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ネットワーク関連需要が増加中のUPS市場を探る(オムロン編)

掲載日:2021/01/19

ネットワーク関連需要が増加中のUPS市場を探る(オムロン編)

停電などの電源障害発生時、データの損失や機器の故障を防ぐ「UPS(無停電電源装置)」の効果的な配置は、BCPを検討するうえで非常に重要なポイントだ。しかし、どの機器をUPSに接続すべきなのかを理解していない企業も多く、適切な提案をすることで大きな需要が生まれる可能性がある。そこで今回はオムロン ソーシアルソリューションズの西岡疾風氏から、UPS市場の最新の動向と新たな商機についてお話を伺った。

UPS市場の現状

西岡 疾風氏
事業開発統轄本部 IoTソリューション事業本部
事業統括部パートナー営業グループ
西岡 疾風氏

2011年の東日本大震災後、BCPの重要性を再認識した企業の多くは、相次いでオンプレミスのサーバーやストレージを保護するためにUPSを導入した。しかし、UPSはサーバーやストレージだけを保護する機器ではない。PCやサーバーにUPSにつないでいるから、と安心していても、ネットワーク機器につないでいなければNASなどネットワークに接続されている他の機器にアクセスできなくなってしまう。

そんなUPSの最近の傾向について西岡氏は、「当社のUPSに接続される機器は、ネットワーク、PC、NASなどのストレージが圧倒的に多いです。また、HCIなどを使った仮想化の環境を提供する物理サーバーを接続するお客様も増えています」と述べる。

UPSを導入している業種・業態、企業規模はさまざまだという。

「業種はIT業界が中心ですが、最近ではGIGAスクールなど、教育現場での需要があります。その他にも、スーパーやコンビニなどのPOSレジ、ATMなどにご利用いただくこともあります」(西岡氏)

また、新型コロナウイルス感染症によってオンプレミスのサーバーの設置計画が延期になるなど想定外のことは起きたが、UPS市場に与えた影響は、思ったほど大きくはないという。

「新規サーバーの導入が延期や中止になったことで、予定していたUPSの導入がなくなることはありましたが、UPSは消耗品であり、定期的に入れ替えなければならない製品のため、リプレイスにおいては大きな影響は受けませんでした。」(西岡氏)

つまり、UPSは例え市場が急激に変化しても安定して売上を伸ばせる市場であるといえるだろう。

HCI構成での停止/起動設定がシンプルなことから好評を得ている「BU3002R/SC21/VirtuAttendant(PA10V)」

どんなUPSを導入すればよいのか

どの機器をUPSに接続するのかはビジネスに与える影響度に応じて接続機器を選択することになる。UPSへの接続を最初に検討するのはデータを保存するストレージ、HDDやSSDを搭載したデスクトップPCだが、NASなどネットワーク越しにデータの読み書きを実行しているのであればルーター、スイッチといったネットワーク機器もUPSへの接続対象となる。

意外に忘れがちなのがディスプレイだ。デスクトップPCやサーバーはUPSに接続したものの、ディスプレイをつないでいなかったため、肝心な時に情報を表示できなかったというケースも多い。

UPSを接続する対象が決まれば、導入すべきUPSの種類や台数を決めることができる。UPS側のコンセントの数は決まっているので、接続する機器が多ければその分だけ台数は増えることになる。

「当社の製品は最大でも出力容量5KVA(ボルトアンペア:皮相電力)と、ラインアップは小型UPSがメインとなっています。導入されるUPSや接続機器にもよりますが、1台のUPSにおよそ2~3台くらいの機器を接続できます」(西岡氏)

また、機器の消費電力を確認し、シャットダウンに必要な保護時間が確保できる製品を選択することになる。オムロン ソーシアルソリューションズでは、自社サイトでUPS選定ツールを提供しているので、そちらを利用すると検討しやすい。

オムロン
https://socialsolution.omron.com/jp/ja/products_service/ups/choose/senteitool.html

UPSが搭載しているバッテリーも注目して欲しいと西岡氏は述べる。

「これから導入するのであれば、リチウムイオンバッテリー搭載の製品を選択することをお勧めします。鉛を使った既存のバッテリーは、3年~5年で劣化してしまいますが、リチウムイオンバッテリー搭載UPSであれば、約10年の期待寿命があります。バッテリー交換などメンテナンス頻度も抑えることができます」(西岡氏)

UPSはメンテナンスやリプレイスが必須な製品であるため、提供されるサポートも重要となる。

「当社のUPS本体には3年保証が付いていますし、ご愛用者登録をしていただければ交換バッテリーを3年間無償で提供いたします。さらに、機器をシャットダウンするためのソフトウェアは当社のサイトから無償でダウンロードできるほか、USBなどの通信ケーブルも付属品として提供させていただいています。また、使用済みバッテリーについても、送料だけご負担いただければ、当社にて無料引き取りを行っています」(西岡氏)

バッテリーの期待寿命約10年のUPS BLシリーズは、
ネットワークへの接続に最適な製品

IoTの普及はUPS提案のチャンス

UPSは、IoTの普及に伴い、無人のエリアにネットワーク機器と一緒に導入されるというケースも考えられるが、このエリアについては、まだまだ開拓の余地があると西岡氏は述べる。

「IoTでの電源保護の需要はあるので、よりお客様の要件を満たす製品ラインナップの充実を図っていく予定です。UPSはオフィス以外にも、病院、官公庁、工場、店舗などIT 機器が稼働しているあらゆる場所で利用されています。UPSは単体で売るよりも新たな機器の導入に合わせて、セットで導入されるケースがほとんどです。そのため、『急に電源が落ちてしまったら困る機器』と一緒にご提案していただければと思います」(西岡氏)

小型でメンテナンスもしやすいUPS BWシリーズは、
ATMやポスレジでの導入が増えているという

UPSの潜在的ニーズは計り知れない

前回のシュナイダーエレクトリックと、今回のオムロンへのインタビューにおいて、両社はともにUPS市場に大きな変化が起きていることを示唆している。東日本大震災を機にUPS市場が一気に拡大するなか、サーバーの仮想化、クラウドシフト、コロナ禍の影響でサーバー需要は減少している。

しかしその一方、近年頻発している自然災害の経験から、多くの企業がネットワーク機器など『本来UPSで守るべき対象が守られていなかった』ということを痛感した。さらに、IoTの普及など、保護すべき対象は増加していくことは明らかであり、UPSの潜在的ニーズは計り知れない。UPS市場は、今後も開拓する余地がある市場といえるだろう。