ペーパーレス化

2022年1月改正! 電子帳簿保存法改正のポイント

掲載日:2021/12/14

2022年1月改正! 電子帳簿保存法改正のポイント

2022年1月1日より、改正電子帳簿保存法が施行される。これにより多くの企業が影響を受け、会計業務の大幅な電子化が進むことが予想されている。果たして、今回の改正はどんなものなのか。ポイントを絞って解説していく。

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは1998年に施行された法律で、正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」。これは国税関係帳簿書類を、これまでの紙文書に限らずに電子データで保存することも認めるというものだ。

電子帳簿保存法上、電子データによる保存は大きく以下の3種類に区分される。

電子帳簿書類の保存

電子的に作成した帳簿や書類をデータのまま保存するもの。会計ソフト等で電子的に作成した帳簿や、電子的に作成した国税関係書類などが該当する。

スキャナー保存

紙で受領した、または電子で作成し紙で出力した書類を画像データで保存するもの。スキャナーでの読み取り、デジタルカメラやスマートフォンで撮影した画像保存などが含まれる。

電子取引

電子的に授受した取引情報をデータで保存するもの。請求書や契約書など、取引先とのメールで授受し、ネット上からダウンロードする方法でやりとりするデータが該当する。

これまでの改正を振り返る

これまでの規制緩和は部分的なものであり、求められる保存要件などが厳しかったために多くの企業で実運用に至らなかったのが事実だ。しかし、今回の電子帳簿保存法の改正によって大幅に規制が緩和され、実運用のめどが立った。この背景には、働き方改革やコロナ禍による働き方の変化があると考えられる。

2022年1月改正のポイント

2022年の改正において、注目すべきポイントは以下の4つだ。

承認制度の廃止

これまでは、国税関連帳簿を電子データとして保存する場合、原則として事前に所管の税務署へ申請して承認を得る必要があった。さらにこの承認を受けるためには、帳簿を電子化する3カ月前までに手続きを行わなければならなかったのだ。

今回の改正ではこの承認制度が全面的に廃止された。データさえあればすぐに電子的に手続き可能なため、事前準備に関する労力や時間の大幅な削減が期待できる。

適正事務処理要件の廃止

これまでは税務関係の書類をスキャンした場合、紙原本を一定期間保存することが求められていた。これは、不正防止のために各企業へ「定期検査を受ける」と「相互けん制の適正事務処理案件を満たす」という二つの要件を満たすことが義務付けられていたためである。どちらの要件についても、適切に事務処理が行われていることを各企業内でチェックすることを求める内容であり、年度ごとに完了するまでは紙原本の保存が求められていた。

改正後は前述の二要件を満たす必要がなくなるため、スキャンした書類はすぐに廃棄可能だ。

検索要件の緩和

これまで、税務関係の書類をスキャンして取り扱う際にはデータに取引年月日・勘定科目・取引金額など、多数の情報を検索条件として設定することが必須だった。さらに日付や金額は「範囲指定」検索可能である必要があり「二つ以上の項目を組み合わせて検索条件を設定可能であること」も求められるなど、データの管理が非常に煩雑だった。

改正後は検索の必須項目が年月日・金額・取引先の三つだけになるほか、条件によっては「二つ以上の項目を組み合わせて検索条件を設定可能であること」という条件も不要になり、作業が容易になる。

このように、さまざまな規制緩和によって帳簿の電子化が極めて導入しやすくなる。一方で、申請内容に不正があった場合には重加算税の加重措置が取られる、法令要件違反があった場合には税法上の保存書類として認められなくなる(災害など一定の場合を除く)、というペナルティーの強化には注意しておきたい(ただし適正な処理をしていれば、直ちにはペナルティーを与えられない場合もある)。

電子取引における電子データ保存の義務化

これまではデータで受け取った書類の紙での保存が認められていたが、今後はデータで受け取った書類の出力保存が原則不可になり、以下のいずれかの措置が求められる。

① タイムスタンプが付与された後のデータの授受

② データの授受後、最大2カ月+7営業日以内にタイムスタンプを付与し、担当者または監督者の情報を確認できるようにする。また、タイムスタンプの一括検証機能は必須

③ 訂正・削除を行った場合、訂正・削除の事実及び内容を確認できるシステム、または記録事項の訂正・削除ができないシステムでのデータの授受及び保存の実施

④ 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を備え付けた運用の実行

電子データで受け取った書類の「電子データ保存の義務」については、2023年12月末までの2年は猶予期間が設けられることになったものの、法改正を目前にして、会計の形態を大きく変えようと考える企業は多い。電子契約システムなどのソリューションの需要はこれまで以上に増えることだろう。これに伴って増加する、新しいデバイスや会計ソフトの需要も見逃さないよう心がけたい。