流通・小売業

小売業向けPOSレジの
進化とトレンド

掲載日:2021/03/23

小売業向けPOSレジの進化とトレンド

POSレジはスーパーマーケットなどの量販店やチェーン店はもちろん、個人経営の小規模店舗の経営でも不可欠な存在になっている。そのトレンドとして挙げられるのが、セルフ・セミセルフレジの急速な普及だ。この流れは、コロナ禍という社会的課題を受け、小売・サービス分野の多様な業種・業態に広がることが予想される。

レジスタとPOSの歴史

POSレジの「POS」とは、販売時点管理(Point of Sale)のことで、小売・サービス業において不可欠な存在になっている。POSについて触れる前に、レジスタの歴史を簡単に振り返りたい。

今日のレジスタの原型がアメリカで考案されたのは1978年のこと。カフェにおける従業員の不正防止を目的とした装置は、取引の都度、売上合計が時計型の文字盤に表示される仕組みを備えていた。

その後、レジスタは売上データ(ジャーナル)記録機能や、現金を収納するキャッシュドロア(釣銭機)などの機能が付加され、広く世界に広がることになった。日本初上陸は1897年のこと。1914年には国産レジスタの本格的な製造販売が開始されている。

戦後、小売業の入出金管理の効率化・正確化に欠かせない存在になったレジスタは、新たな一歩を踏み出すことになる。1970年代のアメリカで新たに考案されたPOSレジがそれだ。

POSレジが登場した背景には、当時台頭していたスーパーマーケットが直面する経営課題があった。

多様な商品を多店舗で販売するスーパーマーケット経営には「いつどこで」「どの商品が」「いくらで」「いくつ売れた」かをいち早く知ることが不可欠だ。

この課題を解決したのが、レジスタとの連携により物品販売の売上実績を売れたタイミングで集計するPOSの仕組みだった。

なおPOSは、売上を単品単位で記録できることが前提条件になる。そのためバーコードによる商品管理の一般化は、POSレジの実現や普及に大きな役割を果たしている。

POSレジの機能や役割

レジスタの基本機能に加え、POSレジは以下のような機能を備えている。

・商品情報の登録
JANコード(バーコード)に従い、商品原価や仕入値などの商品情報を登録し、個別に管理できる。個別商品に情報を明示することなく、会計処理を行うことが可能になる。

・売上状況の可視化
「いつ」「どこで」「どんな商品が」売れたかをリアルタイムで把握できる。さらに「客層」「決済手段」「天候」など、多様な情報を管理することも可能。それらのデータを活用し、店舗の在庫管理を自動化できることも重要なポイントだ。

・売上情報の集計・分析
どの商品がいつ売れているか、どんな商品と併せて購入されているかなど、多様なデータ分析が行えることも重要なポイントだ。季節や出店エリアに応じた商品ラインアップの最適化を図ることが可能になる。またハードとしてのPOSレジは、POSターミナルとも呼ばれるPOSレジ本体とキャッシュドロア(釣銭機)、レシートプリンタ、バーコードリーダなどの周辺機器から構成される。POSレジ本体は、大きく3タイプに分類できる。

まず1つ目が、ターミナル型POSレジだ。専用筐体を前提とした現在最も普及するPOSレジで、専用機として進化が進み、自動釣銭機など高度な機能がレジ本体に付随する一方、導入時の初期費用や保守費用も高額になりがちだ。

2つ目がPC型POSレジで、一般的なPCにPOSソフトをインストールしPOSレジとして利用する。POSシステムはクラウドで提供され、使用料が月額で生じることが一般的だ。またキャッシュドロアやレシートプリンタは別途用意する必要がある。

そして最後に3つ目としてタブレット型POSレジがある。

iPadなどのタブレット端末に専用アプリをインストールし、POSレジとして利用する。Wi-Fi環境さえあれば即座に構築が可能で、軽量で持ち運びが可能なほか、省スペースという特長から小規模な飲食店やアパレルをはじめとする小売店で普及が進んでいる。外部のキャッシュドロア、レシートプリンタ等との連携のほか、本体カメラでバーコードを読み取ることも可能だ。

POSレジの新たな一歩「セミセルフレジ」

POSレジは登場後、自動釣銭機と連携してさらに便利となったが、同時に課題も生まれた。レジスタッフがキャッシュドロアを開き、お釣りを取り出す作業は処理に時間が掛かるうえ、釣銭の渡し間違いによる違算金が発生するのだ。この課題を解決したのが1990年代に登場した自動釣銭機だった。

また強化された機能として、レシートプリンタによるクーポン発行にも注目したい。POSシステムとの連携による特定商品購入者へのクーポン発行はリピート顧客の創出に一定の役割を果たしている。

その後、POSレジの新たな進化は、またしてもアメリカから起こった。2000年代に登場したセルフレジがそれだ。だが当初、セルフレジは消費者自身が商品登録を行う物珍しさやエンターテイメント性が導入の糸口として想定されていたこともあり、普及は進まなかった。一定スペースが必要になることも導入課題の一つだ。

こうした状況を大きく変えたのは2010年代半ばに登場した商品登録と会計を分離したセミセルフレジだった。

そのポイントは大きく2点。一つはレジスタッフが商品登録に専念することで処理速度の大幅向上が見込める点。もう一つは既存レイアウトを大きく変更することなく導入できる点である。

折からの人手不足もあり、セミセルフレジはスーパーマーケットを中心に広く普及し、今日に至っている。またセルフレジの場合、バーコードを読み取るプロセスを不要にするRFIDへの対応も見逃せないポイントだ。

コロナ禍という社会課題で進化するPOSレジ

レジスタは、不正の防止、業務の効率化、レジ待ち時間の削減、より効果的な販促支援など、小売業・サービス業の現場が直面する多様な課題に対応することで進化を続けてきた。

そして人手不足という新たな課題に対応する形で急速に普及したセルフ・セミセルフレジは、コロナ禍という新たな社会課題を受け、より多様な業種・業態に広がるとみられている。

その一例がベーカリーショップである。スタッフが顧客に対面して商品登録を行い、会計は顧客が行う対面式セミセルフレジは、省力化だけでなく衛生的な観点でも注目されている。

同様に、会計時の物理的接触を最小限に留める非接触ICカード決済やスマートフォンによるタッチ決済、QRコード決済との連携も今後促進すると予想されている。

小規模の小売業では、まだPOSレジの導入をしていない場合も見受けられる。タブレット型やPC型であれば、比較的簡単に導入提案が可能であるため、新しいビジネスとして検討してはいかがだろうか。