BCP

バックアップ市場の新たなビジネスチャンスを探る

掲載日:2020/12/23

テレワークに潜むセキュリティの落とし穴

BCP(事業継続計画)を検討するうえで、バックアップはもっとも基本的な対策のひとつである。これまでバックアップといえばオンプレミスで、NASやテープなどの外部メディアに保存するものだった。しかし、クラウドの普及やアプライアンスの登場によって、バックアップの方法も多様化している。そこで今回は、アークサーブ合同会社の渡辺敬彦氏より、最新のバックアップ市場の動向と新たなビジネスチャンスについてお話を伺った。

クラウドシフトによるバックアップ需要の変化

○○○○氏
アークサーブ合同会社
ソリューション統括部
プリンシパルコンサルタント
渡辺敬彦氏

クラウドシフトやサーバーの仮想化によって、物理サーバーは減少する傾向にある。しかし、バックアップそのものが不要になっているわけではないと渡辺氏は説明する。

「クラウドストレージにデータを保管すれば、自然災害でのデータ損失のリスクは低下するかもしれませんが、ランサムウェアなどのサイバー攻撃や人的なミスによるデータ削除などのリスクが軽減するわけではありません。定期的なバックアップは必須です」(渡辺氏)

仮想化によって“物理サーバー”の台数が減少すると、一見バックアップソフトも減少するように思えるが、バックアップのライセンスは対象ごとに必要となるため、 “仮想サーバー”が増えれば、それにともなってライセンス数も増えることになるのだ。むしろクラウドシフトやサーバー仮想化プロジェクトは、企業システム全体を俯瞰する機会となり、バックアップ体制が整っていないシステムが浮き彫りになるため、そこがビジネスチャンスになることも多い。

多様化するクラウドへのバックアップ

近年、クラウドを活用したバックアップソリューションが多くのベンダーから提供されている。ファイルサーバーのデータをフォルダ単位でバックアップするような単純なサービスから、システムを丸ごとレプリケーションしてくれるようなサービスまでさまざまだ。

「AWSやAzureとも連携可能な機能をもつArcserve Unified Data Protection (UDP)など当社でもクラウドを活用したさまざまなバックアップサービスを提供しています。たとえば、お客様環境のバックアップデータをクラウドに2次保管しておき、災害などの緊急時にはクラウド上のデータから仮想マシンを作成・起動させて業務を継続できるサービスも提供しています」(渡辺氏)

こうしたサービスが登場する背景には、企業にバックアップの専任担当者を抱える余裕がないことが挙げられる。

クラウドへのバックアップソリューションを活用することで、情報システム部門の負荷が軽減することから、「バックアップの必要性は感じていたが、余裕がなくてできていなかった」といった企業の課題を解決することもできる。働き方改革やDXを推進するため、次々と新しい仕組みを導入している企業でも、バックアップがおざなりになっているケースは意外に多く、ビジネスチャンスにつながりやすい。

アプライアンスを活用したオンプレミスへのバックアップ

オンプレミスにバックアップサーバーを構築する従来のバックアップ方法が失われてしまうわけではないが、複雑化したシステムは、バックアップ担当者への負荷が大きいのも事実だ。

そのため、最近ではバックアップ専用のアプライアンスを提供するベンダーも増えている。ただし、物理的なハードウェアをオンプレミスに設置することになるため、複数拠点によるDR対策や、ハードウェア故障に対する対応などを考慮しなければならないのは、通常のオンプレミスのバックアップと同様だ。

「バックアップサーバーの構築や設定は、バックアップに深い知見を持つエンジニアでも煩雑で面倒だと感じる作業です。しかし、アプライアンスを活用すれば、こうした作業を行う必要がありません。また、バックアップサーバーとソフトウェアを個別に導入するよりも、導入や運用のコストが低いというのもアプライアンスのメリットです」(渡辺氏)

こうしたサービスが登場する背景には、企業にバックアップの専任担当者を抱える余裕がないことが挙げられる。

クラウドへのバックアップソリューションを活用することで、情報システム部門の負荷が軽減することから、「バックアップの必要性は感じていたが、余裕がなくてできていなかった」といった企業の課題を解決することもできる。働き方改革やDXを推進するため、次々と新しい仕組みを導入している企業でも、バックアップがおざなりになっているケースは意外に多く、ビジネスチャンスにつながりやすい。

Arcserve UDPをプレインストールしたバックアップ専用のアプライアンス。
4TB~80TBまで幅広く対応するため、中規模環境のバックアップを手軽に行うことができる

顧客のニーズに最適なバックアップソリューションを提案しよう

地震や台風といった自然災害のニュース映像を目の当たりにしてバックアップの重要性を再認識している企業は多く、特に地方でのセミナーには多くの人が足を運ぶという。また、新たなニーズとしてコロナ禍のテレワーク増加により、従業員の自宅で使用しているPCのバックアップや、VDIなど仮想環境のバックアップ需要も増加しているという。

バックアップに関する課題を解決し、最適なソリューションを提案するには、顧客のビジネスを理解し、データ損失やシステム障害によるインパクトがどの程度なのかを確認する必要がある。管理体制やポリシーに沿って、提案可能なさまざまなバックアップソリューションのメニューから、それぞれの顧客に最適なバックアップソリューションを提案することがこのビジネスの重要なポイントになりそうだ。