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ネットワーク関連需要が増加中のUPS市場を探る(シュナイダー編)

掲載日:2020/12/23

テレワークに潜むセキュリティの落とし穴

地震や台風といった自然災害が頻発する日本では、IT関連機器を中心とした精密機器に対する「UPS(無停電電源装置)」による保護が欠かせない。しかし、コロナ禍やクラウドシフトといった世の中の流れは、UPS市場にも大きな影響を与えている。今回は、UPSベンダーとして多くの実績を持つ、シュナイダーエレクトリックにUPS市場の変化や新たなビジネスチャンスなどのお話を伺った。

コロナ禍によるUPS市場の変化

尾崎 誠司氏
セキュアパワー事業部
パートナー営業本部 営業本部長
尾崎 誠司氏

これまでUPSの市場を牽引してきたのは、オンプレミスのサーバーやストレージの需要だった。しかし、コロナ禍によって新規システムの構築やリプレイスの案件が延期となり、UPS市場にも少なからず影響を与えている。これはUPS市場が縮小しているということではなく、需要に変化が起きていると、シュナイダーエレクトリックの尾崎氏は説明する。

「コロナ禍の影響で2020年3月以降、新規サーバーの設置が延期になるなど、需要が鈍化してしまいました。UPSはサーバーと合わせて導入されることが多いため、厳しい状況になっているのは確かです。その一方で伸びているのが、オフィスや店舗などフロント側にあるネットワーク機器、それらに接続しているPCや監視カメラなどのIoT機器に関連した案件です」(尾崎氏)

電源障害によってネットワークがダウンしてしまうと、接続されている機器へのアクセスが遮断されてしまうため、多くの機器に対して保全処理ができなくなってしまうことがある。近年地震や台風などの自然災害が増えている日本では、BCP対策としてネットワーク機器の保全が重要であることを痛感している企業も多い。

とはいえ、オフィスにあるデスクトップPCのローカルに重要なデータを保存している中小企業もまだまだ多いことから、安全なシャットダウンができる時間を稼ぐUPSへの潜在的需要は大きいといえる。

サーバー関連の需要がなくなるわけではない

今田 晴大氏
パートナー営業本部 第一営業部
今田 晴大氏

従来型の物理サーバーの市場は低迷しているが、オンプレミスのサーバーがまったく売れなくなるということはない。特に最近は、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)によるサーバー仮想化の案件が増加しており、オンプレミスサーバーのUPS需要がなくなることはないだろう。

コンピューティング、ストレージ、ネットワークを集約したHCIは、企業の基幹業務に欠かせない機器であり、電源障害が発生したとしても『確実に保全処理を実行しなければならない』重要な保護対象であることから、信頼性の高いUPSの導入は不可欠だ。

「サーバーの仮想化によって物理サーバーは減少傾向にありますが、電源保護の必要がなくなるわけではないので、変わらずUPSの需要はあると思っています」(今田氏)

コロナ禍で延期されていたプロジェクトの再開やサーバー仮想化のプロジェクトを抱えた企業には、UPSの重要性を訴求するよい機会となるだろう。

リチウムイオンバッテリー搭載の小型UPS需要が増加

サーバーとネットワークでは、必要とされるUPSの要件も変わってくる。

「ネットワーク機器は、サーバーと比較すると消費電力が小さいため、UPSも小型の製品需要が高まっています。弊社でも今年の2月に1Uの製品をリリースしていますが、こういった小型UPSに、ネットワーク機器やPCを接続する案件が増えており、ご好評をいただいております」と今田氏は話す。

UPSに搭載されるバッテリーについても、リチウムイオンバッテリーを搭載したモデルへの需要が高いそうだ。

「旧来の鉛のバッテリーの設計寿命は3年から4年でしたが、リチウムイオンバッテリーの寿命は7年から8年です。また、鉛と比べて重量や廃熱も小さく、サイズもコンパクトであるため、普段手の届かない場所にあるスイッチやルーターなどのネットワーク機器に、こうした寿命の長い製品をメンテナンスフリーでお使いいただくことが多くなっています。小型なので、ハブボックスなどに一緒に入れてしまう、といったこともできます」(今田氏)

また、監視カメラなどのIoT機器は、一つの店舗に複数台のカメラが設置されている。そのため、カメラに直接ではなくPoEハブに接続する形になっているので、ネットワーク機器と同じく小型で寿命の長い製品への需要が高いという。最近はコンビニの無人店舗など何十台も監視カメラを設置する場所も増えているので、このあたりの需要はますます拡大していくことが予想されている。

リチウムイオンバッテリーを採用したSmart-UPS Lithium-ion UPS 400VA 100V。軽量、コンパクト、長寿命を実現している。

選ばれるUPSとは

古畑 浩章氏
セキュアパワー事業部
パートナー営業本部
古畑 浩章氏

多くのベンダーがUPS製品をリリースしているが、シュナイダーエレクトリックの製品が選ばれる理由として、古畑氏は次のように述べている。

「これまでの実績で培ってきた弊社の取り扱い製品であるAPCのブランド力は大きいと思いますが、広い製品ラインナップでさまざまな需要に対応できることも理由として挙げられます。また、エネルギー管理や業界標準になっている安全なシャットダウンを可能にするPowerChute などソフトウェアの性能でも評価いただいています」(古畑氏)

導入するUPSは、保護対象となる機器の消費電力や、シャットダウンに必要な保護時間などを確認して選択することになる。シュナイダーエレクトリックは、自社のサイトでUPS選定ツールを提供しているため、製品の選定時にとても有用だ。

シュナイダーエレクトリックのUPS選定ツール
https://www.apc.com/shop/jp/ja/tools/ups_selector/

UPSは劣化することが前提の製品である。つまり、メンテナンスやリプレイスが前提であるため、イニシャルコストだけで導入を検討すべきではない。

「サーバアタッチのUPSには、サーバーに合わせた保証期間をつけることができるので、サービスの豊富さも評価されています」(尾崎氏)

使用済みのバッテリーは、産業廃棄物となるため処分が負担になる。そこでシュナイダーエレクトリックでは、交換するバッテリーの処分はもちろん、新規にUPSをご購入いただく際、『トレードUPS』というサービスを利用することで、購入するUPSの容量と同じものであれば、それまで使っていたUPSをメーカー問わず引き取って処分してもらえる。

こうした手厚いサポートも、シュナイダーエレクトリックのUPSが選ばれるポイントのようだ。

さまざまなニーズに対応できる幅広いラインナップがシュナイダーの強み

今後UPS需要が高まる業種・業態

市場が大きく変化する中で、今後UPS需要が高まることが予想される業種・業態にはどのようなものがあるのだろうか。

「IoTで色々なものがネットワークにつながっていくことで、業種・業態に関係なくUPSの市場は広がっていくとは思いますが、特に伸びるだろうというのは小売業ですね。監視カメラはもちろん、POSレジなど多くの機器が店舗には設置されています。近年の災害を経験されたお客様は、こうした機器へのUPSの必要性を感じていらっしゃるようです。また、コロナ禍の影響かもしれませんが、ヘルスケア関連でも需要があります。こちらは計測器や電子カルテシステムなどでの需要が拡大中です」(尾崎氏)

また、非IT機器での需要も伸びている。
「店舗以外の監視カメラとしては、ATM、マンション、オフィスビル、官公庁といったセキュリティの需要もあります。その他にもATMに付随しているIP電話、両替機、券売機なども対象になることがあります。また、最近では、保全予知などに使用される工場のIoTやエッジコンピューティングに接続するUPSなど、IT機器ではない保護対象への引き合いも増えています」(尾崎氏)

「意外な需要として、鉄道会社の地震計に48時間電源を供給できる仕組みを構成したいというものがありました。以前は24時間の構成だったのですが、台風にともなう豪雨のため、保全員が24時間で現地に到着できなかったことがあったそうです。弊社の製品は、複数台の小型UPSを連動させて長時間稼働させることが可能です。他社の製品では多くても3台程度しか連動させることはできないのですが、弊社の製品は10台くらいまで連動させて長時間の稼働をさせることができるため、さまざまな用途に応じた対応が可能です」(今田氏)

近年、地震や台風などの自然災害により、BCP対策の重要性を痛感している企業は多い。既存のサーバー、ストレージだけでなく、ネットワークや監視カメラなどのIoT機器などについても需要が高まっていく。機器のリプレイス、店舗や拠点の新設や統廃合といったタイミングがあれば、周辺機器の一つとして、UPSの導入を提案することをお勧めする。