中小企業

バックアップだけではないNASの活用

掲載日:2021/02/22

バックアップだけではないNASの活用

近年、SOHOや中小企業でNASの導入が進んでいる。その理由は、ファイルサーバーと比べて導入コストが低く抑えられ、管理運用も容易だからだ。ファイル共有やバックアップを目的として普及が進むNASだが、用途はそれだけにとどまらず、セキュリティ強化やBCP対策から、テレワーク支援など多様なアドオンアプリを提供する製品が登場している。Synology NASを例に多様な活用の可能性を考えていきたい。

バックアップ以外でも注目されるSynology NAS

NAS(Network Attached Storage)は、ネットワーク上に接続できるハードディスクだ。ネットワークを介して、1台のNASに複数のユーザーが同時に接続できることから、主にSOHOや中小企業においてファイル共有やデータバックアップの基盤として普及が進んでいる。

だが、NASの役割はそれだけでない。現在のNASには、ファイル共有やデータバックアップにとどまらない多様な機能が搭載されていることが珍しくないからだ。その観点で注目したいのがSynology NASである。

現在はNAS専業メーカーとして世界的に知られるSynologyだが、元々はソフトメーカーとして創業したという歴史を持つ。そうした経緯もあり、Synology NASには多様な機能がアドオンパッケージとして提供されている。

提供されるアドオンアプリの種類は膨大で、カテゴリーを見てもバックアップ関連はもちろん、マルチメディア、セキュリティ、分析、Webサービス、ビジネス関連と多岐にわたる。

中でもVPN環境の設定や高度なデータ保護、セキュリティ対策など、ビジネスシーンですぐに使える機能も数多い。使い方次第では類似ソリューションの導入コストが不要になったり、大幅な圧縮が可能になることがあるため、Synology NASのアドオンに注目するIT管理者も多い。

ビジネスで使えるアプリの具体例

Synology NASのアドオンアプリにはどのようなものがあるのだろうか。まず注目したいのが、ビジネス向けの上位機種が対応するデータ保全やBCP対策に関連する機能だ。

・Snapshot Replication

近年、データを人質に金銭を要求するランサムウェア攻撃の脅威が取りざたされており、その対策として差分を定期的に保存することでシステム負荷を最小限に留めてデータを保全するスナップショットが注目されている。Synology NASであればそれを無償で実現することが可能だ。

・Active Backup for Microsoft 365 ほか

Microsoft 365やG Suiteといったクラウドストレージを使ったデータバックアップも一元的に管理できる。データの確実な保全はBCPの観点でも重要だが、中小企業の場合そこまで手が回らないケースもある。NASとクラウドサービスの組み合わせは、その有意な解決策になる。

・LDAP Server

LDAP Serverを利用すれば、Active Directoryに頼ることなく、データへのアクセスのコントロールや認証、アカウント管理を行える。

・ストレージアナライザー

Synology NASの全体的な使用状況を可視化するストレージアナライザーの機能。重複するデータや何年もアクセスされていない古いファイルをピックアップする。

・Synology Drive Server

ファイルの管理、共有、同期の総合的ソリューションであるSynology Drive Serverは、近年大きな課題になりつつある会議のペーパーレス化にも貢献。会議にあたり、参加者が手元の多様なデバイスでSynology Drive Serverにアクセスし、ファイルをダウンロードすることがその基本的な考え方だ。

コロナ禍で使えるアドオンアプリの例

Synology NASのアドオンアプリが提供する機能は、データ保全やその管理に関するものだけではない。その一つがネットワーク内部の会話をリアルタイムで行う安全な場所を作成するSynology Chat Serverだ。

コロナ禍を受け、リモート会議の普及は急速に進んだが、一方で会議内容の漏えいを懸念する声もある。こうした状況を受け、Synology Chat ServerとオープンソースのWeb会議アプリを組み合わせWeb会議の仕組みを構築する事例も登場している。

これは医療機関や介護施設のように遠隔地からの会議参加を想定する必要がなく、なおかつ、部署の垣根を超えた全体会議については感染対策の観点でリモート化したいというニーズに合致するソリューションといえる。

Webサイト構築が容易に行えるWeb Stationも注目したい機能の一つだ。その用途は多様だが、例えばグループウェアの掲示板、社内メッセージなどの機能を容易に立ち上げることもできる。

Synology NAS上でドキュメントやスプレットシート、スライドの作成が行えるSynology Officeにも注目したい。コロナ禍という新たな変数が加わったことで、ビジネスの将来像は不透明感を増している。既存のOfficeライセンスでカバーしきれないユーザーへの対応という観点で注目したい機能であることは間違いない。

多様に活用できるSynology NAS に今後も注目

Synology NASには注目ポイントがもう一つある。それはアドオンも含め、ブラウザベースのオペレーティングが実現する点だ。コンシューマー市場向けに洗練された操作性はビジネス市場向け製品やアドオンアプリにも踏襲され、専門的な知識を持たない管理者でも容易に運用が可能だ。この点を高く評価するユーザーは多い。

NASは、ファイル共有やデータ保全を主な目的として、主にSOHOや中小企業で普及が進んでいる。導入コストが低く抑えられ、運用管理も容易なNASは、上記の用途だけをとっても十分な費用対効果が期待できるが、ファイル共有だけでない多様な機能を備え始めている。

近年のNASは、ビジネスにも活用できる多様なアドオンが提供されるのが大きな特長だ。NASを導入する際は、アドオンで使えるアプリを活用することで、コスト削減にも貢献できる。ファイルサーバーの代替のみならず、アイディア次第でセキュリティ強化やBCP、テレワーク支援など、多様な用途に活用できるNASに今後も注目したい。