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これからのビジネスが変わる?
仮想空間上のミラーワールド「メタバース」

掲載日:2021/12/07

これからのビジネスが変わる?仮想空間上のミラーワールド「メタバース」

2021年10月、米Facebook社は社名を「Meta(メタ)」に変更すると発表した。これは、今後の事業において「メタバース」を中心に据えることを表現するためだという。世界的企業も注目するメタバースとは、どのようなものなのだろうか。その特長やビジネスにおいての可能性についてまとめる。

メタバースとは?

メタバースとは、英語の「Meta(超越した)」と「Universe(世界)」を組み合わせた造語である。これは、インターネット経由でアクセス可能な仮想空間上にある「現実世界のミラーワールド(鏡像世界)」を指す言葉だ。ユーザーはメタバース内でアバター(自身の分身)を操作し、現実世界のように会議や買い物をしたり、ゲームに参加したりできる。

メタバースの特長

メタバース最大の特長は、現実世界よりも遥かに自由に行動できることだ。これは、物理的な制約はもちろん、国境や政治などの制約も受けずに活動できることも意味している。前者においては「山を越えるほどジャンプする」「新幹線より速く走る」といった非日常的な体験が得られるというメリットがあるし、後者においては「世界中のユーザーが、同一条件で自由にコミュニケーションやマネタイズを楽しめる」というメリットが発生する。

また、メタバースは、同様に近年注目が集まっているNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)との相性が良いことも特長である。

NFTとは、ブロックチェーン技術を活用し、デジタルデータに複製不可能物としての価値をもたせたもの。現在はデジタルアートを絵画のように資産価値のあるデータとして扱う用途などでの利用が注目されている。その一方で、あらかじめNFTの規格に共通性があれば「A社のゲームで入手したアイテムを互換性のあるB社のゲームで利用する」といった使い方も可能であり、同様にメタバース内のさまざまなサービス内で入手したデータを消費したり資産化したりといった使い方が可能になると期待されている。

(NFT解説記事「2021年は「NFT」元年! 話題のNFT徹底解説」はこちら)

上がり続けるメタバースの注目度

今日においてメタバースに注目が集まっている理由の一つは、VR技術が飛躍的に進歩したことである。近年はコンテンツの供給増やデバイスの軽量化によって一般層にもVRが普及し、「仮想空間」への認知が高まった。また、仮想空間そのものを充実させるVR技術が進化したことでメタバースへの注目度も高まっているのだ。

さらに、複数の大手企業がメタバースビジネスの拡大に向けて動き出している影響も大きい。NFTが発展したことにより、さらに多様で大規模な経済活動が望めるようになった。

そして、これらの下支えがあった後にコロナ禍に突入したことも大きな理由になっているだろう。オンラインでの仕事や学習、イベントの開催が主流になったことで、より現実世界に近づけたオンライン交流の需要が高まったのだ。

ビジネスでも活用されるメタバースの可能性

さまざまな特長をもつメタバースだが、ビジネスにおける活用のポテンシャルは計り知れない。例えば経済産業省は、2021年7月の報告書においてメタバースの活用を3つのポイントからまとめており、広い分野のビジネスで利用されることへの期待が読み取れる。

以下は、報告書において記載されていたポイントを補完しつつまとめたものだ。

新規事業

現在、現実世界で展開している事業をメタバース上の新規事業として展開することで、今まで以上に幅広い層を対象としたビジネスが可能になる。例えば、イベント業や観光業をバーチャル空間上で提供することにより、遠方に住む人や日本語が分からない人も気軽に参加できる。

また、NFTを活用することにより、デジタルコンテンツの売買といったビジネス展開も可能になる。メタバースでの生活や経済活動が盛り上がれば、仮想空間内での外面的な特長付け(アバターの3D CGや、自身の商品を陳列するための建物など)の需要も高まり、これらの流通で利益を上げることも可能になるだろう。

マーケティング

ミレニアル世代やZ世代は情報リテラシーが高く、これまでの広報活動では魅力が十分に伝わらない可能性がある。そこで、メタバースならではの体験を共有し、顧客のエンゲージメントを高めることが可能になる。

例えば自動車や不動産といった商品は単価が高く、消費者が十分に魅力を体験できなければ手を出しづらい。そのため、メタバース内でシミュレーション(運転体験や内観の確認)をすることにより、消費者の購入意欲の向上が期待できる。これまでも乗車体験やモデルハウスの見学といった取り組みは存在したものの、メタバースを活用することによって遥かに低コストで同様の効果を得られるだろう。

社内コミュニケーション

メタバースには、社員間のコミュニケーションを円滑にする効果も期待できる。コロナ禍でリモートワークが浸透し、対面での会話の機会を求める声も多かったが、メタバース内でコミュニケーションを取ることはこれの代替として活用可能だ。また、災害シミュレーションなどの用途での活用も期待されている。

さまざまな活用方法に期待がかかるメタバースだが、権利保護や違法情報の流通をはじめとする問題点が指摘されているのも事実だ。今後はその対応策にきちんと目を通しつつ、ポテンシャルを発揮するメタバースビジネスを見逃さないようにしたい。