マーケティング

AI活用で変わる
マーケティングのこれから

掲載日:2021/09/14

AI活用で変わるマーケティングのこれから

AI(人工知能)はスマートフォンや自動運転技術など、既に私たちの生活のあらゆるシーンに活用されており、その流れはさまざまなビジネスにも浸透しつつある。そんな中、近年はAIとマーケティングを掛け合わせる「AIマーケティング」に注目が集まってきている。ここでは、その注目の理由や実際の業務への影響について、事例を交えて解説する。

AIマーケティングが注目されている理由

昨今、テレワークの浸透やDXによって進んだ業務のオンライン化に比例する形で、マーケティングで利用できるデータ量が増加している。

また、データ量の増加によってデータが複雑化することで、パーソナライズの難度も上昇する。この状況でデータを駆使して最適なマーケティングを行うことは、人の手による作業では非常に困難だ。そこで、大量のデータから顧客一人一人の特長を見つけ、ハイレベルなパーソナライゼーションが実現できる現実的な手段としてAIマーケティングが求められるようになった、というわけだ。

AIマーケティングで仕事はどう変わる?

では、AIマーケティングで私たちの仕事はどのように変化するのだろうか。ここでは、3つの変化について見ていこう。

分析業務の効率化

AIが行う分析業務は人間よりも処理速度が速く、分析結果はデータに基づいた客観的なものだ。効率化だけでなく、取り扱う情報精度の向上にも大きく貢献する。

データを活用した提案が可能に

精度の高い分析結果が得られれば、これまでに見落としていた領域からヒントを得て、新しい提案ができるようになる。新しいビジネス、新しいソリューションの創出にもつながる可能性が大いにあるだろう。

マーケティング施策の高精度化

AIはマーケティング施策の判断材料となる要素を高い精度でアウトプットしてくれる。そのため、施策のレベルの底上げが期待できる。

AIを活用したマーケティング事例

このように多方面の変化が期待できるAIマーケティングだが、実際に活用した場合に、どのような効果が生まれているのだろうか。

少ない社員数でも効率的な広告業務が可能に

不動産業を営むA社では、データ分析を改善するためにAIを導入した。Webサイトからの問い合わせ件数を増加させること、そして広告施策の運用ノウハウを定着させることが課題であり、AIによる最適化が必要だったのだ。

また、A社は少数社員で運営されている企業であり、専門にアナリティクスの担当者を置くことも困難だった。不動産の取引は専用の自社サイトを運営しその中で手続きしているものの、人手不足ということもありプランナー業務に作業の時間を取られてしまう。A社としては自社サイトの改善に力を入れたいとのことだったが、時間的な余裕のなさから理想的な状況を実現できないでいた。

そこで、A社ではアクセス解析をAIが自動で行うツールを導入。これにより問い合わせ数が約2.5倍に増加し、データ解析からサイトの改善施策の洗い出しまでの手間を大きく減らして広告費用も3割削減できたという。さらにほかの業務への注力が可能になり、広告運用のノウハウも身に付けることができた。

顧客の心理的ハードルを下げ、サービス利用の機会を増加

システム運営会社のB社では、自社サイト内「資料請求フォーム」での離脱率が高いという問題を抱えていた。B社はフォームに入力する作業について、顧客の心理的ハードルが高いことを理由に離脱が発生すると分析。改善に向けてさまざまな施策を試していたが、既存のアプローチとは異なる方向性での解決法についても模索していた。

そこで、これまで試していなかったアプローチとしてAIによるチャットボットの導入を決定。一問一答の会話形式で顧客の需要を測り、最適な資料を送付するというスキームを構築した。このスキームを実際に導入してみると、既存のフォームを通した場合に比べ、資料請求数が162%増加した。
また、既存フォームとチャットボットを利用したスキームで比較すると、後者の商談化率が8%も高いという結果が得られている。

B社ではこの差に注目し、顧客に何らかの属性の違いがあると仮定して、より効率的な運用にすべくAI活用の改善を計画しているという。

ビッグデータを元に人間が判断する以上に最適なタイミングを測定

通信事業者のC社は、MA基盤の刷新のためにAIが組み込まれたキャンペーン管理ソリューションを導入。これは、顧客の属性や行動情報といったデータを分析するためである。

ビッグデータを元にした顧客体験シナリオの設計による効率的なエンゲージメントの獲得を目標としたところ、ソリューションの導入によってキャンペーンでのサービス加入のCVR(コンバージョン率)が約6倍に。特にサービスへのアクセスをAIで分析したことによる、顧客の生活スタイルに合わせた最適なタイミングでのレコメンドが大きく影響したという。

また、これまで人間の判断に重きを置いていた分析作業をAIの自動化機能を活用する方向に切り替えたことで、ひと月当たりの工数が30%削減。これらのソリューションによって管理業務が大幅に効率化された。

以上のように、AIマーケティングは多くの企業で効果的に活用されている。コロナ禍を経て働き方に大きな変革を求められる時代ということもあり、人間の手作業を超えて効果を発揮するこのテクノロジーは今後も注目度が上がっていくだろう。

一方で、ただAIマーケティングを導入しただけで効果が出る、というわけではなく、各企業の課題を解決するためにテクノロジーを最適な形で提供していることにも注目すべきだ。今後も最適なソリューションを提案できるよう、トレンドを押さえつつ真摯に企業の課題へ寄り添いたい。