【連載】

モビリティビジネス Starter Book(5)

ahamo、povo2.0、LINEMOの現在地

掲載日:2022/1/25

ahamo、povo2.0、LINEMOの現在地

2021年3月、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクが相次いで格安料金プランを発表した。以前から格安SIMを提供しているMVNOはあったが、大手携帯電話事業者自らの格安料金プランということで注目を集めた。登場から8カ月以上が経過した現在、格安料金プランはどうなっているのだろうか? その現在地を探る。

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2021年3月、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が相次いで、格安料金プランを発表し、注目を集めた。こうした料金プランが登場した背景として、2020年9月に発足した菅義偉政権が携帯電話料金引き下げを政策の一つとしており、大手携帯電話事業者に値下げ圧力を加えたことが挙げられる。格安料金プランの名称は、NTTドコモが「ahamo」、KDDIは「povo」、ソフトバンクは「LINEMO」であり、各社とも20GBまでの通信が可能で税込み3,000円を切る月額料金を実現している。

これらの格安料金プランは、各大手携帯電話事業者が運営するショップでの受付はせず、申し込みはオンラインのみとすることで、コスト削減を図っている。格安料金プランスタート時の3社のプランには微妙な違いがあり、ahamoは税込み2,970円だが、5分以内の国内通話かけ放題が含まれている。それに対し、povoとLINEMOは税込み2,728円と安いが、5分以内の国内通話かけ放題はオプションで550円となっている。また、LINEMOは、LINEとの親和性が高く、LINE通話やLINEトークがパケット通信にカウントされず、LINEスタンプも使い放題となる。

格安料金プランは、従来プランとは違ってショップでのサポートが受けられず、キャリアメールや留守番電話サービスに対応していない。また、各種割引サービスの対象とならない場合が多いことにも注意が必要だ。キャリア決済については、ahamoは非対応、povoとLINEMOは対応となっている。

ソフトバンクのLINEMOは、通信量をあまり必要としないライトユーザー向けに2021年7月15日から新たに3GBで税込み990円のミニプランを追加している。また、KDDIのpovoは、2021年9月からpovo 2.0へとリニューアルし、基本料金が0円で、データ容量やオプションなど契約内容を自由に選択できる(トッピングと称している)ようになった。データ容量20GBを選択した場合の料金は税込み2,700円でほとんど価格は変わっていないが、例えば3GBなら税込み990円となり、料金をさらに節約できる。

これらの格安料金プランの現状だが、NTTドコモがいち早く2021年4月末に100万契約を突破したことを公表したほか、KDDIもpovoの契約数は開示してないものの、2021年5月14日の決算会見で「100万契約が見えてきた」と語っており、NTTドコモを追走する形となっている。ソフトバンクのLINEMOの契約数は、現時点でも開示していないが、2021年8月の決算説明会で「50万人に満たない」との発言があり、契約数という点では、NTTドコモとKDDIに遅れをとっている。

NTTドコモの親会社であるNTTが2021年11月10日に実施した決算説明会の席上で、NTTドコモ代表取締役社長の井伊氏は、ahamoの契約数は「すでに200万を超えている」と語り、順調に契約が伸びていることを明らかにした。また、2021年10月29日に実施されたKDDIの決算会見において、KDDI代表取締役社長の髙橋氏がpovoの契約数が100万を超えたことを公表した。

KDDIとソフトバンクは格安料金プランの開始前から、メインブランドよりも料金が安いサブブランドを展開していた。KDDIの「UQ Mobile」、ソフトバンクの「Y!mobile」がそれらのサブブランドである。格安料金プランとこうしたサブブランドの棲み分けをどうするのかということも、KDDIとソフトバンクにとっては頭の痛い問題であろう。ソフトバンクは、LINEMOよりもY!mobileのほうが顧客満足度が高いと表明しており、今後もY!mobileに注力する姿勢である。格安料金プランの登場により、大きな影響を受けたのが、いわゆるMVNO事業者である。今後は立ちゆかなくなるMVNO事業者も増えてくるだろう。

大手携帯電話事業者の格安料金プランをうまく活用することで、ビジネスの通信コストを大きく下げられる。今後、携帯電話を契約する必要が出てきた場合は、メインブランド、サブブランド、格安料金プラン、MVNOといった多種多様な選択肢の中から、ニーズやコストに応じて最適なものを選ぶ必要が出てくるわけだ。