【連載】

モビリティビジネス Starter Book(4)

高性能化により注目が集まるAndroidタブレット
5Gとの組み合わせでビジネス活用のトレンドに

掲載日:2021/10/17

高性能化により注目が集まるAndroidタブレット5Gとの組み合わせでビジネス活用のトレンドに

数年前までのAndroidタブレットは低価格な製品が中心であり、ビジネスで使うという発想はあまりなかった。しかし、最近は高性能CPUや高解像度液晶を搭載し、5Gに対応した高性能Androidタブレットが次々と登場しており、本格的なビジネス用途として十分選択肢に入るようになってきた。そこでAndroidタブレットの現状とそのビジネス活用について解説する。

第1回「普及の進むeSIM、ノートPCの5G対応も進みつつある」はこちら

第2回「テレワーク時代は端末のセキュリティ管理が肝要。デバイスとMDM機能を同時提案で売り上げアップ」はこちら

第3回「年内にリリースされるWindows 11のビジネスチャンス。モバイルデバイスのリプレイス提案で商機をつかみたい」はこちら

高機能Androidタブレットの
選択肢が少なかった理由

タブレットは搭載OSによって、Androidタブレット、Windowsタブレット、iPadの3種類に大別できる。WindowsタブレットはノートPCとしても使える2in1タイプの製品も多く、ビジネス用途でも広く使われていた。また、iPadは、ペンの精度が高いことから、文教用途での人気が高かった。

WindowsタブレットやiPadが比較的高性能で価格帯も高めであったのに対し、Androidタブレットは中華タブレットやAmazon製のKindleシリーズなどの低価格だが、性能も低い製品が中心であった。こうしたAndroidタブレットは、主に個人がWebブラウザや電子書籍の閲覧、ゲームなどのプライベートで使う端末として認識されており、ビジネスで使うという発想はあまりなかった。

2020年あたりからChrome OSを搭載したChromebookのシェアが大きく伸びてきた。このChromebookの躍進には、全国の公立小中学校の全生徒に1人1台の端末を用意するというGIGAスクール構想が大きく関わっている。

GIGAスクール構想では、Windows搭載PC、Chromebook、iPadの3種類の端末の利用が想定されており、当初はWindows搭載PCやiPadのシェアが高かった。しかし昨年後半からChromebookを導入する学校が増え、2021年8月末時点ではChromebookのシェアが40%を超えて1位となっている。

教育向けChromebookの投入にあわせて、ビジネス向けChromebookも各社からリリースされ、Chromebookをビジネス用途で導入する企業が増えてきた。ChromebookはWebブラウザの「Chrome」を使うためのデバイスだが、セキュリティ対策がしやすいことと、運用管理が楽にできるという利点を持つ。

Chrome OSは、自動アップデートにより常に最新の状態に保つことができるため、OSの脆弱性を悪用するマルウェアに強い。また、アプリケーションがそれぞれサンドボックス化されて実行されるため、仮にあるアプリケーションがマルウェアに感染しても、ほかのアプリケーションに影響を与えることがない。

さらに管理サービス「Chrome Enterprise Upgrade」が用意されており、Chromebookの一元管理が可能なほか、万一従業員がChromebookを紛失した場合でも、管理部門が即座にそのデバイスを無効化できるため、データの流出を防げる。

2017年以降に発売されたChromebookでは、Android搭載スマートフォン用アプリケーションの大半が動作するようになっており、弱点であったアプリケーションの少なさも改善され、実用性も向上した。

Chomebookはその性格上、ニューノーマルな働き方であるテレワークとの相性が非常に良い。Chromebookのビジネス利用が広がったことで、業務フローをクラウドベース化し、Windowsに依存しないように再構築する企業も増えてきた。そうした中、注目が集まっているのがAndroidタブレットのビジネス利用である。

ビジネス向けが続々登場
高性能Androidタブレット

 

2020年あたりからビジネス活用を想定した高性能Androidタブレットが続々と登場している。例えば、レノボの「Lenovo Yoga Tab 13」、「Lenovo Tab P11 Pro」がその代表だ。

Lenovo Yoga Tab 13は、13型液晶搭載の高性能Androidタブレットであり、CPUとして8コアのSnapdragon 870を採用、8GBのメモリと128GBのストレージを備える。液晶の解像度が2,160×1,350ドットと高く、microHDMI入力端子を備えているため、PCなどに接続して外部ディスプレイとして使えることも特長だ。さらにキックスタンドを内蔵しており、さまざまなスタイルで利用できる。

Lenovo Tab P11 Proは、11.5型有機EL搭載のAndroidタブレットであり、CPUとして8コアのSnapdragon 730Gを採用、6GBのメモリと128GBのストレージを搭載。有機ELの解像度が2,560×1,600ドットと高いことも魅力だ。オプションとして着脱式キーボードやデジタルスタイラスペンのLenovo Precision Pen 2が用意されており、ビジネス用途を意識している。

NECの11.5型有機EL搭載のAndroidタブレット「LAVIE T11 T1195/BAS」も2,560×1,600ドットの高解像度有機ELを搭載し、複数のアプリケーションをウィンドウ表示できるプロダクティビティモードを備えるなど、ビジネスに向いたタブレットである。

 

5G回線との連携が
タブレット活用の主流に?

 

Androidタブレットをビジネスに活用する際にポイントとなるのが、5G回線との連携である。AndroidタブレットはノートPCに比べて薄く軽く携帯性に優れていることが利点であり、5G回線を利用すれば、いつでもどこでもインターネットに接続して快適に作業が行える。

5G対応Androidタブレットも利用すれば、スマートに5G回線を利用できる。例えば、2021年9月8日に、レノボが発表したAndroidタブレットの新製品「Lenovo Tab P12 Pro」「Lenovo Tab P11 5G」は、どちらも5G対応モデルが用意されている(Lenovo Tab P11 5Gは、すでに発表されているLenovo Tab P11シリーズの5G対応モデルという位置付け)。

こちらの製品も日本発売は未定だが、近いうちに日本でも投入される可能性が高い。2022年には5G対応Androidタブレットの選択肢が増え、ビジネスでのAndroidタブレット活用の主流となる可能性もある。

5GやLTEに対応していないAndroidタブレットでも、NTT「Wi-Fi STATION SH-52B」などの5G対応モバイルルーターと組み合わせる手もある。こうしたコンパクトで軽い5G対応モバイルルーターなら、Androidタブレットと一緒に持ち歩いても苦にならない。

 

Androidタブレット+5G回線で
リモートデスクトップorVDIという手も

 

Androidタブレットをビジネス用途で使う場合問題となるのが、Windowsアプリケーションがそのまま動くわけではないということだ。業務で使うアプリケーションが全てクラウドベースでWebブラウザ上で動くようになっていれば問題はないが、実際はどうしてもWindowsアプリケーションが必要になることも多いだろう。

そうした場合、Androidタブレット+5G回線で、リモートデスクトップやVDI(仮想デスクトップ)を使うという手がある。リモートデスクトップが1台のサーバーに複数のユーザーが接続して同じデスクトップ環境を利用するのに対し、VDIはサーバーに仮想化専用ソフトを導入して仮想デスクトップ環境を実現し、1人のユーザーに対して1台の仮想マシンを割り当てるという違いはあるものの、どちらのソリューションを使っても、サーバー上で動作するWindowsアプリケーションを手元のAndroidタブレットで操作できるようになる。

マイクロソフトが2021年8月3日にサービスを開始した「Windows 365」も、Androidタブレットをビジネスで活用する際に役立つサービスである。Windows 365は、VDIによるWindows環境を実現するものだが、環境の構築が非常に簡単で、価格も月額2,720円からと低価格なため、中小企業でも導入しやすい。セキュリティ対策もしっかりしているため、Androidタブレットでテレワークを行いたいというニーズにぴったりであろう。

 

Androidタブレットをビジネスで
活用するという新しいトレンド

 

以前は、Androidタブレットをビジネスで活用しようと思っても、ビジネス利用に耐え得る性能を備えた製品が少なかった。しかし最近、高性能なAndroidタブレットが続々と登場してきたことやテレワークの普及により、クラウドベースで業務が完結するように業務フローが変わってきたこと、Windows 365のような気軽に利用できる仮想デスクトップサービスが登場してきたことなど、Androidタブレットをビジネスで活用するために求められるピースが全てそろった。

エリア拡大が加速している5Gと組み合わせることで、Androidタブレットはビジネスのさまざまな現場で役立つデバイスとなり得る。今後は、Androidタブレットを積極的にビジネスに導入することがトレンドとなりそうだ。