SDGs

SDGsへのIT業界の取り組み

掲載日:2021/04/13

SDGsへのIT業界の取り組み

近代以降さまざまな分野で工業化や電子化といった成長が進み、多くの人々が低コストかつ幅広いサービスを受けられるようになった。しかし、便利になった一方で世界にはまだまだ不平等を強いられている人々も多い。こうした不平等をはじめとする課題を解決し、より安定したよい未来を目指す意味で「SDGs」(エスディージーズ)という概念が提唱されている。世界規模で取り組むべき目標であるSDGsがどんなものであり、またITの分野でどのように貢献できるのかについて解説する。

SDGsとは?

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。これは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されたもので、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を実現すべく、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための中核的国際目標である。17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されている。働きがいや経済成長といったことも踏まえた目標となっており、世界的に広がりを見せている。

SDGs実現のためのIT活用

持続可能な社会を実現するための、業務の“最適化”“効率化”“自動化”については、ITの活用が期待されている。SDGsに含まれる17の目標のうち、ITでの貢献が可能な3つの項目について紹介する。

8「働きがいも経済成長も」

17の目標のうち8番目の項目である「働きがいも経済成長も」は、老若男女がそれぞれの特性を生かしつつ自由に働ける環境を作り、それと並行して経済的な成長も実現するという目標である。

目標達成にITで貢献する場合、まず求められるのが基幹業務システムの改善による基幹業務の自動化と効率化だ。基幹業務とは企業活動において根幹となる業務で、重要な勤怠や人事、財務等を管理することや、製造業であれば仕入れや生産管理、運送業であれば配送状況の管理業務がこれにあたる。これらの業務の多くは人力で行われており、莫大な手間とコストがかかっている。

基幹システムへ移行することで、人力で行っていた業務をシステム化し、工数の削減やヒューマンエラーを削減することができる。生産性を安定させ、より効率的に向上することが可能である。余裕のある企業活動を担保することにより、より自由で活発な人材の活用が期待できる。

また、AIの活用やテレワークの推進も、自由な労働環境の実現に役立てることが可能だ。AIの活躍は人々の労働を補佐し、時間をよりクリエイティブな業務に充てることへ貢献する。テレワークが一般化すると、人々は勤務先を選ばずどんな場所からも仕事に参加できるようになるのだ。

9「産業と技術革新の基盤をつくろう」

9番目の項目である「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、資源や情報のインフラを整備することにより、あらゆる地域や施設の人間が、多様な産業と先進的な技術の発展に貢献できる環境を作ろうという目標である。

この目標においては、例えば学校や病院といった施設でDX(Digital Transformation)を推進することで、効率的な実現に近づけることが可能だ。

実際、文部科学省では、2018年より教育現場においてITを積極的に導入する「GIGAスクール構想」を推進している。1人1台端末の学習者用PCと高速ネットワーク環境を整備することで、地域差や資本の差を埋め、誰もが効率的に学習できる環境づくりを目指した計画が進行中だ。

また、医療現場におけるDXも非常に活動的だ。2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大により、医療の遠隔化が急速に浸透している。これまで対面で行われていた問診をビデオ通話で行うなどはもちろん、限られた医薬品や人材を活かすべく、集計データをもとに効率的な配置を心掛けるなどの動きも増えた。

既にさまざまな場面でITが活躍しているが、今後もさらにITを活用する動きが加速していくだろう。

15「陸の豊かさも守ろう」

15番目の項目である「陸の豊かさも守ろう」は、あらゆる陸域の生態系および付随するサービスの持続可能な利用などを確保する目標である。端的に表現すると、陸上のエネルギーや生物を保護し、引き続き利用できるよう整備しようというものだ。

この目標については、電子媒体や社内インフラのIT化による貢献が期待できる。これまで紙媒体でやり取りしていた請求書や経費精算などの処理を電子化することにより、大幅なペーパーレス化が可能だ。森林を守ることで、多様な生物の住処も守ることができる。また、CO2削減においても大きな役割を果たす分野であるため、13番目の項目である「気候変動に具体的な対策を」という目標実現についても関係するところだ。

IT企業のSDGs取り組み事例

これらSDGsに対するITを活用した取り組みは広く一般に広がっており、企業活動の一環としてアピールしている会社も多い。特にITを専門とする企業においては自社サービスの活用や他社企業との協力による運用も活発だ。

AIによるスタッフの負担軽減

例えば、システムプラットフォームやネットワークの運用事業を行うA社では、自社サービスの活用により病院をITでデジタル化する活動を推進している。これは、病院スタッフの負担を軽減する目的でAIを積極的に導入するというものだ。これまでは医療現場でスタッフの目視や会話により入院患者のチェックを行っていたが、一部でAIによる分析を導入したことにより、必要な人材を的確に回すことができるようになったという。ITによる管理で、8番目(働きがいも経済成長も)と9番目(産業と技術革新の基盤をつくろう)の項目に貢献できた例といえるだろう。

段階的なITの導入によりできることから貢献

また、システム開発や販売を行うB社では、15番目の項目に対する取り組みが活発だ。電子媒体を積極的に利用するほか、社内インフラをIT化することにより紙の利用を抑える工夫をしている。どうしても電子化できない紙資料についても、再生紙を選択し、利用後はリサイクルに回すなど状況に応じて段階的に対応しようとする姿勢が見てとれる。B社はこれらの活動が評価され、環境マネジメントシステムの整備・運用へ取り組む企業として自治体の認定を受けている。

SDGsを実現するためには、多くの人々が感心を持って動くことも大事な要素である。まずは個々人や各企業ができることから実践し、実現に向け貢献していこう。