業務改善

レッドハットが展望する
「日本のIT業界のオープンソース化」

掲載日:2021/08/10

レッドハットが展望する「日本のIT業界のオープンソース化」

世界中の企業でオープンソースのシステム開発が進む一方、日本でのオープンソース活用はまだまだ浸透していないのが現状だ。オープンソース化を進めるに当たり表面化する諸課題と、それに対するアプローチ、また、パートナー様が注目すべきトレンドとは何か。オープンソース・ソフトウェアのパイオニアであるレッドハット株式会社(以下「レッドハット」)の三木 雄平氏に伺った。

オープンソース化を実現するための課題と提案

今日のIT業界においては、多くの企業でオープンソース・ソフトウェアが利用され、旧来の閉鎖的なシステム運用体制に取って代わる存在として認知され始めている。そんな状況の中、オープンソース・ソフトウェア&サービス・プロバイダーのレッドハットが提供するのは、オープンソースがデファクトスタンダードとなった時代に適応した製品群だ。

パートナー・アライアンス営業統括本部 ストラテジック・パートナー営業本部 営業本部長 三木 雄平氏は、「現代はITがビジネスの根幹を担う時代で、多くの企業でDX化が進んでいます。しかし、最新のシステムに追随できていない企業も多いと感じています」と語る。

パートナー・アライアンス営業統括本部
ストラテジック・パートナー営業本部
営業本部長 三木 雄平氏

「企業の情報システム部門は、多くのIT資産を抱えています。しかし、過去に導入したシステムや、『ITスキル』『マインドセット』といった人的資産をそのまま使っているだけではDXには結びつかず、実際多くの企業がうまく新しいものに切り替えられていません」(三木氏)

三木氏は「今後、デファクトスタンダードとなる技術はオープンソースからしか生まれません。全ての企業がオープンソースと向き合っていく必要があります」と語る。事実、2000年代半ばからオープンソース・ソフトウェアの利用は増え続けており、今後もその傾向が収まることはないだろう。

「一方で、オープンソースでの運用は技術的に難しい部分も多く、各企業の担当者が思うように使いこなせていない実情もあります。また、企業の基幹システムは5年、10年単位で利用し続けるものなので、その間にメンテナンスの手間が発生する点も見過ごせません。レッドハットは、このようなオープンソース化に付随する課題に対し解決のサポートをすることを目標にしています。レッドハットはエンジニアの会社ですから、 オープンソースの開発者やメンテナンスをする技術者など豊富な人材を抱えています。オープンソースのエキスパートとして各企業と協力できることが当社の強みであり、当社サービスのメリットであると言えます」(三木氏)

レッドハットの提供するサービスは、システムのオープンソース化を進めていくに当たり、各企業の担当者が現実的に対応できることを念頭に置いて構築されている。三木氏は「レッドハットの中心サービスであるRed Hat® Enterprise Linux®(RHEL)は、Linuxをベースに、クラウドやCI/CDなどの機能を載せ、企業で使いやすいようにパッケージングしたものです」と語る。現在多くの企業でシステムの主流となっているLinuxをベースとしているため、技術的に共通するものが多く、利用者にとっても切り替え先としてなじみやすいサービスと言えるだろう。

コンテナ技術によって注目が進むシステムの自動化

では、今後システムのオープンソース化を進める日本のIT業界において、最も注目すべきトレンドとは何か。三木氏はコンテナ技術について言及する。コンテナとは、近年注目が集まっている仮想化技術の一つ。ホストOS上にアプリケーションの開発実行環境のために隔離されたエリアを作り、囲われた領域の中で仮想的に実行環境を作り出す技術だ。コンテナ技術によって、他のサービスやソフトウェアに影響を及ぼすことなく実行環境を整えることができる。

「本来、コンテナはセキュリティなどの観点から活用が注目される技術でした。しかし、近年は別の観点から注目が集まっています。例えば、『とあるクラウドで動いていたアプリケーションをオンプレミスの環境で動かしたい』という要求は、コンテナを利用すれば簡単に解決できます。当然、オンプレミスの環境で動くアプリケーションをクラウド上で動かすことも容易です。このように、コンテナは『ソフトウェアを持ち運びたい』という要望に対し非常に効果的な技術と言えます」(三木氏)

場所や環境を選ばずにスムーズなソフトウェアの運用を可能にするコンテナ技術は、コロナ禍において働き方が大きく変化したことにより、さらに注目を増したという。「コンテナは自動化をより推進するための手段でもあります。『自動化を推進したい』という考えは、コロナ禍によって生じているとも考えられますから、今後も需要が高まると予想されます」(三木氏)

レッドハットでは、自動化推進のためのツール『Ansible®』を提供している。同社は2021年7月13日に「Red Hat Ansible Automates 2021 Japan」というAnsible 単体のイベントをオンライン開催したが、その際には約1,900人の参加者が記録されたという。三木氏は「1製品単体のイベントでこの人数が集まるのはなかなかない」と語ったが、その数字からもコンテナを利用した自動化技術の盛り上がりが感じ取れる。

レッドハットから見た今後のITトレンド

コロナ禍を経て変容が続く日本のIT業界だが、今後はどのような動きが加速していくのだろうか。三木氏が予想するのは、オープンソースのさらなる浸透と使い方の変化だ。

「GoogleやFacebookなどのITジャイアントは、内製のシステムをオープンソース化して、ユーザーも含めてメンテナンスしていくという流れを確立しています。しかし、日本のIT業界はまだこのレベルに達していません。しかし今後は日本でも、オープンソースのシステムを使うだけではなく、制作・公開して全員でメンテナンスする時代が来ると予想します。レッドハットはそのお手伝いをすることを長期的な目標としています」(三木氏)

また、三木氏は近年の傾向として、これまで以上にシステム導入に対して企業から多様な要求が寄せられるようになったことも語ってくれた。「エンドユーザーのリテラシーが高まっていると感じます。近年はデジタルネイティブ世代が企業で働く時代に突入したこともあり、ユーザーは新しい技術に敏感で皆さんとても詳しい。『コンテナのベストプラクティスを持ってきてほしい』と言われることも多く、最適なものを提供できるように尽力しています」という。

最適な製品を提供するうえで、レッドハットが強調するのはコンテナ技術におけるフィードバックの早さだ。三木氏は「どの企業もビジネスやソフトウェア開発のスピードを早めたい気持ちを持っています。オープンソースのサービスは、ユーザーの意見を取り入れてどんどん改善していけることも魅力です。何年も継続して使うシステムだからこそ、要望をすぐに反映できるようにしておくことが、結果的にレッドハットの製品を選んでいただける強みになると思います」と語っている。ベンダーとしてもユーザーの要求をよく理解し、適切な製品提供につなげたい。

※ Red Hat、Red Hat Enterprise、Red Hat logoおよびAnsibleは、米国およびその他の国におけるRed Hat, Inc.およびその子会社の商標または登録商標です。Linux®は、米国およびその他の国におけるLinus Torvaldsの登録商標です。