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2021年は「NFT」元年!
話題のNFT徹底解説

掲載日:2021/10/12

2021年は「NFT」元年!話題のNFT徹底解説

最近、「NFTアートが数百万円で取引される」「文字列が記録されたNFTに何千万円もの価値がつく」などのニュースを見た方は多いだろう。このNFTとは、特殊な形式のデジタルデータを指す言葉である。なぜ単なるデータにこれほどの価値が担保されているのか。その仕組みとこれからの活用法についてまとめる。

NFTとは?

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)は、暗号資産(仮想通貨)と同じくブロックチェーン(ビットコインなどの仮想通貨を扱う際に考案された基幹技術)上で発行・流通するデジタルデータの一種である。

デジタルデータはコピーや改ざんが容易なため、海賊版や違法コピー作品が出回りやすい。従って、これまでは現実の資産や販売物のような価値を持たせることが困難だった。一方で、ブロックチェーン上のデジタルデータは参加者間の相互検証が可能だ。そのためコピーや改ざんが困難になり、デジタルデータにも「複製不可能な物」としての価値を持たせられるようになったのだ。

NFTでは、デジタルデータに鑑定書や所有証明書のようなメタデータを付与する。これは、特定のデジタルデータをブロックチェーン上で固有の存在として扱うためだ。実際の骨董品などを例にしても、鑑定書や所有証明書、サインなどといったメタデータの有無によって、物の価値が大きく左右される。NFTは、このような仕組みでデータを「唯一無二」とし、資産価値のある存在として扱うことを可能にするのだ。

急激な注目度増の理由

NFTの歴史は2017年頃から始まっている。しかし、急速に注目を浴びだしたのは2021年からだ。デジタルアートやSNSの投稿などが数億~数十億円という高額で取引されるケースが相次ぎ、世間を驚かせたことがその大きな理由だろう。

さらにNFTが対象とする範囲は画像や文字データ、音楽や動画と幅広い。新しいビジネスとして収益拡大の可能性を見出せるうえに、NFT自体は技術的に難しいものではないため、今後の発展を見据えて注目が集まっているのだ。

3つのメリット

NFTのメリットとして、大きく以下の3つが挙げられる。

中間団体の不要化

NFTが一般的になった場合、二次以降の流通市場で取引が行われる(NFT購入者による転売など)と一次創作者に継続的なマージンが入る、という仕組みを作ることが可能になる。この場合、著作権管理を行う中間団体は不要になる可能性が高い。

また、これまで中間団体が管理費として得ていたマージンを著作者が得られるようになったり、その分エンドユーザーが購入する際の値段が下がったりという結果に結びつくことも期待できる。

データに取引可能性を付加

所有者はNFTを自由に移転できるため、国や既存の枠組みにとらわれることなく自由に取引ができる。また、前述のとおりデータを資産価値のある存在として扱うこともできる側面があるため、取引市場の商材としての活用も可能になる。

相互運用性の向上に寄与

NFTの仕様は、現在のところ共通規格として定められている。そのため、この規格に沿って発行するサービスなら、どこでも同じように取り扱うことができる。

例えば、それぞれのゲームに互換性を設けた場合、A社のゲームで獲得したアイテムをB社のゲームで利用することが可能になる。

まだまだ発展途上のNFT

一方、NFTにはまだまだ課題が残っている。現時点で不安視されている問題は主に以下のとおりだ。

詐欺などへの悪用の可能性

第三者が製造したデータや著作物のデータを悪意のあるユーザーが入手した場合、自分が権利を有すると偽ってNFTを販売するといった詐欺が発生する恐れがある。これは、NFTを公開する際に詳しい本人確認が行われていないためだ。

未整備な規制

現在NFT事業者は金融規制の監査外とされており、規制や監査などが整っていない。そのため、マネーロンダリングなど不正取引の場となってしまうリスクがある。なお、この危険性が生じる一因も本人確認が行われていないことにある。

流動性の低さ

現状は、NFTそのものの価値が保証されている訳ではない。そのため2021年現在はNFTの流動性が低く、今後市場が停滞した際に所有者が損失を被る可能性も考えられる。

今後の可能性

NFTは現在、主にゲーム部門での活躍が目立っているが、不動産や会員権という分野でも活用され始めている。しかしまだまだ実用化が進んでいるとは言えないため、未知の利用方法の発見への期待も含めて、その将来性には大きく注目が集まっている。

また、現在日本では数種類のNFTマーケットプレイスが展開されている。NFTが市場として成長するためには、その取引基盤となるマーケットプレイスの発展が欠かせない。2021年現在はまだ大手市場ができていないものの、将来的に巨大なマーケットプレイスが成立した場合は参加者が増加し、NFTがさらに発展していくことが予想されている。

まだまだ発展途中ではあるものの、NFTはさまざまな業界で新たなビジネスモデルの選択肢となり得る。日本企業も次々に参入しているNFT市場に、今後も注目していきたい。