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運用者・開発者にメリットを生むコンテナオーケストレーションとは

掲載日:2021/09/07

運用者・開発者にメリットを生むコンテナオーケストレーションとは

オープンソース・ソフトウェアを利用する企業が増えた近年、コンテナ技術を利用したシステム開発が注目を浴び、コンテナ技術と合わせてコンテナを管理する技術としてコンテナオーケストレーションが発達した。その中でもデファクトスタンダートであるKubernetes(クーベネティス)をベースに、レッドハット株式会社(以下「レッドハット」)が提供する製品が Red Hat® OpenShift®(以下「OpenShift」)だ。コンテナオーケストレーションの特長とOpenShiftについて、レッドハットの平田 千浩氏に伺った。

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アプリケーションを支えるKubernetes

Kubernetesとは、コンテナ仮想化ソフトウェアを管理および自動化するためのオープンソース・ソフトウェアのことである。複数のコンテナを管理し、運用・連携できるという特徴があり、コンテナオーケストレーションとして利用できる。

平田氏はKubernetes上でアプリケーションを運用する場合を例に挙げ、「Kubernetesはアプリケーションのサービスがエンドユーザーに対して常に動き続ける状況を作るために最適な基盤です」と語る。ハードウェアやOS、アプリケーションの動作が止まることはしばしば起こり得るが、Kubernetesはそれに対する対応性の高さが魅力だ。

テクニカルセールス本部 パートナーソリューションアーキテクト部 平田千浩氏
テクニカルセールス本部 パートナーソリューションアーキテクト部 平田千浩氏

「これまでは、アプリケーションに異常が発生した際にサービスを提供し続けるためには、運用者の業務的な努力が絶対的に必要でした。しかし、Kubernetesはサービスごとに指定したコンテナ数を稼働可能で、稼働中のコンテナのどれかに異常が発生しても、Kubernetesが自動で他のサーバーの上に新たにコンテナを立ち上げ直すため、エンドユーザーから見るとアプリが動き続けているように見える。つまり、Kubernetesを使うことにより、運用者の負担を大幅に軽減できることがメリットです」(平田氏)

このように優れた特徴を持つKubernetes。レッドハットが提供するOpenShiftは、このKubernetesをベースにエンタープライズ向けに開発した製品である。

IT開発へOpenShiftがもたらすメリット

平田氏はOpenShiftの導入メリットについて、「運用と開発の双方の業務を改善し、リリースサイクルの高速化に大きな効果がある」と説明する。これは、昨今のITにおいて、エンドユーザーに対するレスポンスの早さが強く求められていることが理由だという。

「昨今のITでは、アプリケーションやサービスのリリースが高速化しています。エンドユーザーからのフィードバックを受け、改善するというサイクルを早めることが求められているためです」(平田氏)

しかし従来の環境では、リリースサイクルを早めていくと、提供側に大きな負荷が発生するという課題があった。例えば、製品をリリースするに当たり、提供側に技術的な連携の手間が生じていたためである。

「これまではサービスを提供するに当たり、インフラの運用者とアプリケーションなどの開発者に分かれての作業が求められていました。一般的なインフラ運用者の責任範囲は、ハードウェアやOS、ハイパーバイザー上の仮想マシンのOSなどです。アプリケーション開発者の責任範囲は、アプリケーションの開発環境、開発したアプリの実行ファイル、ライブラリなどがパッケージングされたアプリが含まれます。しかし、アプリケーションの開発内容によっては、例えば仮想マシンのOSをアップデートする必要が発生する場合があり得ます。このような場合、インフラの運用者とアプリケーションの開発者が連携して作業をしなければいけなくなり、開発環境の準備やアプリケーションデプロイのリードタイムが大きくなるという状況が見受けられました」(平田氏)

「一方、コンテナ環境では、インフラ運用者の責任範囲から仮想マシンのOSがなくなり、ハードウェア、OS、コンテナランタイムまでが責任範囲となります。これにより、アプリ開発者が仮想マシンのOSに依存することなく、アプリを開発・実行できるようになるので、アプリ開発・修正作業とインフラのメンテナンス作業の非依存性が向上します。コンテナ環境を統合管理するOpenShiftにおいても、例に挙げたような問題が発生しません。基盤の状態に引きずられることなくアプリケーションの開発とリリースに専念できるため、インフラはインフラの仕事を、開発者は開発者の仕事に専念できます。したがってそれぞれの仕事を突き詰められるため、結果的にリリースサイクルを加速させ顧客ニーズにいち早く答え、他社との差別化獲得に貢献します」(平田氏)

他社製品と運用・開発者目線で差別化された機能

このように、OpenShiftが開発における大きな利便性を持っていることについて、平田氏は「他社との差別化を狙っている」と語る。

「Kubernetesはリリースサイクルが早いためエンタープライズで使うことは困難です。OpenShiftはKubernetesのエンタープライズ向けディストリビューションとしてエンタープライズで利用できるリリースサイクルやアップデートパスとサポートを提供すると共に、運用者と開発者のそれぞれに有益な機能・特徴を付与して提供しています」(平田氏)

具体的にOpenShiftが打ち出している「運用者・開発者目線で重要な要素」とは何か。それは環境に依存しない高い汎用性だ。

「OpenShiftは、環境のベンダーロックインを防ぐことを念頭に提供しています。現在はさまざまなクラウドやオンプレ環境を併用するマルチクラウドやハイブリッドクラウドが一般化し、アプリケーションにもさまざまな環境で実行できることが求められます。OpenShiftはどんなクラウドでも中立的に使え、アプリケーションの基盤環境を意識することなく展開・動作することを目指しています。他のKubernetesディストリビューションの場合、同じKubernetesをコアとしていても共に利用する周辺ツールの違いや独自の開発によって 使用感だけでなく、開発、デプロイ、運用のための考慮ポイントが異なります。しかし、OpenShiftはこういった状況を極力防ぐことができます。これは、レッドハットがオープンハイブリッドクラウド戦略を取っているためです。OpenShiftの動作がサポートされているさまざまなインフラにおいて、基盤を意識することなくアプリケーションの開発・展開・運用に専念できます」(平田氏)

業種にとらわれない活用の広がり

そんなOpenShiftだが、市場における反応はどうだろうか。平田氏は「IDC(IT・通信における調査・分析を行う企業)の発表によると、エンタープライズ用途のコンテナインスタンス数は、2018年から2023年までの5年間に、世界で33倍に成長する見通しです。実際、コンテナ利用の増加に伴い、OpenShiftの納入も順調に伸びています。昨年末には、納入件数世界3200社を記録しました」とその好調ぶりを語る。

「OpenShiftは業種を問わず利用されています。実際に使われている現場もさまざまで、運用の効率化やプロセスの見直し、運用品質の向上、リソースの集約、利用状況の効率化やコスト削減などと、幅広い目的で利用されています」(平田氏)

レッドハットは、サイオステクノロジーとコンサルティングや導入支援、コンテナエンジニアの育成支援などのさまざまなサポート体制を整えることで、さらなる企業でのOpenShiftの導入・活用を目指している。

幅広い分野で利用されることが期待されるOpenShift。開発環境を大きく変える存在として、今後も注目していきたい。

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