中小企業

事業再構築補助金で注目の事業とは?

掲載日:2021/07/06

事業再構築補助金で注目の事業とは?

コロナ禍で経営が大きな打撃を受け、苦しい状況にある企業は多いだろう。そんな中、経済産業省が事業再構築補助金の公募を開始した。この補助金は経営の大きな助けとなるものとして注目されている一方、採択されるためには複数の条件を満たすことが必要でもある。この補助金がどのような条件を設けており、また、それによって市場にどのような影響が発生するのかをまとめる。

事業再構築補助金の概要

新型コロナウイルスの影響が長期化し、当面の間は需要や売上の回復が期待しづらい状況が続くと予想されている。そのような状況下でも、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済・社会の変化に対応するために思い切った事業再構築に挑戦しようとする中小企業は多くある。そこで、これらを支援し、日本経済の構造転換を促すことを目的として設けられたのが「事業再構築補助金」である。

事業再構築補助金には、事業規模などに応じて補助金額と補助率に枠が設定されている。「中小企業(通常枠)」「中小企業(卒業枠)」「中堅企業(通常枠)」「中堅企業(グローバルV字回復枠)」の4つに加え、早期の事業再構築が必要な中小企業などを対象にした「緊急事態宣言特別枠」がある。

このうち、「中小企業(卒業枠)」「中堅企業(グローバルV字回復枠)」は組織再編やグローバル展開などによって大規模に企業成長することを条件とした枠であり、採択される企業数も限定されている。そのため、一般的な企業は「中小企業(通常枠)」「中堅企業(通常枠)」に申請することになるだろう。

事業再構築補助金の申請条件

事業再構築補助金に申請するためには、まずは以下の3つの要件に該当する必要がある。

(1)売上が減少していること
(2)事業再構築に取り組むこと
(3)認定経営革新など支援機関と事業計画を作成すること

(1)については多くの企業がコロナ禍においてマイナスの影響を受けているため、相当数が該当すると考えられる。(3)についても国が認定する金融機関や税理士などが対象となっており、しかるべき協力を得て事務的な作業を進めれば要件を満たすことは容易である。ただし、(2)についてはやや複雑、かつ項目によっては要件を満たすことが難しい内容となっており、申請時には注意が必要である。

また、事業再構築補助金では成果目標が掲げられており、数字で目に見えた生産性向上が求められる。そのため、支援機関や専門家と共に実現可能な事業計画を策定することが大切だ。

注目されるWeb事業

経産省の発表によると、前項(2)の事業再構築の中で支援の対象となるものは、以下5項目のうちいずれかに該当するものとされている。

①新分野展開 ②事業転換 ③業種転換 ④業態転換 ⑤事業再編

このうち①~③および⑤の項目を満たすためには、これまでの事業とは全く異なる業種の製品の製造や、会社法上の組織再編行為が必要となる。そのため、補助金対象の条件を満たすためには未開拓の分野でノウハウの希薄な製品を開発したり、企業合併や株式交換に着手したりと大きなリスクを背負う必要がある。

一方、④の項目については、ECサイトやEコマースなどのWeb事業を始めることで支給の対象条件を満たすとみなされている。これまでと全く違う畑の事業を新たに始めなくとも、既に取り扱っている商品や商材をWebで展開することでも要件を満たすことが望めるので、他の項目に比べると大変現実的な選択肢だ。

実際に、通販事業やオンラインセミナー事業を新しく立ち上げ、補助金の活用を目指したとされる事例が多く見受けられる。

通販事業の立ち上げで注文増加

例えば、地方で農業を営むA社は補助金を利用し、新たに通販事業を立ち上げた。これまでの生産物は主に地元の店舗で販売されていたが、巣ごもり消費の増加もあり国内の広い地域から注文が来るようになったという。このように社会事情に合わせて新たな市場を開拓することは、補助金の理念としても適当な例と言えるだろう。

Web上でサービスを完結し、地域を問わない応募が可能に

また、結婚式の会場選定や経費算出などを請け負う事業を展開するB社では、補助金を利用して予約や打ち合わせをWeb上で完結させるサービスを開始した。同社では会場の見学や担当者との密な相談もWeb上で取り扱えるようになっており、同様にこれまで以上に幅広い地域から応募が届いているという。

期待されるWeb関連の需要増

これらの事業再構築補助金によるWeb展開の増加は、新型コロナウイルスの影響で業績が落ちた企業のみが注目すべき出来事ではない。

新たなWeb展開にあたって、多くの場合外部の企業にWeb制作が発注される。そのため、システム構築やWebデザインといった、Webサイト制作事業に関連する商材を扱う企業も注目すべきものだと言えるのだ。それだけでなく、ホスティングサービスやWebサイト制作サービス、サーバーなどだけでなく、CMSや画像編集ツールの需要も高まるだろう。

2021年度、複数回の公募が予定されている事業再構築補助金。さまざまな技術が求められることを想定し、いま一度注目して需要の増加にも対応できるようにしておきたい。