組織改革

従業員の能力を管理
「タレントマネジメントシステム」

掲載日:2021/02/16

従業員の能力を管理「タレントマネジメントシステム」

欧米で始まったHRテクノロジーが日本でも広がりつつある。HRとは「Human Resources」の略で主に人事のことを指す。この人事の業務と最新のITを組み合わせたものがHRテクノロジーだ。これを活用することで、人事業務を効率化し、従業員の能力・スキルを管理して適材適所に人員を配置できるようになる。

HRテック(HRテクノロジー)の必要性

経済産業省は、HRテクノロジー政策について次のように述べている。

-“戦略人事”を実践していくにあたっても、人事業務を効率化・高度化し、また、人事施策に関するPDCAを回せる体制を構築することが必要です。(経済産業省HPより)

このように経済産業省が唱える背景にあるのは、これから日本にとって人材の面で課題となってくる2つのポイントに由来する。それは人材の有効活用と働き方の多様化だ。

人生100年時代の到来で、従来のような15~65歳未満を生産年齢とする考え方は変わりつつあり、65歳以上の活躍が当たり前の世の中が訪れるといわれている。また、テレワークや育児・介護、副業といった個人の事情に合わせた多様な働き方に企業は対応していかなくてはならない。

こうした多様化する働き方に対応するためには、人事部署には今まで以上の負荷がかかる。そこで期待を寄せるのがHRテクノロジーなのだ。

タレントマネジメントシステムとは

ニューノーマル時代の人事において、HRテクノロジーの中でも特筆すべきが「タレントマネジメントシステム」である。

人材管理の中で特に重要となるのが、従業員の能力・スキルを管理し、適材適所に人員を配置することだ。

「タレントマネジメントシステム」では、一人一人のスキル、経験、個人情報などの人事に必要な情報を一元管理し、可視化させる。

対面での研修や面談が難しく、上長も部下の状況を従来のように観察できない状況が生まれている中で、それを補うものとして、このシステムが期待されているのだ。

従来の人事では、人事担当者の経験やマネージャーの意見を踏まえて従業員の能力を見極めていたが、多種多様な業務・働き方に対応するためには、これまでの方法では難しくなってきている側面がある。

タレントマネジメントシステムでは、従業員の情報を分析し、新たな人事配置のためのシミュレーションまで行えるようになる。

これにより、採用時の評価、人事異動、幹部候補の選出までをシステム上で一括管理でき、また離職を防ぐこともできるというのだ。

離職防止については、製品ごとに異なるが、例えば過去の退職者の勤怠行動から微妙な変化を記録し、モデル化することで、休みが多くなる、残業が増える、といった傾向を拾い出すような機能や、面談やアンケートの中に出てくるワードから、離職の傾向が出ている場合にアラートを出す機能などが実装されている。

勤怠履歴からは、メンタルの不調が見えてくることもあるという。特にテレワークが増えている状況では、従業員の日々の様子がシステムを通して可視化されるのは企業にとっても、従業員にとってもメリットが大きいといえるだろう。

ただし、メンタルの不調までをシステム上に記録していくことは、個人情報保護法違反ともなりかねないため、その取扱いにだけは注意が必要だ。

データは人事部のみで共有するのではなく、必要に応じて各部署の上長もアクセスできるようにすることで、人事と各部署との連携もしやすくなる。

今まで、人事管理にはExcelなどを使用していた企業も多かったようだが、タレントマネジメントシステムのUIは分かりやすいものが多く、ICTの特別な知識がなくとも使えるようになっている。

データの集約やグラフ化なども簡単で、実際に人事の手作業に割かれていた時間が大幅に軽減できたという企業もある。

マネジメントシステムを選ぶ際のポイント

現在、日本国内だけでもタレントマネジメントシステムに関する製品は50以上販売されている。

選ぶ際は、重点を置きたい機能がどこにあるのか、UIが分かりやすいかどうか、拡張性はどうか、そして価格が選択のポイントとなってくるだろう。

特に人事業務の効率化は担当者の負荷の軽減に繋がるだけに、提案としても受け入れやすいはずだ。

例えば、新人研修や採用業務は人事部にとって重要な業務となるが、タレントマネジメントシステムの中には、研修用の資料作成をシステムメーカーのほうで行ってくれるサービスや、簡単に採用募集の文面が作成できる機能がシステムに搭載されているなど、ユニークなオプションサービスも多い。

Excelでデータを集計していたものも、アンケート調査から分析していたものも全てシステムに入力するだけになるため、業務量が減ることによって生まれた時間を人員配置や各従業員のフォローに使うことができれば、人事をより戦略的に展開していくことも可能だ。

コロナ禍の影響により人事部の業務はさらに多様化していくと想像できる。最近はAIやRPAを取り入れたシステムも増えており、今後さらに便利なサービスも増えていくだろう。今後注目となるタレントマネジメントの潮流を見極めて、適切なシステムを提案していただきたい。