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2021年のトレンド
「場所を問わないオペレーション」とは

掲載日:2021/07/13

2021年のトレンド「場所を問わないオペレーション」とは

コロナ禍が続く昨今、さまざまな企業が新しい働き方を模索している。そんな中、ガートナー社が発表した、今後の企業活動を予測した『2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド』が注目を集めている。この中で紹介された「場所を問わないオペレーション」という概念とは何か。概要に加え、今度の企業活動に与える影響などを解説する。

場所を問わないオペレーションとは

ITマーケティングリサーチ・コンサルティング業のガートナー社が2020年に発表した『2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド』に注目が集まっている。これは、コロナ禍以降のIT業界における動きを予測したもので、テクノロジーの発展による情報の取扱いやプライバシー保護などの今後を9項目で端的にまとめたものだ。

その中の一つが「場所を問わないオペレーション」だ。これは、今後企業のビジネスは物理的な場所にとらわれず柔軟に行われるようになるという予測で、ガートナー社によると「あらゆる場所に存在する顧客をサポートし、従業員がどこでも仕事ができるようにするために企業が整える必要があるITシステムモデル」が増加するとのこと。同社は2023年末までに、企業の40%が場所を問わないオペレーションを適用すると予測している。

場所を問わないオペレーションを実現する5つの中核領域

場所を問わないオペレーションは5つの中核領域からなり、実現のためにはこれらの活性化・高度化が必要だ。この5つの中核領域について説明する。

コラボレーションと生産性

場所を問わないオペレーションを実現するためには、情報を速やかに共有できるコラボレーションツールが必須である。すなわち、メール、チャット、テレビ会議、ファイル共有、タスク管理といったツールを業務上のやりとりに利用できる環境づくりが必要だ。

セキュア・リモート・アクセス

自宅や外出先などからの遠隔地から社内と同様の業務を行うためには、社内システムにリモートアクセスする必要がある。しかし、外部からの接続は不正アクセスの原因となり、なりすましや改ざん、データ流出といった問題の発生につながることも考えられる。そのため、これらのセキュリティをより強固なものにし、安全な接続環境を整える必要がある。

クラウド/エッジ・インフラストラクチャ

あらゆる場所で快適な業務をするためには、どの場所からでもインターネット環境があれば接続でき、データのやりとりが容易なクラウドサービスの利用が必要だ。

また、あらゆる場所に分散する端末やIoTをスムーズに機能させるためには、エッジコンピューティングの利用も重要だ。エッジコンピューティングとは、デバイスそのものやその近隣のサーバーでデータを処理・分散するネットワーク技法である。ユーザーの近くでデータを処理することで、上位システムへの負担を軽減できる。これを実現するためのインフラを、エッジ・インフラストラクチャと呼ぶ。

場所を問わないオペレーションを実現するためにはそれぞれを問題なく利用できる環境を整え、接続するためのインフラを強固にする必要がある。

デジタル・エクスペリエンスの定量化

自由な場所で業務をするためには、業務のデジタル化が必要不可欠だ。ITの活用を通して顧客や従業員のデジタル・エクスペリエンス(デジタル経験)を情報として収集し、定量化する。そうすることで、収集したデータを業務の改善やサービスの向上に活用するなど、新たな価値を創造できる。

リモート・オペレーションをサポートする自動化

これまで社内で行われていた手作業の業務は、リモートでの対応が難しい。そこで、RPA(Robotic Process Automation)やAIでこれらの業務を自動化し、今までは社内で対応していた業務をITで負担できるような環境を整えていく必要がある。

急速に注目と導入が進む背景

そもそも、なぜ場所を問わないオペレーションという概念に注目が集まっているのか。それは、ITの発展により、どこにいても仕事ができる環境が整えられてきたからだ。

特に、昨今のコロナ禍による影響で、一層リモートワークやテレワークが加速している。同時に、日本政府も「働き方改革」という概念を掲げ、ワーク・ライフ・バランスの実現を憲章として唱えていることから、社会全体でも仕事をしながら個人の時間を持つことを推奨する考え方が広まっている。

さらに、この概念であれば場所や時間にとらわれない柔軟な働き方ができるため、今までは働きたくとも働けなかった人々の雇用拡大につながるのではないかという意味でも期待されている。すなわち場所を問わないオペレーションは単なるコロナ禍への対抗策ではなく、その先のメリットを見据えた考え方として注目されているのだ。

実現を目指す企業に対するITベンダーの役割

今後、多くの企業は、場所を問わないオペレーションを取り入れ、顧客のサポートや従業員の労働環境をよりよいものにしようとしていくだろう。一方で、業務をリモート・オペレーション化するには、顧客の業務を正しく理解し、前述のとおり5つの中核領域に関わる箇所をデジタル化するための提案をしていくことが重要だ。それぞれの企業にとってどの領域の改善が求められており、どういった貢献ができるのかを考えながらアプローチを重ねていこう。