毎月2回、ITビジネスの最新情報を提供するBPオンラインセミナー。10月はGIGAスクール構想、テレワークにも最適なVDIソリューション、そして自律走行可能なテレプレゼンスロボットをテーマに、ベンダーの第一線の担当者によるセミナーが行われた。ここでは、そのサマリーを紹介していきたい。

GIGAスクール構想におけるHP Chrome Bookの強み

オンラインセミナー「HP商流でGIGAスクール案件を攻略する!」タイムスケジュール

10月14日のセミナーの主要テーマは、大きな注目を集めるGIGAスクール構想。セッション1は、株式会社日本HP パートナー営業統括 第一営業本部 第一営業部の福森 一世氏が、仕様縛りという観点からHP Chrome Bookの特長を解説した。

ビジネスITを主戦場とするパートナー様は、分野の異なる文教案件は手を出しにくいカテゴリーといえるだろう。だが、 公立小中学校だけでも600万台の端末が必要になると見られるGIGAスクール市場において、文教分野の有力プレーヤーはすでに手一杯というのが実情だ。福森氏は10月時点で8割の入札が終了していると推測するが、それでも 2割(=120万台)が残されている計算になる。これから調達を開始する私学の存在を考慮すると、GIGAスクール市場にはまだ多くの商機が残されている。

日本HPが提供するGIGAスクール端末は、Windows 10端末1種、Chrome Book端末2種の計3種。今回のテーマであるChrome Bookによる仕様縛りにおいて、特に注目したいポイントは以下の4点。1つ目は Wi-Fi 6による同時多接続をスムーズに実現。Wi-Fi5との比較映像からは、クラス全員のPC画面がスムーズに切り替わる様子が確認できた。2つ目が 15時間以上というバッテリー駆動時間。3つ目が 引き取りサービスへの対応だ。GIGAスクール端末サポートはセンドバック保守が一般的。梱包や発送の手間を不要にする同サービスは重要なポイントだ。そして最後が基本パッケージに搭載された Google管理コンソール運用支援ツールの存在だ。このツールの解説は次のセッションに引き継がれた。

HP Chrome Bookの写真

セッション2は、チエル株式会社 プロダクト営業グループ プロダクト営業部 高杉 聡美氏にバトンタッチされ、管理コンソール運用支援ツール「InterCLASS Console Support」の機能が具体的に紹介された。

クラウド利用を前提とするGIGAスクールでは、児童生徒一人ひとりへのアカウント配付が必要になる。アカウントは個人識別のため入学年度や学籍番号などを組み合わせることが一般的だが、キーボード操作に慣れない児童生徒の場合、ログインに多くの時間が費やされることが懸念される。同ツールの第一のポイントは、 紙に出力したQRコードを端末カメラで読み取ることで即座にログインできる点にある。

課題の作成、配布・回収、採点などをペーパーレスで行うGoogle Classroom管理の省力化も注目したいポイントだ。Google Classroomの通常設定は、学習者を招待し承諾を得るプロセスが必要になる。長期休養中の児童生徒の登録が難しいという問題が懸念されているが、同ツールであれば 承認を得ることなく即座に登録・運用が可能になる。GIGAスクールの課題解決にもつながる同ツールは、教育現場において大きな役割を果たすことが期待される。

テレワークとも親和性が高いバーチャルモビリティ

オンラインセミナー「今知っておきたい注目の2製品」タイムスケジュール

10月28日のセッション1に登場したのは、今年8月のオンラインセミナーでも紹介され大きな注目を集めたパーソナルロボット「temi」。株式会社hapi-robo st事業開発担当 取締役 執行役員の土居 昌博氏による事例を含めた詳細な解説が行われた。

搭載カメラとディスプレイを通して遠隔地の会議などに参加できる「temi」はテレプレゼンスロボットに分類できるが、同社はこれをバーチャルモビリティと呼ぶ。自律走行機能により、 遠隔地からタブレットやスマートフォンで端末を自由にコントロールできることがその理由だ。「temi」はビジネスに新たなスタイルを生む可能性を持っている。

例えば、オリジナルの海外旅行プランを提供する旅行代理店の場合、店舗スタッフに高い専門性が求められる。ところが人材は限られているという課題があった。「temi」を店舗に配置することで一人のスタッフが複数店舗をカバーすることも可能になる。さらに来店者の対応を「temi」で行えば、店舗の無人化も可能になる。

セミナーでは、今年6月に二子玉川蔦屋家電で行った「temi」を使った無人店舗実験が紹介された。タブレット端末による一般的なオンライン接客と違い、 来店者の行動に応じ、自由に動き回りながら商品紹介が行える特長は大きなインパクトを与えたそうだ。「ソーシャルディスタンス」が日常になりつつあるなか、新たな無人店舗の可能性を考えるうえでも大きな役割を果たしそうだ。

パーソナルロボット「temi」の写真

セッション2では、「VDIに最適なHPEソリューション」をテーマに日本ヒューレット・パッカード株式会社 パートナー営業統括本部 第一営業部 瀧澤 花衣氏によるセミナーが配信された。

テレワークの普及に伴いVDIが注目されているが、その構成には2つの方法がある。 全ユーザーに仮想デスクトップを提供する「フルクローン」と、Mクローンを展開する「リンククローン」である。ストレージが共有でき、比較的低コストで導入可能な後者がこれまでVDI移行の主流だったが、通信遅延やアプリインストールが自由に行えないなどのデメリットは普及の弊害にもなっていた。

そこでコストを抑えたフルクローン移行手段として注目したいのが日本ヒューレット・パッカードのHCIであるSimpliVityだ。その最大のポイントは 重複排除機能によりストレージ容量が抑えられる点にある。SimpliVityの重複排除機能には定評があるが、それはデータ重複が発生しがちなVDIにおいてより大きな効果が期待できるからだ。

VDIは100~200ユーザー程度の規模では、イニシャルコストのメリットが見えにくい。それ以外では端末管理が不要になることによる、 管理の大幅な簡素化やバージョンアップのたやすさなどのVDIならではのメリットになる。「 テレワークが広く普及する今だからこそ、中小規模の企業であってもVDIのメリットは大きい。それをぜひお伝えしていきたい」という言葉でセミナーは締めくくられた。

なお同日は、講師に加え、BP事業部スタッフもリモートワークでセミナーを運営する初の試みとなった。ほんの1年前は夢物語のようだった働き方が次々と現実になる今、新情報へのアクセスはこれまで以上に重要になるはずだ。ITビジネスに関する新情報収集にはBPオンラインセミナーをぜひ活用したい。