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中小企業のIT提案に活用したいIT導入補助金

掲載日:2021/05/25

中小企業のIT提案に活用したいIT導入補助金

近年、中小企業のIT導入に大きな役割を果たしているのが、経済産業省が主導するIT導入補助金だ。事前に登録された導入支援事業者やITツールを活用することで、専任のIT担当者がいない中小企業であっても比較的簡単な手続きで、導入費用の最大2/3(2021年度)の補助が受けられる。今年4月には、2021年度IT導入補助金の第一次募集がスタートしている。今回はそのポイントを改めて整理していきたい。

IT導入補助金とは?

中小企業・小規模事業者等による、自社の課題やニーズに見合ったITツール導入を支援することがIT導入補助金の目的である。そのポイントは、事前に登録されたIT導入支援事業者(ITベンダー・サービス事業者)およびITツールを利活用することで、専任のIT担当者がいない中小企業であっても比較的容易に補助金受給申請が行える点にある。

申請の基本的なフローは以下のようになる。
①エンドユーザー様からIT導入支援事業者への相談
②IT導入支援事業者による登録ITツール提案
③エンドユーザー様による交付申請
④補助金交付の決定

ここからも分かるとおり、IT導入補助金を利用した提案を行う際には、IT導入支援事業者の登録が不可欠になる。2021年度のIT導入支援事業者登録は3月25日~6月30日の期間。手続きは全て電子申請で行われ、登録には法人(単独)登録と幹事社と構成員によるコンソーシアム登録の二つの方法がある。なお、登録済みのIT導入支援事業者、ITツールは、IT導入補助金2021で確認できる。

申請者には、飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育などのサービス業のほか、製造業や建設業が含まれる。補助対象の条件は、業種・組織形態・規模別に定められている。

通常枠とコロナ禍に対応する特別枠を設定

2021年度のIT導入補助金について具体的に見ていこう。今年4月に始まった第一次公募は5月14日に締め切られたが、7月には第二次公募の開始が予定され、それ以降も申請状況を見極めながら公募が行われる見通しである。

また2020年度からは「生産性向上に資するITツール導入」を目的とする通常枠に加え、新たに新型コロナ感染症対策を目的とする特別枠が追加された。内容の変更はあるものの、その基本的な枠組みは2021年度も踏襲されている。

通常枠には、補助金申請額30万~150万円未満の「A類型」と150万~450万円以下の「B類型」があり、それぞれ補助率は1/2以内。A・B類型には、申請額以外にも大きく二つの違いがある。

その一つが「プロセス数」の違いである。IT導入補助金では「顧客対応」「決済」「調達」「会計」などの業務プロセスや自動化、分析などの汎用プロセスをそれぞれ1プロセスとしてカウントし、A類型は1プロセス以上、B類型は4プロセス以上への対応が求められる。

例えば、販売管理、顧客管理などの仕組みの新規導入、入れ替えを単体で行うケースはA類型、業務を全面的に刷新し、顧客管理システムやクラウドベースの受発注システム、会計システム、AIを活用した業務支援システムなどを新たに導入するケースはB類型になる。

もう一つは「賃上げ目標」に対する評価である。IT導入補助金の審査は、「自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか」「改善すべきプロセスが、導入するITツールの導入効果とマッチしているか」などの事業面からの審査に加え、「国が推進する関連事業に取り組んでいるか」などの政策面からの審査が行われる。後者の一つに「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加」「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする」ことを満たす事業計画を策定し、従業員に周知する賃上げ目標の設定がある。賃上げ目標については、A類型は加点項目、B類型は必須項目になる。

なお補助対象はA類型、B類型ともにソフトウェアや導入関連費用に限られ、ハードウェアレンタル費用は対象にならない。

今年度の特別枠のキーワードは「低感染リスク」

特別枠について見ていこう。既に触れたとおり、2021年度も新型コロナ感染症対策に関する補助は行われるが、「サプライチェーン毀損への対応」「テレワーク環境の設備」という二つの領域で大盤振る舞いした昨年度と比較し、よりテーマを絞り込んだ導入補助が行われる。

それが、今年新設された「低感染リスク対応型ビジネス枠」だ。同枠は、業務の非対面化に資するツール(非対面化ツール)の導入を前提に、「C類型(低感染リスク型ビジネス類型:複数のプロセス間で情報連携されるツールを導入し複数のプロセスの非対面化や業務の更なる効率化を行うことを目的とした事業)」と「D類型(テレワーク対応類型:テレワーク環境の整備に資するクラウド対応ツールを導入し複数のプロセスの非対面化を行うことを目的とした事業)」を補助対象とする。

非対面化ツールとは、事業所以外の遠隔地から業務を行うテレワーク環境の整備をはじめ、対人接触の機会を低減するよう非対面または遠隔でのサービス提供が可能なビジネスモデルへの転換(業務形態の非対面化)に資する、労働生産性の向上を目的としたITツールを指す。どちらも補助率は2/3以内で、通常枠とは異なり、ソフト導入費用・ハードレンタル費用ともに補助対象になる。

C類型は、補助金申請額を基準にC類型-1(30万~300万円未満)、C類型-2(300万~450万円以下)に分けられる。ポストコロナを見据えたC類型による補助として想定されるのは、複数の業務プロセスを非対面化し一層の生産性向上を図るITツールの導入。具体的には、飲食店の遠隔注文システムやキャッシュレス決済システム、それらに対応する会計管理システムなどが挙げられ、ソフト導入費用・ハードレンタル費用ともに補助対象になる。

一方、テレワーク環境整備という昨年来のテーマを引き継ぐのがD類型だ。最大450万円の上限額は150万円以下に縮小。さらに単なるテレワーク環境整備だけでなく、2プロセス以上の非対面化を実現するソリューションが対象になる。

その一例として想定されるのが「クラウド型勤怠管理システムとWeb会議システムの導入」というケース。多くの企業が既に一定のテレワーク環境整備を終えた現状を考慮すると、クラウド型勤怠管理システムや印鑑レス、リモートアクセスなど、テレワークの次の一手を打とうとするエンドユーザー様への提案に活用したい。