業務改善
マイクロソフトが目指す
Azure Stack HCIの未来図【3】
掲載日:2021/04/20
2021年2月、サブスクリプションによる新たなAzure Stack HCIが国内でもプレス発表された。それに伴いMicrosoft HCIは今後、好評だった従来製品の機能を継承するWindows Server HCIと新Azure Stack HCIが並走することになった。両製品は何が違い、Microsoftは新たな取り組みを通し、何を目指しているのだろうか。Azure Stack HCIの開発パートナーでありソリューションパートナーであるレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社(以下LES)の米津 直樹氏にHCI市場におけるMicrosoftの施策について伺った。最終回である今回は、セールスの観点からAzure Stack HCIとLenovoの強みについて見ていきたい。
マイクロソフトが目指すAzure Stack HCIの未来図【1】はこちら
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Azure Stack HCIはインターネット接続が大前提
新Azure Stack HCIはSDS機能を切り出したHCI専用OSであり、サブスクリプションで提供されることを学んできた。ではセールスの観点では、どのような注意点があるのだろうか。
「OS上でHyper-Vによる仮想化ソフトウェアを動作させる技術的アーキテクチャに変更はありません。そのためサブスクリプションで提供することがセールスにおける最大の変更点になります。また新Azure Stack HCIは30日に1回のインターネット接続が必要になります。毎月手動でインターネット接続を行うことは現実的ではないことを考えると、常時接続が必須と考えた方がいいでしょう。またサポートやリーガルアグリメントポリシーがAzureに依存することやOSネイティブレベルとAzureと連携することも注意すべきポイントになるはずです」とレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 ソリューション・アライアンス本部 Microsoftアライアンス担当の米津 直樹氏は指摘する。
セールスにおけるアドバンテージとしてぜひ注目したいのが、Windows Server 2008/R2仮想マシンのエンハンスドサポートが提供される点だ。稼働中のレガシーOSへの対応に苦慮するエンドユーザー様にとり、Azure Stack HCIは新たな選択肢になるはずだ。
また新たに追加されたストレッチクラスタリングによるディザスターリカバリ機能はBCP対策の観点でも注目に値する。さらに従来はハードウェアメーカーの管理画面で行ってきたファームウェアやドライバーのインストールがWindows Admin Center上で一元的に行えるようになったことも注目点だ。
Azure Stack HCI は新たなプラットフォーム
コストは1コア10ドル(2021年3月現在)
価格について確認しておこう。これまでMicrosoft HCIは、高額なWindows Server 2019 Datacenterにひも付く形で提供されてきた。新ライセンス形態では、それがホストOSとしてのAzure Stack HCI(サブスクリプション版)とゲストOSとしてのWindows Server 2019(永続版)が分離して提供される形に変更される。
「10台未満のVMが稼働する環境の場合、Windows Server 2019 StandardとAzure Stack HCIの組み合わせによりコストメリットが生まれるというのがMicrosoftの考え方です。またHyper-V上で無償のLinuxアプリケーションを動かす場合、Azure Stack HCIだけでHCIが構築できます」
毎月の課金額は、「1コア10ドル」で物理プロセッサーコア数に応じて増減する。直近レートでは1コア1,109円/物理コア/月(2021年3月現在)になる。
ハードは大きく統合システムと認定ノードの2種類
Azure Stack HCIとして提供されるハードについて簡単に整理しておきたい。Microsoftによるハードウェア認証には、「統合システム」(Integrated Systems)と「認定ノード」(Validated Node)という2つの段階がある。これらは何が違うのだろうか。
「一言で説明するなら、前回紹介したAzure Stack Hub同様、起動後にAzure IDを入力すればすぐに動き始めるのが『統合システム』、いくつかの設定やインストールが必要になるのが『認定ノード』で、導入トラブル解消という観点から前者を推奨するのがMicrosoftの考え方です。ちなみに統合システムを提供するのは、世界的にも3社しかなく、国内で統合システムと認定ノードの双方を提供するのはLenovoだけです」
ハードウェアとしてのAzure Stack HCIの強みとしてぜひ注目したいのが、ブランチオフィスやエッジコンピューティングにおけるニーズへの対応だ。システムが大幅に簡素化でき、Microsoft Azureによる物理サーバー管理が可能になることで、こうしたニーズとの親和性が大幅に向上したことがその理由だ。
「店舗サーバーの場合、ストレージは10TBもあれば十分で、よりコンパクトで早いサーバーが欲しいというニーズも多いと思いますが、1Uサイズの筐体に100WCPUや最大256GBメモリーが乗り、Wi-Fiに加えLTEもサポートする当社のThink Agile MX1000シリーズであれば、こうしたニーズにスムーズに対応することが可能です。同シリーズはMicrosoft CEOのサティア・ナデラ氏もかなり気に入っているらしく、Microsoftサイトでもさまざまな形で露出しています」
Azure Stack HCI の2つの Tier - 認定ノードと統合システム
Azure Stack HCIはLenovo。その理由は?
1UサイズHCIというニッチを開拓したMX1000シリーズをはじめ、目的に応じて提供されるLenovoのAzure Stack HCI製品は市場でも高い評価を得つつある。最後にその理由を探ってみたい。米津氏はその理由として、大きく3つの特長を挙げる。
「まずはソリューションパートナーであると共に開発パートナーでもあるという、MicrosoftにおけるLenovoの位置づけです。EMEA(欧州・中東・アフリカ)におけるAzure Stack HCIのトラックレコードを持ち、デプロイメントガイドや構成ガイドとして無償提供していることは、こうした特別な関係性の表れです」
次が保守サポートの強みだ。スペックが数値化できるハードウェアは横並びであっても、障害時の対応は各社それぞれ異なる。エンタープライズ市場では、製品スペック以上に、ダウンタイム最小化が大きな意味を持つ。
「注目いただきたいのが、IBM時代から培われてきた保守効率化の取り組みです。LEDによる障害箇所の明示をはじめとする工夫は、ダウンタイム短縮に大きな役割を果たしています。また24時間365日の日本語による技術サポート提供も当社の強みです。そして最後がNECパーソナルコンピューターを傘下に擁し、研究開発・生産・サポートを国内で行う強みです。外資系メーカーの場合、海外でデプロイメントを行い、出荷後のトラブルはパートナー様に一任するという形をとることが珍しくありませんが、当社の場合、品質管理に定評があるNEC米沢工場において検品・キッティングまで行っています」
ThinkAgile 専門家によるシングルポイント・サポート
さらに機器の貸し出しも含め、Azure Stack HCI検証環境を無償で提供することにも注目したい。検証環境提供はパートナー様向けサービスだが、実際にはエンドユーザー様と共に利用するケースも少なくないという。またAzure Stack HCI構築を学びたいというパートナー様には、ハンズオンを無償提供する。ブランチオフィスやエッジコンピューティングに関する新市場開拓という観点でも期待されるAzure Stack HCIセールスにおいて、Lenovoが頼りになる存在であることは間違いなさそうだ。