真実かどうかを疑い、確かめる心構えを持たせる
高齢者を対象にしたデジタル犯罪も後を絶ちません。なぜ、こうした犯罪は一向に減らないのでしょうか。
佐々木氏:現在、高齢者などを狙った特殊詐欺は
かつては息子を装った犯罪者が高齢者にお金を要求する「オレオレ詐欺」が流行しましたが、その手口に関する報道が広がると、次には警察官や税務署の職員などを装った犯行が増えました。お金の受け取り方も、被害者の自宅を直接訪ねる方法から、ゆうパックによる郵送、ATMによる振り込みへと変化し、最近では
高齢者の多くは、普段接する情報がテレビや新聞、雑誌などに限られているので、どうしても最新の動向に疎くなってしまいます。オレオレ詐欺のような昔からの手口には気付いても、最近の手口に関する情報はないので、結局だまされてしまうのです。
どう対処すればいいのでしょうか。
佐々木氏:なるべく
また、新しい手口の犯罪に関する情報は、ご近所付き合いの中で広がりやすいものです。地域コミュニティに積極的に参加することも、情報をアップデートするのに役立つはずです。
今後、高齢者を狙った犯罪が減っていくと思われますか。
佐々木氏:残念ながら、むしろ犯罪が増えるのではないかと危惧しています。
なぜなら、情報はたくさん入手できても、それが
現在の親世代のように、子どものころに携帯電話やインターネットがなく、情報を取るのに苦労したアナログ世代は、乏しい情報源から、なるべく正しい情報を得ようとしたものです。わたしが刑事時代に教え込まれた、情報の“ウラを取る”という作業です。
デジタルネイティブの子どもたちは、その作業をすることなく、受け取った情報をストレートに受け止めてしまうので、どうしても騙されやすくなってしまいます。
犯罪者にとっては、騙しやすい人が増えるわけですから、むしろ今よりも特殊詐欺やデジタル犯罪の危険は高まるのではないでしょうか。
1,000人の「いいね」より身近な人の「いいね」を
ほかに、親世代がデジタルネイティブの子どもたちのために教えてあげてほしいことはありますか?
佐々木氏:将来なりたい職業」の一つとして、ユーチューバーを挙げる子どもが増えていますよね。「ネット上でたくさんの人に評価され、認められたい」という気持ちが強くなっているからだと思います。
SNSでも「いいね」をたくさん付けてもらうことに喜びを感じる子どもが少なくありません。しかし、それを最優先して、他人に迷惑をかけるような行為を平気で行い、SNSや動画サイトにアップロードする若者が増えているのがとても気になっています。
親の世代の方々には、
具体的には、どのように教育すればいいのでしょうか。
佐々木氏:悪いことをしたら叱るというのは当然ですが、悪いところは見つけやすいので、つい怒ってばかりになってしまいます。
むしろ、よい行いをしたら、積極的にほめてあげるのがいいと思います。
身の回りの人たちによる心のこもった「いいね」が、この人たちのためにもっと喜ばれることをしようという気持ちにつながり、周りに迷惑をかけてはいけないという思いや、何事にも果敢に挑もうとするチャレンジ精神を生むのだと思います。
その際に大切なのは、そのときの状況や感情に左右されることなく、常に客観的なスタンスでほめてあげるようにすることです。
どんなに些細なことでもいいので、
コミュニケーションのデジタル化によって家族や身の回りの人との触れ合いが希薄になっている時代だからこそ、こうした体験は欠かせないと思います。
知らない人から1,000件の「いいね」をもらうより、
たった1人でも身近な人からの「いいね」が断然素晴らしい