【連載】
HCIの売り方(2)
アフターコロナのサーバービジネス
掲載日:2022/01/18

コロナ対策が「ウィルスとの共存」を前提にした新たなフェーズに移行しつつある今、コロナ禍のその先まで見据えた企業の取り組みも始まりつつある。こうした中、オフィスのIT基盤としてのサーバーに求められるものはどのように変わろうとしているのか。コロナ禍におけるサーバービジネスの現況と将来について、日本ヒューレット・パッカード合同会社 パートナー営業統括 第一営業本部 高橋 憲治氏に話をうかがった。
アフターコロナでもリモートワークは最重要キーワードに
現在、日本を含め多くの国の新型コロナ対策は、「ゼロコロナ」から「コロナとの共存」に収斂しようとしている。コロナの影響が考えられていたより長期間に及ぶと見られる中、影響をコントロールし、経済活動の正常化を図ることへと考え方の方向が転換されたからだ。それを受け、企業もコロナと共存しつつ、さらにその先を見据えた設備投資を確実に進めていくことが求められている。こうした状況下で、サーバービジネスは何に注目し、エンドユーザー様にどのような提案を行うべきなのだろうか。日本ヒューレット・パッカード合同会社 パートナー営業統括 第一営業本部 高橋 憲治氏に聞いた。
――まずコロナ禍におけるサーバービジネスの現状を教えてください。
高橋氏 コロナ禍が始まり2年が過ぎようとしていますが、その間、サーバービジネスのキーワードになったのが「テレワーク」や「リモートワーク」でした。当社でも、例えばHPE SimpliVityによるVDI構築需要が大きく伸びています。一方で、ITインフラの観点では、特に通信回線の帯域不足が浮き彫りになったエンドユーザー様も多かったはずです。実は当社でも、以前からオフィスにフリーアドレス制を導入していたこともあり、テレワークへの移行はスムーズに行くはずと考えていたのですが、移行当初は、回線容量の不足からカメラをオフにしないとリモート会議に参加できないというトラブルも数多く発生しました。現時点でも、回線に関する課題を抱えるエンドユーザー様は少なくないと見られます。ただし、テレワーク、リモートワーク導入が、アフターコロナでも大きな課題であり続けることは間違いないと私は考えています。
――特に日本企業の場合、テレワークへの評価は必ずしも高くないという調査結果もあります。そうした中、テレワーク導入は避けて通れないと考える理由はどこにあるのでしょう。
高橋氏 まずはグローバルな動きです。世界では今、コロナ禍をきっかけにオフィス環境も含め、働き方の最適化を再検討する動きが目立っています。実はHPE米国本社は、今年初めシリコンバレーからヒューストンに本社オフィスを移転していますが、それもテレワークを前提にしたオフィス環境最適化の一例です。そもそもシリコンバレーの賃料の高さは異常ですからね(笑)。それと注目したいのは、これまで日本企業の中核を担ってきた世代が次々と定年を迎える中、どのように次世代を担う人材を確保していくかという課題です。優秀な人材を確実に確保するためには、その運用も含め、テレワーク環境の整備がキーワードになることは間違いないように思います。また、近年の気候変動問題に対応したBCP整備という観点も重要です。豪雨や豪雪が交通網などに与える影響はさらに大きくなると見られる中、テレワークの意義もより大きくなるはずです。さらに言うと、特に営業担当の方であれば、コロナ禍を受けたリモート移行の恩恵を皆さん実感されているはずです。客先に出向かずに要件が済んでしまえば、移動時間が不要になるわけですからね。

――するとアフターコロナでもテレワーク、リモートワークは重要なキーワードであり続けるのでしょうか。
高橋氏 私はそう思います。例えば当社事例には、コロナ禍を受け、テレワークの有効性に気付かされたものの、急遽VDI環境を構築した付け焼刃のVDIでは限界があることから、再度HPE SimpliVityでVDIを再構築した事例があります。エンドユーザー様が開発系のIT企業だったことで、テレワークのメリットが見えやすかったという事情もありますが、今後コロナ禍が一段落する中、改めてテレワークに注目する動きは増えてくると思います。そうした中、サーバービジネスにおいてはVDI構築が重要なキーワードであり続けることは間違いないはずです。
――VDIについては、近年DaaSが選択肢の一つとして浮上し、すでにパッケージ化されたサービスも登場しています。こうした中、オンプレミス環境にVDIを構築するメリットはどこにあるのでしょう。
高橋氏 VDIにはユーザー全員にディスク容量を割り当てるフルクローンと、単一ディスクをユーザー全員で使うリンククローンという大きく二つの方法があります。リンククローンにはコストは抑えられる一方で、個別ユーザーのニーズに応じた構成が困難というデメリットがあり、その硬直性がVDI普及の弊害の一つになってきました。特に導入の容易さや低コストを売りにするDaaSの場合、リンククローン同様な制約があることが一般的です。そのため、優れた重複排除機能によりリンククローンと同程度のディスク容量でフルクローンVDI構築が可能なHPE SimpliVityの特長はそのままDaaSとの比較でも有効です。

――VDI以外にアフターコロナのサーバービジネスで注目すべきキーワードはありますか?
高橋氏 まず挙げられるのがエッジコンピューティングです。クラウド移行の動きに代表されるシステム集約化は、システムダウン時の影響の大きさとユーザーから離れた場所にデータがあることによる回線環境の影響という2種類のリスクを伴います。手元でデータを管理するエッジコンピューティングであれば、その解決は容易です。
その手法として注目されるのが、最小わずか2ノードで可用性を担保するHPE SimpliVityのエッジサーバーとしての活用です。グローバルでビジネスを展開している大手小売店の事例では、世界各国の拠点にHPE SimpliVityのエッジサーバーを立ち上げ、データを分散すると同時にそれらをメッシュ的にバックアップする仕組みを構築し、運用を開始しています。またこれまで以上にレスポンスのよいデータのやり取りが求められるIoTの世界でもエッジコンピューティングが大きな役割を果たします。今後、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドが一般化する中で、オンプレミスサーバーが担う役割も今後変わってくると考えられます。未来を予測するのは難しいのですが、その答えの一つがエッジコンピューティングであると考えています。

コロナ禍におけるサーバービジネスでは、お客様の従業員規模にみあった「VDI」と拠点間をつなぎ、回線環境のリスク回避とアクセスの負荷を分散する「エッジコンピューティング」が、エンドユーザー様の課題解決に貢献するかもしれない。