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PROFILE

元刑事・コメンテーター 佐々木 成三 氏

一般社団法人スクールポリス理事。元埼玉県警察本部刑事部捜査第一課の警部補。
デジタル捜査班の班長として、デジタルフォレンジック(デジタル証拠)の押収解析を専門とし、埼玉県警察における重要事件(捜査本部)において、携帯電話の精査、各種ログの解析を行なっていた。
埼玉県警察本部刑事部捜査第一課において巡査部長5年、警部補5年の計10年間を勤務。これまで数多くの捜査本部に従事して、被疑者の逮捕、被疑者の取り調べ、捜査関係者からの情報収集、被害者対策、遺族担当を従事し、数多くの実績をあげてきた。
現在は、一般社団法人スクールポリス理事として、テレビコメンテーター、ドラマ監修、講演会など幅広く活動中。「あなたのスマホがとにかく危ない」「刑事力コミュニケーション20の術」「捜査一課式防犯BOOK」など著書多数。

スマートフォンやSNSの普及とともに、デジタル犯罪に襲われる危険が増えている。特に狙われやすいのが、ネットでの出会いを通じて安易に他人を信用してしまう子どもや、情報弱者の高齢者たちだ。年々巧妙化する犯罪に遭わないようにするにはどうすればいいのか。元埼玉県警察本部刑事部捜査第一課の警部補で、『あなたのスマホがとにかく危ない ~元捜査一課が教えるSNS、デジタル犯罪から身を守る方法』(祥伝社刊)の著者である佐々木成三氏に聞いた。

リテラシー教育は親がしっかり行いたい

『あなたのスマホがとにかく危ない ~元捜査一課が教えるSNS、デジタル犯罪から身を守る方法』を読ませていただきました。

佐々木氏:この本は2020年2月に発行したのですが、その後、新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、デジタル犯罪の危険はますます高まっています。

新型コロナが発生するまでは、親は子どもに「スマートフォンを持つな」と言えました。デジタル犯罪から子どもを守るためには、そもそもデジタルとの接点を持たせないことが確実な対策ですからね。

ところが、新型コロナで学校に行けなくなり、オンライン授業が行われるようになると、スマホを持たせないわけにはいかなくなってしまった。

その分、 子どもたちがSNSなどに熱中して、誘拐などの危険にさらされる危険が高まっているのです。

SNSのアイコン群のイメージ写真

スマートフォンやSNSの使い方に関する教育の必要性もますます高まっていると思いますが、学校だけに教育を頼っても大丈夫なのでしょうか。

佐々木氏: スマホやタブレット端末、PCを正しく使うことは、社会人になってからも大切です。学校がしっかり教育すべきだと思いますが、あやしいサイトを覗いちゃいけないとか、誘いに乗ってはいけないといったリテラシーの部分は、親が教育すべき だと思います。

「横断道路を渡るときは、まず左右をよく見て」とか「歩道があるところでは、必ず歩道を歩きなさい」といったことは、子どもを心配する親心から、家庭でしっかり教えるものです。

佐々木成三氏の写真

デジタル犯罪の危険を教えることも、まったく一緒だと思います。子どもにスマホを持たせるかは親の判断なので、使い方にも責任を持たなければなりません。

交通ルールを教えるのと同じように、 日常会話の中で、さりげなく教えてあげるのがいいのではないでしょうか。

SNSなどのデジタルコミュニケーションは、交通ルールと違って「何が危険なのか?」を十分に理解できていない親も少なくありません。

佐々木氏:そこでお勧めしたいのは、子どもと一緒にオンラインゲームなどをやってみることです。

危険の存在や姿かたちに対する認識が不明確だと、親の指導はどうしても抽象的になってしまいます。

例えば、「知らない人の誘いに乗っちゃいけないよ」と言っても、子どもたちは、オンラインゲームで一緒に遊んでいる人は「知らない人ではない」と思うかもしれません。

そうした子どもたちの感覚や認識をしっかり理解しておかないと、正しい指導はできないのです。

親子でタブレットを楽しむ写真

子どもの判断は未熟なので、「知っている人」であれば、危険など一切考えず「会ってみたい」と思ってしまいます。ある調査によると、SNSをしている小学校1年生から6年生の女の子のうち、 2人に1人の割合で、SNSで知り合った顔も知らない人に「会ってみたい」と思った子と、実際に会ったことがある子がいる ことがわかりました。とても危険な傾向だと思います。

親自身がSNSやオンラインゲームの危険性をしっかり認識したうえで、「何が、どう危険なのか」を子どもにもわかりやすいように教えてあげることが大切です。

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