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効果的なRPA導入のポイント

掲載日:2020/12/23

テレワークに潜むセキュリティの落とし穴

DX推進において、定型業務の効率アップに効果的なRPA(Robotic Process Automation)。費用対効果の観点から普及に課題が残っていたRPAだが、新型コロナウイルスの拡大で働き方が急速に変化する現在、関心が集まっている。本記事では、RPAが再注目される背景からコロナ禍での効果的な活用事例、導入のポイントを解説していく。

RPAとはそもそも何か

RPA(Robotic Process Automation)とはその名の通り、PC上の多様な処理をロボット(ソフトウェア)に代行させる仕組みの総称である。AIによる完全な業務の自動化まで可能だが、現時点では学習・判断能力に応じて三段階に分けて考えられることが多い。

第一段階に位置づけられるのは、定型業務の自動化である。同様の機能にExcelマクロがあるが、それとの大きな違いは、Excelに限らずさまざまなアプリケーションを跨いで処理が自動化できる点にある。第二段階は、AIとの連携による一部非定型業務の自動化の実現、第三段階になるとAIが業務プロセスを分析・改善し、経営上の意思決定までを行うこともできる。

現時点のRPAは、定型業務の自動化といった活用が大部分を占めているが、天気予報に応じてAIが自動的に商品発注まで行うソリューションなど、一部ではさらに進んだ活用をしている例もある。

次に、RPAは大きく「デスクトップ型」と「サーバー型」の二つに分類できることを理解しておきたい。デスクトップ型は1台のPC上でRPAが稼働するため導入が容易である一方、1台ごとにロボットを搭載することになるため、大規模な運用では管理面の課題も大きい。

それに対し、サーバー型の特長といえるのが大規模な運用における管理の容易さで、100台以上のロボットをダッシュボード上で一元的に管理することが可能だ。RPAの課題として、管理者の目が行き届かない“野良ロボット”を指摘する声も多いが、サーバー型はこうした問題の解決にも貢献する。

コロナ禍でRPAが再注目される理由は?

RPAの導入は、これまで金融・保険分野をはじめとする一部の企業に限られてきた。なぜなら費用対効果が普及のカギとなるRPAにおいて、大量の定型業務が生じるこれらの企業はその効果が定量的に計測できるからだ。しかし、コロナ禍を受けた働き方の変化はこうした状況を大きく変えようとしている。

新型コロナの感染拡大に伴い、企業は大きく二つの視点から対策が求められることになった。一つは従業員の安全確保、そしてもう一つが事業の確実な継続である。前者の代表が在宅勤務をはじめとするテレワーク活用だが、それだけでは業務が完結しないことも珍しくない。

顧客との取引にFAXを多用するケースがその一例で、こうした場合、担当者がその都度出社するなど、当番制で出社するなどの対応が求められることになる。電子化が望ましいのはいうまでもないが、取引先環境も含め全てを一気に変えるのは困難なのが実情だ。こうした場合の有意な改善策として注目されるのが、FAX文書のOCR処理を起点としたRPA導入である。

例えば大手食品メーカーの場合、各店舗と本社との在庫状況に関するFAXをOCR処理し、業務の大部分が在宅勤務だけで完結する環境を実現している。コロナ禍における従業員の安全確保と事業の確実な継続は、時に相反する課題にもなるが、その両立を実現するうえでRPAが大きな役割を果たすことは間違いない。

RPAソフトベンダーが企業経営者対象に行った調査では、「コスト削減に加え、今後は従業員の安全性確保の観点からもRPA導入を検討したい」という声も多く見受けられたといい、Withコロナ社会のITビジネスにおいて、RPAは注目すべきキーワードの一つになりそうだ。

RPA導入はまず業務の洗い出しから

次にRPAの導入ステップについて考えていこう。まず行うべきことは、RPAが代行する業務の取捨選択だ。

理論的にはPCで行う業務の全てが代行可能だが、ロボット開発のコストや手間を考慮すると半年に1回、30分程度の時間をかけて行う業務を代行するメリットは薄いため、高頻度で繰り返される社内の定型業務の洗い出しが重要になる。その際には併せて業務フロー全体を見直し、無駄のないプロセスを再検討することも大切だ。そのうえで、適切なRPAツールを選定し、開発・動作検証を経て、実運用を開始することが基本的な流れになる。

開発手法はツールにより異なるが、大きく「画面操作記憶型」と「開発(コーディング)型」に分けられる。前者はノンプロミング開発とも呼ばれ、画面操作を記憶させることでRPA開発が可能だ。後者の場合、デフォルト機能の組み合わせによる開発も可能だが、業務に対応した仕組みを構築するには最低限のプログラミング知識が必要になることが一般的となる。

コスト削減に留まらないRPAの可能性

菅内閣が掲げる行政デジタル化の下、印鑑レスによる業務効率化の取り組みが急速に進もうとしており、またコロナ禍を受け、民間でも電子サインへの関心が急速に高まっている。こうした動きもまたRPA導入を後押しする要素の一つだ。押印という物理的プロセスが不要になることで、代替可能な業務が確実に広がると考えられることがその理由である。また、BCPや従業員の安全確保の観点から、OCRとRPAの組み合わせによるソリューション導入を検討する企業は今後も増えていくはずだ。

RPA提案において注目すべきキーワードは、業務効率化やBCPだけに留まらない。その一つが従業員のモチベーションや生産性に与える効果だ。日々の業務の中には転記や簡単な仕訳など、ミスなく遂行することが求められる単純作業が少なからず存在するが、RPAの強みは、「単純」「大量」「簡単な繰り返し」といった作業の代替にある。こうした気の重い作業からの解放により、さらに生産性の高い業務を実現することができる。

新型コロナ対策、印鑑レス・ペーパーレスへの移行、そして働き方改革など、変革が求められる日本企業にとって、RPAが果たす役割は今後ますます大きくなりそうだ。