テレワーク

CADでも有用なWVDをキャッチアップ

掲載日:2021/06/22

マCADでも有用なWVDをキャッチアップ

コロナ禍は、BIM/CIMに代表される建設分野の3D CAD設計者・オペレーターのテレワーク化への関心につながった。働き方改革の観点からも、この傾向は新型コロナ感染症が収束した後も続くことが予想される。3D CAD業務のテレワーク化にはいくつかの方法があるが、本格的なテレワーク導入で着目したいのがクラウドベースVDIの活用だ。その導入には、構築や管理の省力化を実現したMicrosoft Azure上で日本マイクロソフト株式会社が提供するデスクトップ仮想化サービスWindows Virtual Desktopに注目したい。

コロナ禍で大きく変わったクラウドの評価

コンピュータ上に作成した建物の3次元モデルに管理情報などの属性データを追加し、建築設計から施工、維持管理まであらゆる工程で効率的に活用するBIM(Building Information Modeling)は近年、日本国内でも急速に普及が進んでいる。

同様に、土木分野のCIM(Construction Information Modeling)についても、国土交通省の主導で徐々に浸透が進み、2018年には、建築分野の「BIM」と土木分野の「CIM」という概念を改め、建設分野全体の3次元化の総称として「BIM/CIM」に名称が統一された。BIM/CIMのメリットを最大限に発揮するためのポイントは、プロジェクトに関わる多様なステークホルダーのスムーズな情報共有を可能にするクラウド活用である。

ところが日本国内では、DWGデータをはじめとする設計データのクラウド移行は、これまで大きく出遅れてきた。その背景には、機密情報資産である設計データを社内外で共用することへの強い抵抗があった。

しかし、コロナ禍によりBIM/CIM設計者も含め、テレワーク移行が強く求められるようになった今、こうした「クラウドアレルギー」には大きな変革が迫られている。

オートデスク製品のライセンスは仮想環境にも対応

設計業務のテレワーク化において、ぜひ注目したいのが「CAD on VDI」だ。

これまで設計者の働き方改革の大きな制約となっていたのが、作業スペースを圧迫する大きなワークステーションの存在だった。テレワーク導入に際しても、騒音や廃熱が大きなCADワークステーションの自宅への配備は大きなハードルになっていた。

この課題を解決するのが、仮想マシンをデータセンターに集約するCAD on VDIという考え方だ。

ここで気になるのが、仮想環境とライセンスとの関係だ。結論からいうと、現在利用しているライセンスはいずれの方法であれ、基本的に仮想環境でも利用することが可能だ。

例えば、オートデスク株式会社の一般利用規約では、シングルユーザーは1ライセンスにつき、最大で3台の電子デバイスにソフトウェアをインストールすることが許可されているが、この考え方は仮想化環境においても適用される。

そのためオフィスに配置されたワークステーションや自宅PCと共に、クラウド上の仮想マシンを1ライセンスで使い分けることが可能になる。

VDIには、オンプレミスサーバー上に構築する方法とクラウドサービスを利用する方法がある。設計業務のテレワーク化においては、ファイアウォール再設定などの手間だけでなく、リモートアクセス時のセキュリティ確保の観点からもクラウドサービスの利用が便利で安心だ。

特に注目したいのが、2019年に発表されたデスクトップ仮想化サービスである日本マイクロソフト株式会社のWindows Virtual Desktop(以下WVD)である。その理由について説明していきたい。

オートデスク株式会社のシングルユーザーは、1ライセンスにつき最大で3台の電子デバイスにインストールでき、その中に仮想化環境も含まれる。

日本マイクロソフト株式会社のVDI、WVDの特長は?

WVDはデスクトップ環境をクラウドのサーバーから提供する、いわゆるDesktop as a Service(DaaS)と呼ばれる分野のサービスである。

デスクトップ仮想化製品としてはシトリックス・システムズ・ジャパン株式会社の「Citrix XenDesktop」やヴイエムウェア株式会社の「VMware Horizon」などが有名だ。両社のVDI製品はAzure上で展開することが可能で、それぞれ「Citrix Cloud on Microsoft Azure」や「VMware Horizon Cloud on Microsoft Azure」と呼ばれる。

上記2製品と違いWVDは、日本マイクロソフト株式会社自身が提供するDaaSという位置付けになる。その特長としては、手軽に利用できる点がある。

VDI環境を構築するには通常、ユーザーと1対1でひも付く仮想マシンだけでなく、ユーザー管理ツールなど、さまざまな管理コンポーネントを用意する必要がある。

しかしWVDの場合、これらのコンポーネントのほとんどがMicrosoft Azureのサービスとして提供されるため、コンポーネントの設定やその管理といった煩雑な作業が不要になるのだ。

またWindows 10のマルチセッション接続を利用することで、仮想マシンを複数ユーザーで共用できるようになる点にも注目したい。

これまでVDIでは、ユーザーごとに仮想マシンを割り当てる必要があった。そのため全ユーザーが常時VDIを利用するという特別なケースを除くと、リソースにムダが生じていた。マルチセッション接続の利用により、こうしたムダを解消し、コスト削減を見込むことが可能になる。

仮想デスクトップ共有は、サーバーOS上のアプリなどを複数ユーザーが共有するSBC(Server Based Computing)方式が有名だが、マルチセッション接続はユーザーと仮想マシンが1対1で対応するため、特定ユーザーの処理が他ユーザーの処理に影響するなどのデメリットは生じない。

本格的なテレワーク導入にVDIは不可欠

新型コロナ感染症は、これまであまり考慮されることがなかったCADオペレーターや設計者のテレワーク導入の再注目へとつながった。働き方改革の観点からも、この傾向は新型コロナ感染症が収束した後も続くことが予想される。

膨大なデータの処理が求められる3D CAD業務のテレワーク導入には、一般的なオフィスワークと比べて高いハードルがある。昨年の緊急事態宣言後にオフィスのワークステーションを自宅まで運び、なんとかテレワークに対応したケースが珍しくなかったことからもそれはうかがえるはずだ。

CAD業務のテレワーク化にはいくつかの方法があるが、より本格的に取り組むのであれば、デバイスのスペックを問わず、インターネット環境さえあればいつでもどこでも作業が行えるVDIが一番のおすすめであることは間違いない。その仕組みや効果を理解したうえで、積極的にエンドユーザー様に提案していきたい。