Windows 10 サポート終了

PC入れ替えでは3、4年後を見据えたスペック選定が重要

今年10月のWindows 10サポート終了を前にしたPC入れ替え需要の高まりも、2024年のITビジネスのトピックの一つだ。前回PC入れ替えが集中したのは、2020年1月のWindows 7サポート終了前のことだったが、その際に導入したPCの入れ替えが進むとみられる。

前回のPCリプレースでは、直後に発生したコロナ禍に伴うリモートワーク対応が急務の課題になったことは記憶に新しい。今回のリプレースではWebカメラ搭載がデバイス選定の必須条件になっているが、4、5年前から今に至るPC利用環境の変化は想像以上に大きい。Web会議において音声や映像の遅延が問題になることは今も多いが、端末側の処理能力が要因であることも実は少なくない。前回のPCリプレースは、Intel Core i5相当のCPUと8GBメモリの組み合わせが標準的な仕様だったが、同程度のスペックの端末でもすでに能力不足が目立ちつつあるようだ。

今後4、5年、PCを使い続けることを前提にするなら、ある程度、スペックに余裕を見ておくことがパフォーマンスを発揮し続ける上で重要であり、結果としてリーズナブルな選択になるはずだ。メモリ16GBはその一つの目安になるが、それ以外にも注目したいポイントは少なくない。生体認証への対応はその一つである。

アカウントのセキュリティでは、近年、生体認証を前提にしたパスワードレス認証が注目されている。リモートアクセスに際して複雑なパスワード入力が不要になる利便性に加え、フィッシング等によるパスワード漏えいリスクが回避できるからだ。現在、生体認証は指紋認証が主流だが、読み取りに手間取ることも少なくない。Windows Hello対応のIRカメラ搭載端末であれば、こうした問題を解決することが可能だ。SSOソリューションと生体認証の組み合わせはアカウントセキュリティ強化の解決策の一つだが、そのスムーズな導入においてIRカメラによる顔認証が果たす役割は小さくないだろう。

また今回のリプレースでは、AI処理を専門的に行うNPU(Neural network Processing Unit)を搭載したAI PCや、今後のサービス提供に先駆けてマイクロソフト社が設定するデバイス側のAI処理能力に対応したCopilot+ PCも大きな注目を集めた。全社的な導入を検討するには時期尚早だが、今後の注目商材の一つになることは間違いない。

Adobe Copilot+ PCの発表は昨年大きな話題になった

なお昨年は、Copilot+ PCのローンチパートナーにQualcommが選ばれ、ARMアーキティクチャのSnapdragon X Elite/Plusを搭載するCopilot+ PCがPCメーカー各社から発表されたほか、x86系チップを長くけん引してきたIntelがファウンドリ事業の行き詰まりからその分社化を発表する一方で、TMCに製造を委託するAMDがシェアを大幅に拡大するなど、半導体ビジネスの地殻変動が強く印象付けられた一年でもあった。

Windows 10 入れ替えのその後

アフターEOSではAI Readyに注目

SMB市場が慌ただしくなる。一方で、Windows OSのサポート終了に伴う商機のたびに繰り返されてきたのがPC入れ替え後の売上の落ち込みである。

企業のIT予算に制約がある以上、ある程度は仕方がないことだが、売上維持を図る上では、PCの入れ替えが落ち着いてからの二の矢、三の矢を用意することが重要であることは間違いない。今回の提案でまず注目したいのが、AI Readyというキーワードである。

AI PC、Copilot+ PCといったAI処理に最適化された端末は、デバイス側でAI処理を行うメリットの不透明感や端末の高額さもあり、現時点での導入は時期尚早という見方が一般的だ。しかし2年後、3年後まで視野に入れると、デバイス側のAI処理を前提にしたサービス提供が進むことが予想される。

こうした中、注目したいのが、LLM学習での社内データ活用という観点だ。すでに触れたとおり、プライベートAI環境の可能性は幅広い。特に中堅・中小企業にとり、その第一歩になるのが、サイロ化した社内データのMicrosoft Azureへの統合であることは間違いないだろう。生成AI活用に弾みがつく中、生成AI活用の準備は意義のある提案になるだろう。

社内リソース利用を前提とした
マイクロソフトのチャットAI利用イメージ

Adobe ExpressとAdobe Fireflyによる、クリエイティブ業務の内製化提案にも注目したい。これまでデザインツール市場は限られていたが、画像生成AIの登場は、こうした状況を大きく変える可能性を持っている。

さらにコロナ禍を受け2020年以降前倒し配備されたGIGAスクール構想一人一台端末の入れ替え需要にも注目する必要がある。GIGAスクール構想第二期NEXT GIGA端末の主流はChrome Bookになるようだが、端末の故障が社会問題にもなった第一期での反省を踏まえ、品質や信頼性も重要課題になるとみられている。

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