身の回りの“需要”をもう一度見つめ直そう

著書の中で、日本はいち早く経済を復活させられる可能性があると書かれた理由をお聞かせください。

高橋氏:経済を復活させるために国ができるはいくつかありますが、最も効果的なのは、中央銀行にお金をつくらせることです。日本で言えば、日本銀行(日銀)が有価証券などを大量購入し、それを裏付けとして紙幣を大量に刷る。このやり方なら、財政負担をかけずに巨額のお金をつくることができます。

そのお金を助成金として全国に配れば、中小企業や個人事業主は新型コロナによる不況を何とか乗り切って、日本経済はいち早く復活できるはずです。

EU(欧州連合)の場合、加盟国は27もあるのに、中央銀行は欧州中央銀行(ECB)ひとつしかないので、各国の思惑がせめぎ合って、なかなかお金をつくらせることができません。

結局、「EU復興基金」というものをつくって域内経済回復の資金に充てることにしましたが、わたしに言わせれば、不十分な次善策だと言えます。

マスクを着用し市街を巡回する警備員

また、米国は1つの国に、連邦準備制度理事会(FRB)という1つの中央銀行なので、日本と同じように、国が中央銀行にお金をつくらせやすい状況にはありますが、コロナ禍が非常に深刻であることや、今年11月に控える大統領選挙で国がゴタゴタしていることなどで、うまく機能していないのが実情です。

これらを踏まえると、 先進国の経済は、もっともお金をつくりやすい日本、次に米国、最後にEUの順 で回復していくことになるでしょう。

中小企業は当面、どうやって生き延びればいいでしょうか。

高橋氏:国がお金をつくり、企業に配ろうとしているのですから、公的な助成金はもれなくもらうようにしたほうがいいですね。

国の持続化給付金だけでなく、 各地方自治体もさまざまな給付金や助成金を提供 しています。インターネットでくまなく情報を調べて、もらえそうなお金はしっかりもらっておきましょう。

それによって経営の足元が固まれば、次にどんなビジネスをすればいいのかということを考える余裕が生まれ、攻めの経営に転じられるはずです。

また、今回のコロナ禍を機に、社員がテレワークでも営業活動やその他の業務ができる体制づくりを進めてみてはどうでしょうか。

まとめ

最後に本誌読者にメッセージをお願いします。

高橋氏:コロナ禍で大幅に縮小したとは言っても、日本は世界で3番目にGDPが大きい国ですし、その8割以上を内需が占めているのが他の国にはない強みだと思います。

新型コロナが流行する前はインバウンドがもてはやされましたが、コロナによってグローバルな経済活動が停滞しても、国内需要だけで十分に食べていける潜在力を備えているというのは、非常にありがたいことです。

中小企業の皆さんは、身の丈に合わないグローバルビジネスに挑むよりも、 身の回りの“需要”を見つめ直し、地域に根差したビジネスに取り組んでみてはどうでしょうか。

もちろん、“供給側”の論理ではなく、“需要側”に思いを致しながらビジネスに取り組むことが大事です。

“供給側”の論理ではなく、“需要側”への発想の転換
身の回りの“需要”を見つめ直し地域に根差したビジネスが重要

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