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企業の未来を創造する 
新しいデザイン思考「Futures Design」

掲載日:2021/11/02

企業の未来を創造する 新しいデザイン思考「Futures Design」

近年、「Futures Design」という新しいデザイン思考への注目度が高まってきている。未来のイメージをもとにして戦略を打ち出すという斬新なこの手法は、新商品のコンセプトづくりやブランド再構築など、さまざまな企業で活用されている。では「Futures Design」を実施するためには、どのような取り組みが必要なのだろうか。具体的なアプローチ方法を含めて解説する。

Futures Designとは

「Futures Design」は、デンマークのコペンハーゲンに本拠を置くデザイン会社Bespokeが開発したデザイン思考だ。従来の手法とは全く異なる斬新な考え方から注目を浴びている。

これまでのデザイン思考は「既に発生している、もしくは想定されている課題」を解決へ導くという課題解決型のアプローチが主流だった。一方でFutures Designは「どのような未来を描くのか」というイメージを確立し、それをもとにして企業(または個人)の新たな戦略を生み出す「未来創造型」のデザイン思考だ。

世界規模での大きな社会変動が続いていることも、このような考え方が生まれた一因になっている。近年、テクノロジーの発展や労働倫理のアップデートによって働き方をはじめとした我々の生活スタイルに大きく変化があった。従来の手法では、こういった変化を事前に予想して対策を練ることは難しかっただろう。

さまざまな不確定要素に対応するために、社会の現状から未来の変化を洞察し、そこからデザインを始めるのがFutures Designなのだ。

「Futures Design」実施に向けて必要な考え方

実際にFutures Designに取り組む際は「STEEPV」というフレームワークが活用される。

これはSocial(社会)・Technological(技術)・Economic(経済)・Environmental(環境)・Political(政治)・Values(価値観)の頭文字を取ったもので、これら6つの視点からデザインすべきテーマを分析することで社会的にインパクトの高い結論を導き出せる。

6つの視点からテーマを分析した後は、導き出した内容を以下4つのフェーズに当てはめる。これにより現実と望ましい未来との距離を把握して、その未来により近づくために必要なことが理解できるようになるのだ。

Situate(立ち位置を明らかにする)

Situateは自社もしくは対象テーマの現状を明らかにするフェーズだ。直面する課題や脅威、そして強みを明らかにしたうえで、目的やビジョンを描いていく。

例えば、自社が提供する製品が市場で生き残るためには、他社製品との差別化が欠かせない。また製品を提供するに当たり、製造や流通の都合によって当初想定していた理念を貫き通すことが困難になる、などの状況の予測も必要だろう。Situateではこれらの事態に対しての具体的な回答を考えることで、より現実的かつ効果のある手段が得られる。

Search(探索する)

Searchは、新しいテクノロジー・政治状況・芽生えつつある文化など「未来」にインスピレーションを与えてくれるシグナルを探すフェーズである。ピックアップした情報から、そこにある可能性を探り出す。

このフェーズにおいては、例えば他社が先行している施策が自社においても有効であるか、などを考察することも有効なアプローチとなる。また自社が提供する製品と相性のいいテクノロジーや社会運動などを探すことで、これまで以上に自社サービスの充実を図ることにもつながるだろう。

Sense(意味付ける)

Senseは、シグナルから得たものを整理し、言語化(可視化)するフェーズ。それぞれのシグナルを既存知識とつなげ、それまで見えていなかった関連性を見つけるなどして情報の分析を行う。このフェーズを経ることにより、求めるべきデザインの本質は何かということがより理解できるようになる。

Scale(踏み出す)

Scaleは、分析結果から未来を想像し、具現化するフェーズだ。刺激的なビジョンや先鋭的なアイデアに人々を引き込むべく、具体的なアクションを決める。

このフェーズでは、「Sense」で言語化した要素をもとに、好ましい未来を想像してさらにさまざまな可能性を発想することが求められる。さらに「Sense」を実現するためにどのようなアプローチが効果的なのかを考えることは、デザインを実現するための必要な手段や材料をまとめることにもつながる。

このようなフレームワークを通して望ましい未来へ向けてアプローチしていくのが、Futures Designだ。

実際、アドビ株式会社が「環境問題」をテーマにFutures Designを用いたコンペティションを開催するなど注目度は高く、多数の企業の新商品のコンセプトづくりやブランド再構築などでも実際に活用されているようだ。

不確かな変化が続く中、戦略を考えて施策を実行していかなければならない現代において、Futures Designはこれからさらに浸透し、多くの企業で活用されていくことだろう。新しいデザイン思考に、今後も注目していきたい。