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ネットワークカメラ最前線(2)

掲載日:2021/07/13

ネットワークカメラ最前線(2)

前回は、ネットワークカメラの仕組みや種類、最新の活用方法について解説した。今回はネットワークカメラをはじめ、法人向けシステム販売、SI事業など展開するパナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社に、業界の最前線と具体的な商材について伺った。

ネットワークカメラ最前線(1)はこちら

ネットワークカメラは監視カメラの進化形

ネットワークカメラは、もともと監視用として用いられてきたアナログカメラが進化したものだ。緊急性が高い場合はライブで現場の状況を確認し、犯罪などが起きた場合は事後の確認として録画した映像を見る。それが従来の監視カメラの使い方だった。

「監視カメラとしてのネットワークカメラは、人間の目の代わりとなって安心安全を守るために使われてきました」とマーケティングセンター セキュリティソリューション推進部マーケティング課 ソリューション企画係 係長の大石 恵司氏は説明している。

大石 恵司氏
マーケティングセンター セキュリティソリューション推進部
マーケティング課
ソリューション企画係
係長 大石 恵司氏

監視カメラで大切なのは「現場の状況を正しく映す」ことだ。そのため、24時間365日、昼でも夜でもクリアに映ること、屋外に設置する場合は台風や降雪などの悪天候にも耐えられることなどがカメラの性能として求められてきた。そのカメラがまた一段と進化してきている。

「技術的に大きく進んだのが、映像の高画素化です。テレビに例えると分かりやすいと思うのですが、アナログ放送からデジタル放送、さらに4K放送と進化してきました。これと同様に、監視カメラもより精細な映像を映し、現場の様子を正確に伝えられるようになっています」(大石氏)

デジタルカメラは、レンズから入った光(被写体)をデジタルデータに変換する。このデジタルデータへの変換に用いる部分を撮像素子(イメージセンサー)といい、LSI(大規模集積回路)が使用されている。

大石氏によると、現在のネットワークカメラの主流はフルHDだ。撮像素子も高画素のものがメインになっており、もはや低画素のカメラを作れば安価になるというものでもないという。

また、LSIが非常に高性能になっており、映像を高画質にするだけにとどまらず、ほかの機能を持たせることもできるようになっているようだ。

「ほかの機能」として挙げられるものの一つが「画像解析」だ。従来の監視カメラでは、撮影した映像をコンピューターで解析していた。しかし最新のネットワークカメラでは、カメラ側で画像解析が可能になっている。

「従来のカメラのように人の目に代わって監視するだけでなく、人の頭の部分も一部サポートできるようになりました。ネットワークカメラはエッジコンピューティングの世界に入ってきています」(大石氏)

ネットワークカメラの新しい使用方法

従来は安心安全を守るために活用されてきたネットワークカメラだが、負担の大きい人件費を減らすべく、最適な人数で効率的に成果を上げるためにネットワークカメラを活用することもできる。

例えばコロナ禍で利益が下がった流通・小売の一部の業界では、監視以外の使い方を求めるお客様が増えている。各売り場のお客様の人数に比べて店員の数は適正か、などスタッフの効率化を図れるほか、映像分析を使って年齢層や男女比を分析するなどのマーケティング的な要素への活用も可能だ。

このほかに、製造業界では危険エリアへの立ち入りをさせない、危機回避のために一人きりで作業させないなど、特定のスペースでの適正人数を保つために、ネットワークカメラで管理するという使い方もある。

このように、ネットワークカメラは従来の使用方法から進化して、データを収集・活用するための端末として新しく活用されている。

パナソニックのネットワークカメラのうち「AIネットワークカメラ」が、このような端末の役割を果たせる機種である。このクラスの機種になると、複数のアプリケーション搭載も可能になり、使用目的も防犯・監視に限定されなくなる。

WV-X2571LNJ
WV-X1571LNJ

コロナ禍の中でお客様からの要望が大きかったのは、建物・会場に入る人の発熱の有無の検知、マスク装着有無の検知、そして三密回避だ。

こういった声を受けて、パナソニックでは2021年3月に「AI混雑検知アプリケーション」をリリースしている。

ネットワークカメラと「AI混雑検知アプリケーション」を組み合わせることで、撮像範囲の人数の様子を確認できる。人数が一定を超えた際、監視側にアラームを出す設定をしておけば、係員は迅速に現場に向かって対応できる。

さらに、サイネージと連携すれば、マスクをしていない人を感知した場合に「感染予防中なので、マスクを着けていない人は入らないでください」などといったメッセージを流すことも可能だ。

このソリューションをコロナ対策として導入しているのは、百貨店・ショッピングモールを中心に、不特定多数の人が集まる場所や、多くの人が勤務する企業など。オフィスに入るときにマスクをしていないと注意喚起を行うといった使い方が採用されている。

堀 正人氏
パートナー営業本部
営業3部 営業1課
課長 堀 正人氏

とはいえ、コロナ禍がこの先何年も続くことはないとみられる。その一方で、この機会に導入した製品はアフターコロナでも無駄になることはない。

「感染症は新型コロナに限ったものではありません。この先も何かしらの感染症が発生し得ると考え、いざというときのリスクマネジメントとしてネットワークカメラを導入される事業者様が多いです」とパートナー営業本部 営業3部 営業1課 課長の堀 正人氏は言う。

ネットワークカメラは今後どう進化していくのか

防犯・監視以外にも幅広い使用方法で活用されるようになったネットワークカメラ。今後はネットワークカメラに搭載するアプリケーションが、さらに進化していくことが予想されている。

「各業界特有の困りごと・問題点の解決方法については要求度がだんだん上がっています。今後は、画像解析のアプリケーションは汎用(はんよう)性の高いものと、業界特化型のものと2軸に分かれていくのではないかと考えられています」(大石氏)

パナソニックはグローバルに展開しているため、製造販売する画像解析のアプリケーションは汎用性の高いものが多い。逆に、業界特化型のものはベンチャー企業が多く開発しているという。

また、パナソニックはアプリケーション開発以外にも、ネットワークカメラ本体を、複数のアプリケーションを内蔵できるカメラと、単一アプリケーションにのみ対応するカメラなど性能ごとにラインナップをそろえていく予定だ。

千葉 浩之氏
マーケティングセンター セキュリティソリューション推進部
業界推進課
法人推進係
主事 千葉 浩之氏

「画像解析の場合、通常は監視カメラからの映像をサーバーを立てて処理します。しかし、パナソニックではAIカメラを用いてカメラ側で処理を実行するため、サーバーが不要です。また、映像を記録するためのレコーダーまでシステムとして一連で提供できるのが強みです。そこをポイントと捉えていただければと思います」と今後の展望についてマーケティングセンター セキュリティソリューション推進部 業界推進課 法人推進係 主事 千葉 浩之氏は語っている。

高性能になったネットワークカメラは、本体にコンピューター機能をもっている。しかしカメラだけを購入すればお客様の要望がかなうわけではない。
用途に合ったアプリケーションと、記録媒体やクラウドとともにお客様にすすめていきたい。