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「内製化」だけではない! DX実現のポイント

掲載日:2022/01/05

マ「内製化」だけではない! DX実現のポイント

新型コロナウイルスの影響で、急速なIT化が求められるようになってから約2年がたとうとしている。しかし、いまだにDXを進められていない企業は多い。一部大企業ではDX実現に向けた施策として内製化が進んでいるものの、中小企業で同様の取り組みを実践するのは困難だろう。そこでおすすめしたいのが、ITベンダーとの協力による内製化である。

DX推進の今

コロナ禍がきっかけとなり、多くの企業がDXの必要性を意識するようになった。しかし、DXを実現するために乗り越えるべきハードルが多数存在することは事実である。技術的な課題を解決できなかったり、経営者にITの知識がなかったりと、DXの推進を妨げる理由は企業によってさまざまだ。実際、経済産業省が所管する行政法人のIPAが2021年に発表した調査『DX白書2021』によると、DXに取り組んでいる国内企業は全体の55.8%。約半数の企業はDXにノータッチであるという結果からも、まだまだDXの必要性が完全に浸透しているとは言えない状況だ。

一方で2018年に経済産業省が発表したレポートによると、多くの企業がDXを実現せずに現行のシステムを使い続けた場合には、2025年以降、国内全体で年間最大12兆円の経済損失が生じると指摘されている。この問題は「2025年の崖」と呼ばれており、社会全体で取り組むべきテーマとして注目を集めている。

中小企業や個人経営の店舗などではIT導入に拒否感を抱く傾向があるが、DXの推進を避けることが効率や競争力の低下を引き起こす可能性も考えられる。早急に取り組まなければ、近い将来、大きな損失につながることだろう。

DX推進上の課題

DX推進は、単に職場にIT機器を導入しただけで完了するものではない。デジタル技術やネットワークを業務において最適な形で利用できるよう配置し、それを適切なメンバーで活用する必要がある。最適な基盤や組織を作り上げなければ、DXで業務にポジティブな効果を与えることはできないのだ。

企業が新規のIT機器を導入する場合は、社内の情報システム部門が対応するのが一般的だ。しかし、DX推進のように基盤や組織レベルでシステムの根本からITの活用を見直す必要がある要件については、一部門が全ての対応を請け負うことは困難である。この場合、企業のリーダー主導で対応策を練ることが望ましい。例えば、社内にDX推進に特化した部門を作って外部のITベンダーやコンサルなどの専門的な知識を持つ人材を集めながら対応に当たる、といった方法が考えられる。

ただし、DX専門の部門を任せられるような優秀な人材は、簡単に集められるものではない。前述の『DX白書2021』を見ても、「事業戦略上の変革を担う人材の量」という項目においては、国内企業の76%が「大幅に不足している」「やや不足している」と回答している。すなわち、DXの推進に貢献できるIT人材は日本中で不足しており、他社との取り合いが避けられない状況であると言えよう。

大企業の内製化の動き

DX推進に当たり、避けて通れないのがコストの問題である。DXへの投資コストを確保するためには、IT予算の活用方法を全面的に見直さなければならない。

近年の大企業では、DXの内製化を進めることで、その問題の解決の糸口を見つける動きが増加している。外注ではなく内製で済ませることにより、大幅にコストを削減することが狙いだ。

例えば、とある流通系大手企業では、2019年末からの約一年半に約160人のIT/DX系人材を中途採用した。これは、DX推進のコストを抑えつつ、社内にITノウハウを持った人材を増やすことが狙いだという。同様の取り組みは大手小売系企業でも実践されており、エンジニアの大量採用や説明会の開催などによって優秀な人材を獲得することに力を注いでいるようだ。

外部人材の活用という選択肢

しかし、中小企業で同様の取り組みを実践することは難しい。IT専門者や優秀なエンジニアを探し出し、何人も採用する手間とコストを考えると、外注で済ませてしまう方がよっぽど効率的だと感じる方も多いだろう。

そこで期待したいのが、ITベンダーの協力である。DX推進に必要な技術や知識は、ベンダーの保有する人材の起用によって効率的に取り入れることができる。その際に気をつけるべきポイントは、実作業をベンダーの人材に頼り切るのではなく、積極的に自社社員に実践させることだ。丸投げでDX基盤を獲得してしまえば確かに楽だが、知識や経験を社内に取り入れることはできない。また、システムの仕組みを社内で把握する人間を増やすことにより、「トラブルが起きた際、システムがブラックボックス化しており対処法が見つからない」という恐ろしい事態を回避できる可能性を上げられる。

DXの進め方は企業によってさまざまであり、内製化はあくまで一手法にすぎない。トレンドとして評価されている部分を参考にしつつも、企業にとって最適な形を提示することこそが、これからのベンダーに求められる仕事だろう。ユーザー企業がどんな形でDXを実現したいのかをよくヒアリングしつつ、ニーズに応えられる信頼関係を築いて貢献への道を探していきたい。