ネットワーク

5Gが変えるネットワーク

掲載日:2021/01/19

5Gが変えるネットワーク

2020年に日本で商用サービスが始まった5G(第5世代移動通信システム)。5G対応のスマートフォンも発売されるなど、多くの注目を集めている。本格的な普及はこれからだが、実際に普及すれば同時にあらゆるモノがネットワークにつながるIoTが一般化し、さまざまな産業分野での利活用が期待される。さらに、5Gが普及することでどのような変化が生まれるのかを把握すれば、次のビジネスチャンスを掴むことにもつながるだろう。ここでは産業分野を中心に見てみよう。

5G技術の特長

5Gという言葉はよく耳にするようになったが、実際4Gとの違いを理解している人は少ないだろう。

そもそも第1世代のネットワークが登場したのは1980年代。当時はまだアナログ回線のみでインターネットに接続することができなかった。

その後、1990年代にデジタル回線の第2世代が登場。これにより2.4kbps~28.8kbpsのデータ通信が可能となった。そして2000年代に入ると第3世代の3Gが登場する。こちらはさらにスピードが高速化し、384kbps~14Mbpsの通信が可能となった。この3Gからメールやブラウジングも行えるようになった。

そして、スマートフォンの登場に合わせるように2010年代に登場したのが、第4世代の通信システムである4Gだった。こちらは50Mbps~1Gbpsの高速通信を実現。インターネットだけでなく、ゲームや動画などのリッチコンテンツも楽しめるようになった。

そして、2020年に商用サービスが開始したのが今回取り上げる5Gだ。この5Gには4Gとは異なる3つの特長がある。

・高速・大容量

現在の4Gと比較して速度は約100倍、通信量は約1,000倍となる。

・多数同時接続

同時に接続できるデバイスが、4Gの約100倍。

・超低遅延

データ通信がほぼリアルタイムになり、現在のような遅延が起こらない。

これらの特長によって我々の日常には大きな変化が起きることが予想され、産業分野では「ローカル5G」が普及していくのではないかともいわれている。これは、通信事業者(キャリア)以外の組織であっても、国が指定した無線局免許を取得すれば5Gネットワークを構築できるものだ。

例えば工場、建設現場、農場、イベント会場などで独自のローカル5Gを設置すれば、外部のトラフィック量に影響を受けることなく、安定してセキュアな通信を行うこともできるようになる。

4Gまでのモバイルデータ通信は利用範囲が限られており、多くの人は自宅や会社、公共施設などではWi-Fiを使っていることが多かった。モバイルデータ通信ではデータ使用量に応じて料金が設定されているため、コストを抑えるためにはデータ通信の量を絞る必要があったからだ。

しかし、5Gでは、高速・大容量、多数同時接続が実現するため、Wi-Fiに代わるネットワークとして使用される可能性は大きい。従来の通信利用にはデータ量に応じた料金プランがあり、所定のデータ量を超えると速度制限がかかるようになっているが、こういった制限の撤廃もあるかもしれないといわれている。これにより個人のデータ通信にも、今後変化がありそうだ。

オフィスワークや工場、変わるネットワークの未来像

5Gのインフラを整えるのには時間を要し、2025年時点での日本での普及率は、携帯電話総販売台数での対応機種が56%程度、契約回数ベースでは46%と予測されている。現時点では、5Gの産業界での本格的な活用は2025年以降とみられる。

5G技術により実現・進化するといわれているものには、以下のようなものがある。

・IoTを用いたスマート家電
・一般公道での遠隔監視型自動運転
・音楽や舞台のオンラインイベント、遠隔地でのオンラインスポーツ観戦
・MaaS(mobility as a service):必要に応じて、さまざまな移動手段(電車・バス・カーシェアリングなど)を一括して検索・予約・決済できるシステム。
・ARを用いた遠隔授業

さらに期待されるのが、産業界での活用だ。各業界ではどのような動きがあるのだろうか。

・製造業

製造業では、熟練工不足などの課題により、工場での省人化や自動化のニーズが高まり、各メーカーは「スマート工場」を推進している。IoTを利用した製造ラインの稼働状況や予知保全はすでに行われているが、5Gを用いることでリアルタイムでの監視や制御が期待できる。また、高速・大容量通信である5Gでは、4K・8Kの高精細映像の伝送により、精緻な監視が可能になる。

ほかに、VRやAR技術の活用により、遠隔での作業支援も遅滞なくできるようになる。例えば、作業者がスマートグラスを装着していれば、その作業状況は遠隔地でもPCやスマートフォンで監視できるのだ。

さらには、作業者の作業動線や動きを撮影した映像データをAIで解析し、ミスが起こりやすいポイントを即時にフィードバックするといったことも試みられている。

・インフラ・建設業

現場やドローン・点検車両に監視用カメラを設置し、5G回線で伝送することでリアルタイムに管理が可能になる。
また、人の立ち入りが危険な現場では、ロボットや重機を遠隔で操作しての施工も進歩するだろう。

・農業

高齢化で離農者が増えている農業でも、5Gを用いたスマート農業に期待が寄せられている。
農地での作物の状況や、家畜の状態をモニタリングするほか、日照量・水分量を自動管理するなどのIoT技術やAI解析は、5Gによって精度が上がっていくだろう。

・医療

DtoD(医師対医師)の遠隔診療支援では、高速・大容量の通信インフラは欠かせない。患者のMRIやCTの高精細画像をできるだけ早く送るのに必要だからだ。緊急時には、遠隔地にいる専門医が、現場で行う執刀医の手術の様子をライブで共有し、助言をすることも一部の医療機関で行われているが、5Gの普及によりこういった遠隔医療も進んでいきそうだ。これは災害時にも大きな期待ができる。

・教育

通信インフラの整備が、コロナ禍のような遠隔授業の助けになることはいうまでもない。AR・VRを用いて実際に足を運ぶことが難しい海外や歴史上の出来事にもバーチャルに触れるような新時代の教育方法も可能になる。

教師不足で十分な教育が難しかった離島や僻地での遠隔授業、医療・航空などリスクが高い分野のVR授業など、新たな可能性が広がりそうだ。

・小売り・流通

ECサイトの普及は、2015年頃からの4Gによるものも大きかったといわれている。これが5Gになれば、ネット上の商品情報は動画を用いるなど充実したものになるうえ、ARやVRでの試着や体験が可能になる。

5G普及へのカギ

5Gの基地局の開設は順次勧められており、2025年頃には日本全国で5Gが使えるようになりそうだ。しかし、スマートフォンなどの個人ユースの通信では、多くの人が今のままでも不満を抱えてはいない。5Gに代わることで料金が上がることになれば、移行をためらうケースも少なくないだろう。

そのため、5Gを牽引するのはBtoBや、BtoBtoXであろうといわれる。BtoBtoXの真ん中のB(センターB)は、ビジネスパートナーや5Gを活用したサービスの提供者。最後のXはエンドユーザー(CorB)だ。つまり、重要なのは、真ん中のBつまりビジネスパートナーが、5Gを用いて何ができるのか、どんな課題を解決していけるのかを積極的に提案していくことだ。

日々更新されていく5Gのニュースに網を張って、エンドユーザー様に最適なソリューションを勧めていきたい。