組織改革

単なるデジタル化は時代遅れ? 
デジタルワークプレイスに注目

掲載日:2021/12/21

単なるデジタル化は時代遅れ? デジタルワークプレイスに注目

コロナ禍を経て企業のデジタル化が進む昨今、メリットがある半面、それによって生じた課題も多い。そんな企業にとって、大きな助けとなるであろう存在が「デジタルワークプレイス」である。単なるデジタル化ではなく、さまざまな副次的効果も期待できるこのアプローチがどのようなもので、実現のためには何が必要なのかについて説明しよう。

デジタルワークプレイスとは?

さまざまな企業でデジタル化が進んでいるものの、それに伴い「テレワークを導入したことによって不正アクセスや個人情報の流出など、セキュリティ面が脅かされる機会が増えた」「オフィスで雑談する機会が減り、同僚とのコミュニケーションをうまく取れない」などの新たな課題が発生している。また「在宅勤務中はオフィスの機器を使えない」「利用するソフトの互換性が低いことによりうまく業務の連携が取れない」など、業務効率が下がるとの声も多い。

そこで力を発揮するのが「デジタルワークプレイス」だ。デジタルワークプレイスとは、生産性や企業価値の向上を目的としてITを活用した、新しい仕事空間のことを指す。「単なる職場のデジタル化」のようにも聞こえる言葉だが、そうではない。デジタルワークプレイスは、デジタル化に伴って発生する課題を解決して、より個人が自分らしい働き方で勤務するために、ITを使ったプラットフォームを労働環境で活用するものだ。

デジタルワークプレイスは、業務プロセスを全面的にオンラインで再現する。会議や業務連絡、営業や勤怠管理などの作業をオンラインで対応するため、企業の従業員はいつでもどこでも自分らしく勤務可能だ。

さらに前述した「デジタル化によって生じる課題」は、それぞれの業務を部分的にオンライン化したために生じてしまったものとも言える。あらゆるプロセスを全面的にオンライン化し、企業内で共通のプラットフォームを利用して均一な労働環境を作り上げることによって、問題の発生が防げるのだ。

実現に向けて必要なもの

単にデジタル化を推進しただけでは、デジタルワークプレイスは実現しない。実現に向けて必要なのは、業務環境に適したデジタルツールの整備だ。具体的には、PC・タブレット・スマートフォンなどのデバイスや、チャットツール・クラウドサービスといったアプリケーションをそろえる必要がある。

さらに業務の大半をデジタル環境で実施する以上、セキュリティ対策も万全なものでなくてはいけない。ツールのアクセスに本人認証が必要な仕組みを整え、研修を開催して社員全体にエンドポイント保護やコンテンツセキュリティの意識を持たせるなど、トラブルの発生を未然に防ぐことが重要だ。

また、デジタルワークプレイスは「いつでもどこでも自由に働ける」という特性上、社員の勤務状況の把握が難しい。勤務時間が必要以上に長引いたり、給与の計算が複雑になったりという問題が発生することも考えられるため、就業規則をデジタルワークプレイスに最適化して整備する必要がある。具体的には、始業時間・終業時間の連絡方法や給与の設定、連絡体制など、トラブルに発展しやすい部分を明確にすることが求められる。

デジタルワークプレイス活用事例

デジタルワークプレイスはすでに活用が進んでおり、多くの企業でその効果が発揮されている。

例えば、某ソフトウェア会社ではデジタルワークプレイスの導入によって全従業員の原則在宅勤務が可能になった。在宅勤務の環境では、仮想デスクトップやVPN、Microsoft Teams(『Microsoft Teans』商品紹介記事はこちら)の活用により、オフィスでの勤務時と何ら変わらない就業状況を再現できているという。コロナ禍における感染症予防対策としての効果はもちろん、通勤の手間暇を削減し、カフェや空港のラウンジといった環境でも仕事を進められる就業体制を実現した。

また、とあるメーカーでは、デジタルワークプレイス導入の結果「他地域に所在する支社と業務上のコラボレーションが活発になった」という効果を実感しているようだ。これまでは各支社がそれぞれ異なる業務プラットフォームを利用していたため、細かな仕様の違いなどによって連携を避ける傾向にあったのだが、共通のサービスを利用することでその弊害がなくなった。クラウド経由でのリアルタイムなドキュメント共有やMicrosoft Teamsを使ったバーチャルミーティングによって、円滑な交流が進んでいるという。

このように、デジタルワークプレイスの効果はさまざまなシチュエーションで発揮されており、今後も普及が進むことが予想される。それに伴い、関連製品の需要が加速することも考えられるだろう。実際、Kenneth Researchの調査では「世界のデジタルワークプレイス市場価値は、2022年の336億米ドルから2030年末までに1,233億米ドルに達する」と予測されている。新たなキーワード「デジタルワークプレイス」が日本でどのように普及していくのか、製品需要と共に見逃せない。