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ネットワークカメラ最前線(1)

掲載日:2021/06/15

ネットワークカメラ最前線

コロナ禍を機にさまざまな機器やツールに注目が集まる中、ネットワークカメラの需要が高まっている。従来の監視・防犯としての用途のほか、現在は商業施設・イベント会場での三密回避のための監視や家族の見守りとしてなど、ビジネス・プライベート問わず導入が拡大している。いま一度、ネットワークカメラの仕組みや用途などを確認しておこう。

ネットワークカメラとは?

ネットワークカメラは、カメラ本体にコンピューターが内蔵されており、ほかの機器を介することなくインターネットに接続できるカメラだ。IPアドレスが割り振られていることから、「IPカメラ」とも呼ばれている。

機種によって有線LAN、Wi-Fi対応となっており、HUBまたはルーターに接続して使用する。同じネットワークに接続されているPCやスマートフォン、タブレットでカメラの映像を確認できるほか、通信はデバイスとの双方向であるため、スマートフォンなどのデバイスからカメラの操作を行うことも可能だ。

ネットワークカメラにはいくつか種類があり、Webサーバー、FTPクライアント、Eメールクライアントを内蔵する機種、プログラミングやアラーム管理などが可能な機種、また、撮影映像の保存方法や給電方法、設置場所、形状などのカテゴリーによって分けられる。

撮影した映像データの保存方法

サーバー録画: 映像を専用サーバーに保存する。サーバーの用意・メンテナンスが必要。
NAS録画: 映像をネットワーク経由でNASに保存する。低価格で導入できるが、容量が少ない。
クラウド録画: 映像をクラウド上に保存する。機器のメンテナンスが不要でセキュリティ面でも安心だが、使用容量によってはクラウドの従量課金に注意が必要。

給電方法

ACアダプター: カメラ1台ごとにACアダプター・コンセントで電源をとる。
PoE: LANケーブルを通して電力をとる。業務用ネットワークカメラに多く見られる。
内蔵バッテリー: 電源・配線を気にせず使えて移動が簡単な方法。ただし、稼働時間に限りがあるため、主に家庭用のネットワークカメラに用いられる。

設置場所

屋外: 風雨にさらされるため、防水・防じん機能付きのものが多い。広範囲が映る広角・望遠レンズやズームレンズ搭載のもの、赤外線照明付きのものもある。
屋内: 比較的小型のカメラが多い。設置場所によっては目に付くためデザイン性も考慮されている。

その他、PTZ(パン/チルト/ズーム)機能付きで、横方向、縦方向、ズームの動きにより広範囲で捉えられるカメラなどもある。

従来監視用に活用されてきたアナログカメラは、カメラ本体と録画用レコーダー、モニターなどを同軸ケーブルで接続する必要があった。また、カメラ1台ごとに電源とつながなければならないため、ネットワークカメラと比較すると敷設には労力とコストがかかる。

さらに、アナログカメラは通信が単方向でしかないため、ネットワークカメラのようにデバイスからカメラを操作できない。

アナログカメラは、専用ケーブルが必要で拡張性に乏しく、遠隔での映像表示が不可、画角が狭いなどの弱点もあった。それと比較するとネットワークカメラは拡張性が高く、遠隔でも映像を受信でき、画角も広い。

ネットワークカメラとWebカメラの違い

ネットワークカメラは、よくWebカメラと混同される。名前に「Web」と付くことで、こちらもネットワークにつながるイメージを持つ人が少なくないようだ。しかし、Webカメラはコンピューターが内蔵されていないため、PCに接続し、USBから給電しないと使えない。

Webカメラの主な用途はWeb会議やビデオチャットだ。PCを起動していないと使えないため、24時間365時間稼働が前提の防犯・監視カメラとしての使い方はできない。

逆に、通常はネットワークカメラを会議用カメラとして使うことはない。しかし、一部のネットワークカメラにはプラグインソフトを入れることで、Zoomなどと接続して使用できるものも出てきている。

さまざまな用途で活用されるネットワークカメラ

防犯用カメラとして長い間使用されてきたアナログカメラは、前述したように設置にコストがかかるうえ、録画された映像はテープやHDDに保存するために録画時間が短く、映像・画像が劣化するデメリットもあった。

それに対してネットワークカメラは、アナログカメラより安価で手軽に導入しやすいため、企業のほかにも個人で家庭用として導入するケースも増えている。また、映像もデータ化して圧縮保存でき、用途によって細かな機能が搭載されている。こういったメリットから使用範囲が広がり、監視・防犯以外の用途での需要が広がっている。

「密集回避」を目的として導入

ネットワークカメラは、コロナ禍の密集回避対策としてショッピングモールや百貨店、イベント会場や劇場などで幅広く導入されるようになった。ネットワークカメラの検知機能を利用し、店内・会場内の人数を計測する。一定以上になったらアラートを通知するシステムなどを活用し、人の目では判断できない人数もリアルタイムで検知。早めに入場制限などの対応ができる。

「見守り」を目的として導入

一方、保育施設や介護施設にネットワークカメラを導入すれば、離れた場所にいる園児・入居者の様子が映し出された映像をリアルタイムで確認できる。人出不足に陥りがちな施設職員のサポートや、コロナ禍で高齢者のいる施設への訪問が難しい入居者の家族が、遠方から様子を確認するためにも利用されている。

ほかには安価なネットワークカメラをペットや子ども、高齢者などの見守りを目的とした家庭用として導入するケースもある。仕事中や移動中などの外出先でもスマートフォンを使って家の様子を確認できる。

「記録・分析」を目的として導入

ネットワークカメラの映像を、マーケティングに利用することを目的とした導入例もある。例えば、店舗に配置することで来店客数や客層を把握し、販売戦略を立てるためのデータとして映像を活用できる。また、従業員の接客状況をモニタリングすることで、従業員の教育に生かすなどの活用方法もある。ほかにも来店者客数のカウントや動線、行動を記録・分析し、商品の陳列改善などに役立てることも可能だ。

用途・市場は拡大の見込み

今までのアナログカメラは、ほぼ監視用に用途が限られていたが、種類も機能も豊富なネットワークカメラの使用範囲は今後もさらに広がっていきそうだ。

ユーザーの要望により、メーカー側もネットワークカメラに付随する新しいソフトの開発を行っている。今後も便利な機能が搭載されていくことが予想できる。

ネットワークカメラをお客様に勧めるときは、現在使われている用途を説明するだけでなく、お客様が何を目的としたネットワークカメラを導入したいのかをリサーチすることが大切だ。お客様が希望する用途をメーカー側に伝えていくことで、さらにネットワークカメラ活用の可能性は広がるだろう。