CAD
CADワークステーションの選び方
(前編)
掲載日:2021/03/23
CADは、製造や建築・土木の設計業務にとって、なくてはならないツールとして普及が進んでいる。その役割は単なる設計図面のデジタル化だけでなく、3D CADのモデリングを活用し、完成品のデザインイメージの確認や製造工程における不具合のチェック、耐久性のシミュレーションまで多岐にわたっている。今回は、テレワークでも使いやすい、CADに適したモバイルハードウェアの選び方について考えてみたい。
CADの登場と製図設計のハードウェア
CAD(Computer-Aided Design)とは、コンピュータを用いて設計業務を行うことやコンピュータによる設計支援ツールのこと。その始まりは、1960年代のアメリカで航空機の設計を目的としたとされている。航空機の設計には膨大な量の図面が必要であり、それらを効率よく処理するために汎用コンピュータが使用されていたのだ。
その後、技術の進歩とともにCADの世界でダウンサイジングが進むことになる。技術計算やデザイン設計などにワークステーション(WS)が利用されるようになると、CAD/CAMやCGなどグラフィック関連に特化したものがエンジニアリングWSと呼ばれるようになった。
演算処理能力や画面の表示機能に特化したエンジニアリングWSは、ハードウェア技術の進歩とソフトウェアの普及とともにPCと廉価な機械系、建築系CADソフトとの組み合わせで利用されるようになる。
さらなる技術進歩が進み、Windows版のCADソフトは、3D CADをストレスなく利用できる性能を安価に導入できるまでになっている。
CAD業務でWSを利用するのは以前の名残りともいえるが、演算処理性能やグラフィック機能が強化されたWSと高度に使いやすくなったCADソフトなら、業務効率も高く、データ損失を防ぐことができる安心感もある。WSとCADソフトを組み合わせることで、手軽にエンジニアリングWSが利用できる時代になったのだ。
現在のワークステーションとは?
ワークステーション(WS)という名前がついた製品が各ハードメーカーからリリースされている。外見は同じに見えるPCとWSは何が違うのだろうか?
WSは、高性能で高機能、高価格という特徴があり、業務用途に応じたスペックで構成されている。PCとの主な違いは「CPU」「GPU」「メモリー」で判別できる。
・CPU(Central Processing Unit)
一般的なハイエンドPCに搭載さるCPUは、インテル製であればCore X 、Core i9など。それに対してWSのCPUには、サーバーなどにも採用されるXeonシリーズが搭載されることが多い。数多くのコア数で並列処理をスムーズに行えるXeonシリーズであれば、より複雑な演算処理が行えるからだ。また、Xeonシリーズは、プロセッサーを複数搭載することで、さらに高い処理能力を発揮できる。
・GPU(Graphic Processing Unit)
GPUとは、Graphics Processing Unitの略で、3D描画などの画像処理を担当するチップのこと。一般的なハイエンドPCに搭載されるGPUは、CPUとGPUを統合しているため、別途GPUを搭載しなくても画像を出力できる。通常のOfficeアプリを使う程度なら、CPU内蔵GPUでも性能的には十分だが、3Dグラフィックスを多用する3D CADやVR、3Dゲームなどをスムーズに動かせないことが多い。そのためWSでは、NVIDIAなどからリリースされている単体GPUの搭載や独立したグラフィックボードを採用している。
・ECC(Error Checking and Correction)メモリー
ECCとは、メモリー上で発生したエラーの検出に対して訂正を可能とする機能のことで、ECC 機能付きのメモリーは「ECCメモリー」と呼ばれる。一般的なPCは、この機能が搭載されていないnon-ECCメモリーが搭載され、これらのメモリーは混在して使用できない。ECC 機能付きのメモリーを搭載することで、長時間に及ぶ成果物が瞬時に失われてしまうリスクの低減が期待できる。
CAD業務に向いたWSとは?
CAD業務で使用するWSで最も重要なのがGPUの選択だ。最近のトレンドとしてPCやWSに搭載されるGPUの種類には、NVIDIA製のGeforceシリーズとQuadroシリーズがある。
一般的なPCに搭載されるのはNVIDIA製のGeforceシリーズが多く、WSにはQuadroシリーズが搭載されることが多い。2種類ある理由と、その違いは以下の通りだ。
・Geforceシリーズ
Geforceシリーズは、DirectXというAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)に最適化されている。DirectXは、ゲームや動画などのマルチメディアコンテンツをWindows上で処理させるためにMicrosoft社が開発したAPIの総称のこと。
・Quadroシリーズ
Quadroシリーズは、OpenGLというAPIに最適化されている。用途としては、主にCADなどのソフトウェアを使用するクリエイター向けの製品とされている。また、10bitカラーに対応しているので、より鮮明な色表示ができる特長がある。
現在発売されているWSは、GPUを選択できる場合が多い。どのグラフィックチップを選ぶかは、業務作業の内容や価格との兼ね合いで選ばれる。ただし、同じQuadroシリーズでもチップによって性能や価格差が大きいので、最適な機種を選択するのは至難といえる。
日本HPのモバイルWS
なお、代表的なWS製品としては、HPの下記のようなモデルが挙げられる。
【おすすめノート型WSの主な仕様】
◆HP ZBook Studio G7 Mobile Workstation スタンダードモデル
テレワークに最適な高性能モバイルワークステーション
製品番号 | 1X9B8PA-AAAA |
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OS | Windows 10 Pro (64bit)(日本語) |
CPU | インテル(R) Core(TM) i7 10750Hプロセッサー (2.60GHz - 5.0GHz、コア数6/ スレッド12、キャッシュ 12MB) |
メモリー | 16GB 2933MHz DDR4 メモリ(オンボード) |
ストレージ | 512GB M.2 SSD (PCIe、NVMe、SED OPAL2、TLC) |
GPU | インテル(R) UHD グラフィックスおよび NVIDIA Quadro T1000 with Max-Q Design (4GB GDDR6) |
液晶ディスプレイ | 15.6インチワイドフルHD (非光沢パネル) |
本体標準保証 | 3年翌日オンサイト休日修理付き |
◆HP ZBook Fury 15 G7 Mobile Workstation スタンダードモデル
高いメンテナンス性を保ちつつ小型軽量したモバイルワークステーション
製品番号 | 23U12PA-AAAJ |
---|---|
OS | Windows 10 Pro (64bit)(日本語) |
CPU | インテル(R) Core(TM) i7 10750Hプロセッサー (2.60GHz - 5.0GHz、コア数6/ スレッド12、キャッシュ 12MB) |
メモリー | 16GB(8GBx2) 2666MHz DDR4 メモリ |
ストレージ | 512GB M.2 SSD (PCIe、NVMe、SED OPAL2、TLC) 1TB 7200RPM SATA HDD |
GPU | インテル(R) UHD グラフィックスおよび NVIDIA Quadro T1000 with Max-Q Design (4GB GDDR6) |
液晶ディスプレイ | 15.6インチワイドフルHD (非光沢パネル) |
本体標準保証 | 3年翌日オンサイト休日修理付き |
【おすすめタワー型WSの主な仕様】
◆HP Z2 Tower G5 Workstation おすすめ構成モデル
約15%もスマートになったHP史上最もパワフルなワークステーション
製品番号 | 9FR65AV-ACCY |
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OS | Windows 10 Pro for Workstations Plus(64bit) (Intel Xeon 6コア以上搭載システム用)日本語版 |
チップセット | インテル(R) W480 |
CPU | インテル(R) Xeon(R) プロセッサーW-1250 (3.3GHz / 6コア / 12MB /2666MHz) |
メモリー | 16GB DDR4 SDRAM(3200MHz / ECC / Unbuffered / 16GBx1) |
ストレージ | 512GB HP Z Turboドライブ G2 (内蔵M.2スロット接続 TLC SSD) 1TBハードディスクドライブ x1構成 |
GPU | NVIDIA Quadro P2200 5GB |
入力デバイス | USB 320 キーボード (日本語版109Aキーボード) USB 320 光学マウス |
本体標準保証 | (3年翌日オンサイト休日修理付き)保証規定書(日本語版向け) |
◆HP Z2 SFF G5 Workstation おすすめ構成モデル
約19%も小型化した最もパワフルな省スペース型ワークステーション
製品番号 | 9FW02AV-AECF |
---|---|
OS | Windows 10 Pro for Workstations Plus(64bit) (Intel Xeon 6コア以上搭載システム用)日本語版 |
チップセット | インテル(R) W480 |
CPU | インテル(R) Xeon(R) プロセッサーW-1250 (3.3GHz / 6コア / 12MB /2666MHz) |
メモリー | 16GB DDR4 SDRAM(3200MHz / ECC / Unbuffered / 16GBx1) |
ストレージ | 512GB HP Z Turboドライブ G2 (内蔵M.2スロット接続 TLC SSD) 1TBハードディスクドライブ x1構成 |
GPU | NVIDIA Quadro P1000 4GB |
入力デバイス | USB 320 キーボード (日本語版109Aキーボード) USB 320 光学マウス |
本体標準保証 | (3年翌日オンサイト休日修理付き)保証規定書(日本語版向け) |
次回の後編では、上記製品に加え、BP事業部がおすすめするHP製WSについて詳しく解説・紹介していく。