業務改善

システムの自動化が業務効率化の足掛かりに

掲載日:2021/09/14

システムの自動化が業務効率化の足掛かりに

以前より働き方改革を実現するとして注目を集めていた業務の自動化は、昨今のコロナ禍によりさらに需要が拡大している。現場に赴いて作業することがはばかられるようになったことでニーズが高まり、その中で自動化本来の魅力についても広く認知されるようになった。さて、そんな自動化において最先端をいく製品がレッドハット株式会社(以下「レッドハット」)のRed Hat® Ansible® Automation Platform(以下「Ansible」)である。自動化の魅力や今後の動向、Ansibleがどういった効果をもたらすかについて、レッドハット 岡野 浩史氏に話をうかがった。

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自動化ツールの弱点を克服した構成管理ツール

Ansibleは、さまざまなIT基盤(ネットワーク機器、サーバー、ストレージ、OS、仮想化、クラウドなど)を一括して管理できる自動化推進プラットフォームだ。キーワードとして「シンプル・パワフル・エージェントレス」を掲げており、その簡便な使用感に注目が集まっている。

テクニカルセールス本部 パートナーソリューションアーキテクト部 岡野 浩史氏
テクニカルセールス本部 パートナーソリューションアーキテクト部 岡野 浩史氏

岡野氏は「自動化管理ツールは他社からも提供されていますが、その多くは弱点を抱えています」と指摘する。Ansibleは、これらの弱点を改善し、導入のハードルを大きく下げた製品だという。

例えば、今日に流通している自動化管理ツールにおいては、適用する機器によってはサービス対象外となるケースが多い。その場合、その機器専用に別途自動化ツールを準備する必要があり、手間がかかるうえにコストも増えるという課題が発生し、「自動化のサイロ化」が起こりやすい。しかし、Ansibleはオープンソースコミュニティで開発済みの「モジュール」を多数使用可能なため、対象外になる機器が少ないというメリットがある。

また、一般的に、自動化には複雑なプログラミング言語が用いられる。そのため、自動化の実現に必要な社員の学習コストが高くなり、導入の妨げになることも多い。しかし、AnsibleはPlaybookと呼ばれるYAML形式のテキストファイルに業務を入力することでさまざまな処理を実行できるため、別途複雑な言語を覚える必要がなく、学習コストを抑えられる。

ほかにも管理対象へエージェントのインストールが不要な点も特長だ。ネットワークがつながるかぎり、特別な準備を必要とせずに利用できる。そのため今までは自動化ツールの対象になりにくかったネットワーク機器や、ベンダー特有のソフトウェアにも活用可能だ。

Ansibleと自動化が目指す未来

昨今の企業間ではDX(Digital Transformation)の推進により、業務を次々とIT化することで運用・管理が必要なシステムや機器は増加している。新しいテクノロジーの導入も進む中、ITの運用には課題が多い。そんな課題を解決するためにも岡野氏はシステムの自動化が必要だと指摘する。

「システムが複雑になると、人が作業に関わることで失敗が発生し、品質が悪くなります。また、作業の終了までに時間がかかり、人がたくさん動くのでコストがかかります。この2点を解決するためにも自動化が必要です」(岡野氏)

一方で、レッドハットが目指す自動化の未来はこの段階の変革に収まらない。岡野氏は「自動化は、ツールを入れて終わりではありません。ツールを導入した会社のビジネスに貢献する必要があります」と語る。

「昨今は業務で利用するIT機器が次々とバージョンアップされる時代です。そのため、Ansibleでカバーする幅も、バージョンアップに合わせて広げていく必要があります」(岡野氏)

レッドハットでは、Ansibleを各社に導入する際、基本的に専門のコンサルも併せて導入するという。これは、POC(Proof of Concept)支援などを担当するためだ。例えば、Ansibleを動作させるためのPlaybookは、レッドハットがあらかじめ入力したものを提供するのではなく、導入先の社員が書けるように指導していく。

「導入先でAnsibleを自走できるよう手助けすることが重要だと考えています。これは、我々が導入時に全てを設定すると、具体的な動作方法がブラックボックスになるためです。まずは手厚く使い方を説明し、導入先が徐々に自由な使い方を考えられるような流れをつくっています」(岡野氏)

自動化を進めることで見える業務の改善点

実際にAnsibleを導入した現場では、多くの業務的な効率化が生まれているという。例えば、ある導入企業では、これまで6週間かかっていたインフラの構築作業を3日間に短縮した。また、200時間かかっていたパブリケーションのリリース作業が20時間に、12日間かかっていたプライベートクラウドのリソースの払い出しが10分で終わるなど、劇的に作業時間が短縮された例が多数報告されている。

そのほかにもある企業の一部署にAnsibleを導入したところ、他部署の社員がその機能に興味を持ちさらに追加で導入することが決まったという例がある。岡野氏は、Ansibleの機能的な魅力が優れていたことはもちろん、導入の簡便さや導入コストの低さも肯定的に作用したと分析している。

一方で、自動化という技術に対し、技術的な難しさを理由に敬遠する企業もまだまだ多い。その点に対し、岡野氏はパートナー企業であるサイオステクノロジー株式会社(以下サイオス)と株式会社大塚商会BP事業部(以下BP)の協力に期待しているという。

「実際に導入する現場での悩みは、レッドハットが把握できない部分もあります。サイオスのAnsible Automation コンサルティングサービスが手厚くフォローすることで、より幅広い悩みをカバーできるようになることに期待しています。また、BPにはレッドハットと顧客をつなぐ存在としてサポートを期待しています」(岡野氏)

今後についても、単に製品の導入を進めていくだけではなく、顧客の課題を解決していくことを念頭に置いてAnsibleを広げていきたいという。岡野氏は「とある企業ではインフラ構築の自動化において、機器を使うことではなく、人対人のコミュニケーションを取ることが作業の99%だと言われました。この場合、人対人のコミュニケーションにどう貢献するかということにフォーカスする必要があります。将来的な目標を聞き、その目標までのギャップを実現するために何が必要なのかをコンサルして、寄り添って提案していきたい」と語った。

※ Red Hat、Red Hat logoおよびAnsibleは、米国およびその他の国におけるRed Hat, Inc.およびその子会社の商標または登録商標です。