セキュリティ

市場拡大中
暗号化ソフトウェアをどう選ぶ?

掲載日:2021/09/07

市場拡大中暗号化ソフトウェアをどう選ぶ?

技術の発達や昨今のテレワーク推進により、場所を問わない働き方が増加している。結果、業務上取り扱うデータもさまざまな場所に分散することとなり、情報漏えいが発生するリスクも増えた。そんな状況で注目されているのが、暗号化ソフトウェアである。その種類や、実際に導入する際のポイントを紹介する。

市場拡大中の暗号化ソフトウェア

SDKI Inc.が発刊した「暗号化ソフトウェア市場―グローバル予測2030年」の新調査レポートによると、暗号化ソフトウェア市場は2030年までに706.0億米ドルに達すると推定されている。

これは、サイバー攻撃や情報漏えいの増加によって暗号化ソフトウェアの必要性が高まっているためだと予想される。また、さまざまな最新のデジタル技術が開発されてビジネスに取り入れられていることも、企業の「安全なデータのやりとり」への重要視、そして暗号化ソフトウェアの需要につながっているのだろう。

さらに昨今のコロナ禍でリモートワークの導入が急速に普及したこともあり、オフィスの外で仕事をすることはもはや当たり前のことになっている。

場所にとらわれることなく働きやすい環境にはなったものの、セキュリティ上の課題を抱えたままの企業も多いのではないだろうか。PCやスマートフォンなどを紛失した場合はもちろん、インターネットを介してマルウェアに感染した場合、隣や背後から重要情報を盗み見られる場合など、リスクは身の回りに多く存在する。

暗号化は、こうした第三者からの改ざんや盗み見などのリスクから、機密情報など重要なファイルやデータを守るためのものだ。暗号化によって情報を別の形に変換することで、第三者が元のデータを確認できないようにする。

暗号化ソフトウェアの種類

暗号化ソフトウェアは3種に分類できる。これは、情報をどのように暗号化するかによって種類が分かれるためだ。それぞれの内容と特長を見ていこう。

ファイル単位

ファイル単位の暗号化ソフトウェアは、その名のとおりファイルそのものが暗号化されているため、復号鍵を持っていない限りファイルが誰の手にどんな形で渡っても解読されることはない。

この暗号化方法のフリーソフトは多く公開されており、メールなどで共有する場合に便利である。

フォルダ・ドライブ単位

指定したフォルダ・ドライブ単位での暗号化が可能なので、情報漏えいの原因になり得るデータをフォルダもしくはドライブに集約しておくことで、ファイル単位での暗号化で心配される漏れがない。

また、指定したフォルダ・ドライブをそれぞれ暗号フォルダ・暗号ドライブとして設定する機能を備えたソフトウェアも存在する。この場合はそれぞれに追加したデータが自動的に暗号化されるため、より暗号化漏れを減らすことができる。

ハードディスク単位

最も保護範囲が広いのが、ハードディスク全体を暗号化できるソフトウェアだ。システムドライブを含むハードディスク全体を暗号化できる場合は、OSを含む全てのデータの保護が可能だ。ハードディスク自体、もしくはハードディスクを搭載した端末が物理的な盗難被害にあったとしても、情報が漏えいすることはない。

暗号化ソフトウェアの選定ポイント

暗号化ソフトウェアの導入を検討している場合は、以下の3点に注目して製品を選ぶことをおすすめする。

企業の環境

暗号化した場合の実機への負荷や、情報の一元管理の可否など、企業の環境に適している暗号化ソフトウェアかどうかを確認する必要がある。

頻発するトラブルとして挙げられるのが、セキュリティソフトとの競合。すでに端末へインストールしたセキュリティソフトが暗号化ソフトウェアをウイルスと誤認し、正常な起動を妨げるというケースがよくある。あらかじめセキュリティソフト側の対象範囲を設定しておくのがベターだ。

操作性

暗号化ソフトウェアにおける操作ミスは情報流出に直結する。ミスが生じにくい設計のソフトウェアを選定したい。

また、暗号化したデータを復号しようとしてパスワードなどの入力を失敗し、ロックがかかるというトラブルもしばしば発生する。このミスを避けるために暗号化ソフトウェアの利用を敬遠し、せっかくのセキュリティが形骸化するというケースも多い。

これらのトラブルは、実際に製品を導入して使用してみるまで発生の可能性に気付かないこともある。一度トライアルして、操作感を確かめてからの導入が好ましい。

サポート

暗号化ソフトウェアを初めて利用する場合は特に、サポート体制に注目したい。これは、暗号化ソフトウェアを利用中でも万が一情報漏えいが発生した場合に、外部から状況を把握してくれる存在をキープするという意味でも重要である。

一方、製品によってはサポート導入に費用が発生する場合もあるため、慎重な判断が必要だ。

今後さらに注目度が高くなるであろう暗号化ソフトウェア。その開発が進む一方で、それを解読するための技術も同じように発展していることを忘れてはならない。製品動向、そして顧客の状況を理解して、より良いセキュリティ環境構築に向けた提案につなげたい。