temiはアメリカのtemi 社が開発したパーソナルロボットだ。16個のセンサーによりスムーズな自律走行を実現しており、地図生成や障害物回避、ユーザー追従機能も備わっている。また、モバイル端末にインストールした専用アプリから、遠隔操作やtemiのディスプレイを通してビデオ通話も可能だ。さらに、音声操作に対応したAIアシスタント機能により、声だけでも操作できる。

「3年程前、弊社のスタッフが偶然temiを見つけて私に紹介したことが販売に至ったきっかけです」と富田氏は語る。

「初めて目にした時、弊社が理念とする『人の能力を引き出し、成長させることで人々を幸せにする』ことをtemiなら実現できると直感し、すぐにtemi社とコンタクトを取って販売契約を交わしました。製品化にあたって、日本語AIアシスタントの調整やアプリケーション開発などを行い、2019年11月から販売をスタートしたわけです」

temiの開発には「おばあちゃんでも使えるロボット」というテーマが設けられていたという。富田氏は、temiの分かりやすいUIや取捨選択された機能を例に挙げ、見事にテーマを実現したロボットだと太鼓判を押している。

発売当初から、大手企業をはじめ多数の関心を集めたtemiだが、翌2020年に感染が拡大した新型コロナウイルスによって、その有用性はさらに注目を集めることになった。

「temiはコロナ禍において活用できる例がたくさんあります。例えば、イギリスでは医療機関にtemiが導入され、医師が患者と遠隔でコミュニケーションを取ったり、院内の見回りなどに活用されています」と富田氏は語る。

コロナ禍における人対人の接触は最重要課題。自走可能かつ、ディスプレイとマイク・カメラを搭載しているtemiは、病院の中を自由に移動して患者とコミュニケーションを取れるうってつけのツールといえるだろう。

また、医療機関以外でも人対人の接触は見直され始めている。飲食店や商業施設でのtemi活用についても富田氏はこう語る。

「新型コロナの影響でテレワークが浸透しましたが、接客業をはじめとするサービス業界では実施が難しいのが現状です。こういった業種にこそtemiが活用できます。スタッフは自宅からtemiを操作し、あたかも自分が店舗にいるように接客ができるのです」（富田氏）

事実、コロナ禍でtemiの売り上げは増大しているという。また、富田氏はコロナをきっかけに、一般家庭や一般企業でもtemiを活用してほしいと語る。

「temiは、インターネットさえあれば世界中にいる人と、まるで自分がテレポーテーションしたかのようにつながれます。これはテレビ会議との明確な違いです。さらに、これから先の高齢化社会についても有用なはずです。AIアシスタント機能で声だけで操作できるので手を動かす必要がなく、高齢者でも簡単に使いこなせます」（富田氏）

ハピロボがtemiと共に目指すビジョンについて、富田氏はこう語る。

「私たちの目指すビジョンは『エゴロジー（自分の幸せ）』『エコノミー（地球社会存続システム）』『エコロジー（環境保全）』の3つを同時に実現することです。そのためには人をダメにする道具ではなく、人を伸ばす道具が必要です。temiは利用者が地球のどこから求められても、瞬時にその場所へ行くことを可能にします。それはロボットやAIではなく、人そのものの価値を最大化するのです」（富田氏）

富田氏がアピールするのは、temiが引き出す新たな人間関係の魅力だ。「temiがあれば、海外にいながら自宅の家族の輪の中に入りコミュニケーションを取ることも可能です。これは、本人が自宅にいることよりも幸せかもしれない。私が求めていた理想の関係です」と語る。temiが単なる連絡手段や利用者のアバターではなく、コミュニケーションを拡張し新たな幸せを生み出す道具になり得ると伝わってきた。

temiに込められたテクノロジーは、人々のポテンシャルを大きく高める能力がある。コロナ禍を経た世界で、temiのある暮らしがどのような魅力に満ちあふれたものになるのかが楽しみだ。