【連載】

作業を効率化させる Excelテクニック集(4)

第4回 ミスを防ぎ効率化を図るポイント

掲載日:2022/03/08

第4回 ミスを防ぎ効率化を図るポイント

今回は、ミスを減らすためのポイント・作業時間を短縮するコツをご紹介する。ミスはどうしても起こり得るものだ。しかし、いくつかのチェックポイントを押さえておけば軽減はできる。ミスが減れば、その確認やリカバリーにかかる時間も削減でき、結果として業務効率化につなげられる。

第1回「押さえておきたい基本テクニック」はこちら

第2回「便利なワンランク上のテクニック」はこちら

第3回「基本的な関数を身に付ける」はこちら

ポイント1 入力内容をキー一つで確認

セルに入力されている数値が、直接セルに入力した数字なのか関数による結果なのかは一見しただけでは判別がつかない。

該当セルを選択すれば、関数の場合はタスクバー(数式バー)に数式が表示される。もう一つの確認方法は「F2」キーを使うことだ。セルを選択して「F2」キーを押すと、セル内が編集モードになり、数式が該当セルに表示され、参照先のセルが罫線で囲まれた状態になる。

複数セルの確認をする場合は、「F2」キーを押して確認したセルから、以下のようにキーを押して移動する。
● 右隣のセルに移動:「Tab」キー
● 下のセルに移動:「Enter」キー
● 上・左のセルに移動:「ESC」キーで編集モードを解除した後、「↑」「←」キー

編集モードを解除するときは「ESC」キーを押せばよい。

ポイント2 トレース機能で参照元・参照先を確認

「トレース機能」を用いると、数式の参照元、参照先に誤りがないかチェック可能だ。

チェックするセルを選択し、「数式」タブ>「ワークシート分析」>「参照元のトレース」または「参照先のトレース」をクリックすると、参照元・参照先が表示される。

参照元のセルは●(青丸)で確認でき、基準のセルに向かって青矢印が表示される。参照元が別シートの場合は、ワークシートのアイコンと黒破線の矢印が表示される。

参照先は、選択したセルを基点とした矢印の表示で確認可能だ。

また、参照元・参照先が数式で設定したセルと異なる箇所を示していれば、数式の誤りを発見できる。

同じ数式を使っているセルを複数選択してそれぞれの参照元・参照先を表示させると、1カ所だけ誤った数式が入っている場合は、異なったセルから参照していることが明確になる。

ポイント3 折れ線グラフで異常値の発見

入力した数値に異常値がないか、折れ線グラフを作ってみると発見につながることがある。以下の例では、一月分だけ数値が大きく上振れしているため、入力ミスである可能性を見つけられる。

折れ線グラフを作成する場合は、確認する数値の入ったセルを選択し、「挿入」タブ>「グラフ」の折れ線グラフをクリックし、グラフの形状を選択しよう。

ポイント4 ファイルの管理に気をつける

前回の作業の続きを行うときや更新をするときは、ファイルをコピーして、新たなファイルで作業することをおすすめする。万が一、誤ったデータを上書きしたり、ファイルを破損させたりしたときにさかのぼれるからだ。

ファイル名は、部内で統一ルールを決めておこう。共有ファイルのファイル名の付け方がバラバラだと管理しにくいうえ、ファイルが先祖返りしてしまうリスクもある。

例:
● 表題_yyyymmdd_1
● yymmdd_1_表題
● 表題_ver1

ポイント5 「自動保存」機能を使う

Excelの左上にある「自動保存」をオンにしておくと、何かあったときに過去のファイルをさかのぼって確認できる。

「ファイル」タブ>「情報」>「バージョン履歴」をクリックすると、自動保存された過去の履歴が表示される。その一覧から、さかのぼりたいファイルを選択しよう。

ポイント6 横方向のデータ入力効率を上げる

ここから、作業効率を上げるコツを確認していこう。

Excelのデフォルトでは、セルに入力して「Enter」キーをクリックすると、1つ下のセルに移動される。このとき、「Enter」キーではなく「Tab」キーを押せば右のセルに移動する。

しかし、手癖でどうしても「Enter」キーを押してしまう場合は、以下の設定をすると良い。

1.「ファイル」タブ>「その他...」>「オプション」で「Excelのオプション」画面を開く。
2. 「詳細設定」を選択し、「編集オプション」の「Enterキーを押したら、セルを移動する」で以下を設定する。
→「Enter」キーを押したあと移動しない:チェックを外す。
→「Enter」キーを押したあと右、上、左に移動する:チェックを入れたまま、方法を選択する(デフォルトでは下)。

ポイント7 データの入力規則を利用

Excelで集計する際、一文字異なっているだけでも同じ値だとは認識されない。人名なら、髙橋/高橋、渡邊/渡辺、斉藤/斎藤などの変換ミスがあると違う姓としてカウントされる。

こういうケースの場合、「データの入力規則」機能を用いれば、用意したリストから選択するだけなので表記が揺れることを防げる。

データの入力規則が設定されているセルでも直接文字を入力することはできるが、リストに含まれない文字列を入力するとエラーが出る。

設定方法は、以下のとおりだ。
1.「データ」タブ>「データ ツール」>「データの入力規則」を選択する。
2.「データの入力規則」画面で、「入力値の種類」で「リスト」を選択する。
3.「元の値」に、選択肢を「,」で区切って入力し、「OK」をクリックする。

ポイント8 複合参照でマトリクス作成を簡単に

連載第3回で、「絶対参照」と「相対参照」の説明をしたが、この両方の性質を併せ持ち、行または列のいずれかのみを固定するのが「複合参照」だ。

以下のようなマトリクス表で、相対参照で「=A2*B1」とし、それをコピー&ペーストで入れていってしまうと、「=A3*B2」「=A4*B3」…と、参照元の行も列も変わってしまう。逆に、「=$A$2*$B$1」という絶対参照にすると、B2~F6の全てのセルで同じ計算結果が出ることになる。

ここでは、個数はA列、価格は1行を必ず参照させたい。この場合に用いるのが「複合参照」で、下記の例の場合は数式が「=$A2*B$1」となる。

なお、絶対参照、複合参照は一文字ずつ$→A→2と入力していくほかに、まず相対参照の値を入力し、「F4」キーで変換していく方法もある。

A2を入力して「F4」キーを押すと、以下のように変換されていく。

A2→$A$2→A$2→$A2→A2
※相対参照→絶対参照→複合参照(行だけ固定)→複合参照(列だけ固定)

このように、数式ミスをチェックする方法の再確認や、ファイルの管理方法の設定によってミスを減らし、作業効率化につなげられる。この機会に、ちょっとしたテクニックも押さえておきたい。