつかの選択肢がある。一つは既存デバイスのOSをアップグレードする選択肢だ。Windows 10最終バージョンである22H2 Home/ProからWindows 11 Home/Proへの移行は無償で行えるため、それが重要な選択肢になることは間違いない。ただしその場合は、デバイスがWindows 11のシステム要件を満たしていることを確認する必要がある。Windows 11のシステム要件の中で特に注目する必要があるのは、すでに触れたTPM 2.0対応という要件である。マイクロソフトは、OEMメーカーが2016年7月以降に出荷するWindows OS搭載PCについて、TPM 2.0搭載を必須としてきたが、それ以降に調達したPCであっても要件を満たしていない可能性は少なくない。
使用中のWindows 10デバイスがWindows 11 にアップグレードできるかは、「Windows Update」で簡単に確認できる。アップグレード要件を満たしている場合は「Windows 11 へのアップグレードの準備ができました」と表示され、要件を満たさない場合は「このPCはWindows 11を実行するための最小システム要件を満たしていません」などと表示される。
二つ目がPCリプレースである。Windows 11のパフォーマンス最大化という観点からも、最も合理的な選択肢になることは間違いない。その際注目したいのが、Microsoft IntuneとWindows Autopilotを使い、管理者が指定したアプリ・ドライバ・ポリシー・設定をクラウド経由で配信し、ユーザー自身が開梱・ログイン・クラウドからの自動更新を行うゼロタッチデバイス管理である。PCリプレースでは、キッティング工数が大きな課題であり続けてきたが、ゼロタッチデバイス管理により、導入や展開に必要な時間を75%以上削減することが可能になる。
最後がWindows 365として提供される、Windows 11クラウドPCの利用である。この場合、スペックを問わず既存端末を使い続けることも可能だ。
一方で、アプリケーション互換性の観点からWindows 10を使い続けたいというニーズも存在する。それに対応するのが、サポート期限が切れた後もWindows 10のセキュリティを担保する拡張セキュリティ更新(Windows 10 ESU)プログラムである。期間は最長3年間で、その間、セキュリティパッチが提供される一方、新機能や技術サポートの提供は行われない。マイクロソフトは同サービスを「即座にWindows 11移行が難しいユーザーに対する一時的な橋渡し」と位置付けている。Windows 10 ESUはサポート終了1年前の2024年10月から利用可能で、ライセンス料金は1デバイスあたり、2025年10月からの1年間が61米ドル、2年間が122米ドル、3年間が244米ドル。なお、ESUを2年目から1年間利用する場合は122米ドル、3年目から1年間利用する場合は244米ドルが課される。
なお、Windows 365に移行した場合、すべての端末にWindows 10 ESUが無償で提供される。それにより既存デバイスをセキュアに運用し続けることが可能になる。
LLMの進化はパラメーター数増大の歴史でもある。その飛躍的な拡大が、今日のAIを形づくったといっても過言ではない。ChatGPT-4のパラメーター数は5,000億~1兆と推定される。人間の脳のニューロン数は1000億個といわれることを考えれば、単純比較はできないが、その膨大さは理解できるはずだ。
データセンターのリソースだからこそ可能になる、パラメーターによる一連の処理をデバイス側が担うのは、当然ながら現実的ではない。こうした観点で開発が進んだのがSLM(小規模言語モデル)である。この分野で先行したのはグーグルで、Gemini Nanoを2023年12月に発表し、同社のハイエンドスマホに実装を開始し、AppleもApple Intelligenceと名付けたSLMを開発していることを既に発表している。
こうした中、マイクロソフトは以前からPhi-3ファミリーと名付けたSLM開発を行ってきた。Copilot+ PCへの実装が発表されたPhi Silicaは、ファミリーの中で最小となる33億パラメーターで稼働するSLMという位置付けになる。なおLLMやSLMによる言語モデルは、対話型AIだけでなく、画像生成まで含め、全ての生成AIの基盤になっている。